161 主導権は常に彼女の手中
英雄学校で行われる生徒会選挙。
たった一つしかない会長の座を巡って争うのはマイスとヘレーネルの二人。
他にも候補者が何人かいるが、どれもパッとしない。
実質、この二人での争いになるだろう。
「ということで、さっそく情報を集めるか。
つってもファムがあらかた調べつくしたんじゃないのか?」
俺が尋ねるとファムは肩をすくめる。
「私といえども、万能ではありません。
他の候補者の情報を集めるので手一杯です。
生徒たちがどの候補者を支持しているかまでは……」
「そうか……気が急いたかな」
「まだ候補者の受付をしている段階です。
他にもまだ立候補者が現れるかもしれませんし、
情報収集は継続して行った方がいいでしょう。
さっそく英雄学校へ参りましょうか」
「え? 今日?」
もう既に昼過ぎなのだが、今から英雄学校に?
できれば明日にしてほしいのだが……。
「善は急げと言いますし」
「いや……さすがに身が持たない。
せめて少しくらい休ませてくれよ」
「フォートン家の嫡男ともあろう方が、
何をおっしゃいますか」
都合のいい時だけ嫡男扱いするなよ。
いつもは雑魚だバカだって見下してるくせに。
「ファム、あまりサトルさまを虐めないでください」
マイスがやんわりとたしなめてくれた。
やっぱりいい子だなぁ。
「あなたまで何を言うのです?
この人を甘やかしてもいいことはありませんよ」
「それでも休息は必要ですわ。
サトルさまが倒れたら、誰が責任を取るのですか?」
うう……やっぱりマイスは優しい。
俺のことを大切に扱ってくれる。
変態駄メイドとは違うのだよ!
駄メイドとは!
「仕方ありませんね、特別ですよ」
ファムはそう言い残して小屋を出て行った。
「そう言えば、セリカさんとソフィアは?」
「二人でお買い物に出かけていますわ」
「そうか……」
つまり今は、マイスと二人っきり。
ムフフなことを想像したりもしたが……。
こーん。
外でアルベルトが薪を割る音が聞こえる。
まだ日も高いし、今はまだそう言う時間じゃないな……。
「今……ここにいるのはわたくし達だけ。
つまりは二人っきりですわね」
ずいっと身を乗り出し、俺に顔を近づけるマイス。
胸元の谷間が俺の目の前にぐっと近づく。
「あっ……ああ……そうだね」
思わず目をそらしてしまった。
もちろん、本当であればガン見したい。
たわわなおっぱいに顔を押し付けてみたい。
しかし……我慢だ。
耐えろウィルフレッド。
耐えろ小日向聡。
ここでマイスの乳を揉みしだいてみろ。
そんなことをしたら……。
「あら、どうかされました?
顔が赤くなってますよ?」
ニヤニヤと挑発するかのように言うマイス。
この子、俺がどんな気持ちなのか分かってやってるな?
触れるものなら触ってみろ。
これでもかと目の前に近づけられたマイスのたわわなおっぱい。
男としての欲望をこの上なく刺激する。
生物的には俺よりもマイスの方が圧倒的に強者。
ガチの殴り合いをしても決して勝てない。
つまり、この場において優位に立っているのはマイスの方なのだ。
主導権は常に彼女の手中にあり、俺はその意思に背くことはできない。
マイスがその気になれば、俺のことなんて好き勝手にできる。
ファムが俺にしようとしたように。
だから……決して勘違いしてはいけない。
ほいほいと誘いに乗って手を出せば最後。
マイスが満足するまで付き合わないといけないのだ。
彼女の性欲がどれほどのものか分からないが、体力は少なくとも俺よりもずっと上。
徹底的に絞りつくされることだろう。
ああ……考えただけでもぞっとする。
でもマイス、カワイイ。
すっごくカワイイ。
彼女の柔らかそうな身体を抱きしめて、愛し合ったらさぞ気持ちがいいことだろう。
向こうはカモンベイベな状態なので、俺が誘いを受ければいつでも……。
「もしかして、下の方も固くなってますの?」
一層顔を近づけてそんなことを言うマイス。
ソーっと俺の股間の方に手を伸ばそうとする。
さすがに止めようと思った。
「まっ、待ってマイス。
今はまだ昼間だし、いつソフィアたちが帰ってくるか……」
「それまでに済ませてしまえば、問題ありませんわ。
それとも……わたくしに魅力がないのでしょうか?」
「いや……そういうわけじゃ……」
「なら、少しでいいので……」
そう言って更に手を伸ばすマイス。
すごい力だ。
俺は思わず両手で彼女の腕をつかんだ。
その瞬間。
「うあっ! 痛いっ!」
「あら、ゴメンあそばせ。
うっかりスキルが暴発してしまいましたわ」
マイスの肌からビリビリと青い光がほとばしる。
この子もソフィアと同じで、興奮すると稀にスキルが発動してしまうようだ。
もし彼女との行為中にそんなことが起こったら……俺は間違いなく感電死するだろう。電気椅子に座らされるようなものだ。
どんな罰ゲームだよ。
「サトルさまがいけないのですよ。
抵抗なんてするから……」
いじわるっぽく微笑むマイス。
この子もこの子で、結構あれな性格をしている。
ファムから悪い影響を受けたのかな。
何気に初めてのサトル呼びだったのだが……喜んでいる余裕はなかった。




