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160 生徒会選挙と対抗馬

 マイスは生徒会選挙に立候補することになった。


 何気にファムは文章能力があるらしく、マイスが書いた立候補の為の書類を添削していたりした。

 家事以外なら何でもできそうだな、この駄メイド。


 ……なんでメイドになったんだよ。


「ウィルフレッドさま」

「なんだよ?」


 ファムが書類を数枚持ってきた。


「他の候補者の情報です」

「え? いつの間に?」

「こう見えても諜報は得意なのですよ。

 簡単な似顔絵も一緒に添付してありますので、

 目を通しておいてください」

「似顔絵? 誰が描いたの?」

「もちろん、私が」


 コイツ本当に何でもできるな。

 メイドの仕事以外は。


 ファムが用意した書類に目を通す。

 他の候補者は全部で4人。

 どいつもこいつもパッとしない経歴と見た目。

 マイスの足元にも及ばないだろう。


 それにしても似顔絵が上手い。

 本当に細かいところまでよく描けている。

 これで食べていけるんじゃないかって思えるレベル。


 ファムの画力に驚愕しながら候補者の似顔絵を眺めていると、あることに気づいた。

 その中の一人が誰かに似ているような気がするのだ。


「ええっと……この人って」

「あ、その候補者が最有力ですね。

 マイスと競り合うのもその方でしょう」

「へぇ……」


 誰かによく似ている人物はショートカットの気が強そうな女性。

 目元とか、鼻の形とか、どこかで見たことがあるような気がする。

 でも……誰なのか思い出せない。


「で、誰なの?」

「ご存知、クルセルド家のご長女です」


 ご存知ねぇってんだよ。


「クルセルド家?」

「ええ、フォートン家、フィルド家に次ぐ名家。

 英雄学校でも屈指の影響力を誇ります」

「へぇ……」


 じゃぁ、どこかで会ったことがあるかもな。

 まったく記憶に残ってないけど。


 俺が英雄学校で関わった生徒はかなり多い。

 しかし、有力な家の出身者や金持ちなんかは、あまり交流しなかった。

 この人も学校ですれ違ったくらいで、大して関わらなかったのだと思う。


 ……多分。


「ちなみに、どんな人なの」

「クズですわ」


 急にマイスが口を挟んだ。


「……え?」

「その方は尊敬すべき存在ではありません。

 唾棄すべき汚物です」

「ええっ……」


 一見きつそうに見えるが、マイスは心が清らかで優しい子だ。

 仲の良い人が傍にいる時はいつもニコニコしていて、一緒にいるだけで心が安らかになる。

 誰か困っていたらすぐに助けるし、泣いている人がいたら傍に寄り添う。


 そんな心根の持ち主であるマイスが表情を一変させ、忌々しい物を見るかのように俺が手に取った似顔絵を睨みつけている。

 いったいどんな因縁が?


「なぁ……この人と何かあったのか?」

「サトルさま、カテリーナ様は覚えていますね?」

「え? ああ……」


 ファムに言われて思い出す。

 カテリーナさんと言えば、俺の股間を治療してくれたかわいい子だ。


 彼女は茶髪のサラサラストレートヘアーで、優しい顔つきをしている。

 マイスの友達の中でもひと際目立つ存在だった。

 何故なら……乳がでかいんだよなぁ。


 マイスと二人で並んでいると、二人ともボインボインで目のやりどころに困ったのを覚えている。


「カテリーナさんがどうかしたのか?」

「彼女はクルセルド家当主と側妻との間に産まれた子です。

 つまり……この候補者は……」


 ああ、そうか。

 思い出した。


 カテリーナさんは腹違いの姉からいじわるされてたとか、そういう話を聞いたな。

 つまりこの人はマイスにとって友達を虐める敵ってわけだ。


「この人の名前は?」

「調査書に書いてあるでしょう。

 ちゃんと読んでください」


 呆れたようにファムが言う。

 彼女はわざとらしくため息をついた。


「悪い……ええっと……」


 俺は書類を再確認する。


 その名はヘレーネル・クルセルド。

 クルセルド家の嫡子。


 そして……。


「結晶弾の使い手ですわ」


 マイスが言う。


「え? 結晶弾?」

「何もないところから物質を生成し、

 弾丸として打ち出すことで相手を攻撃するスキルですわ。

 汎用性が高いうえに、威力もかなりのもの。

 忌々しい……!」


 説明するのも嫌なのか、マイスは顔を引きつらせている。


 物質を生成して弾丸として使うなんて、そこそこ強いスキルだな。

 まぁ……対応の仕方はいくらでもある。


 コルドほどではないにしても、それなりに強いスキルの持ち主なのだろうが、マイスやソフィアと肩を並べられるかと言うと、ちょっと疑問。


「とにかくこのヘレーネルってやつを、

 どうにかして引きずりおろせばいいわけだな」

「平たく言うと、そう言うことです」


 ファムは済ました顔で頷く。


「ふむ……つまりは俺の出番ってわけか」

「ええ、思う存分に活躍して、

 ヘレーネルに辛酸を舐めさせて下さい。

 あなたならたやすいでしょう、サトルさま」


 ファムは俺の肩に手を置き、耳元でささやく。


「二人とも……悪人みたいで怖いですわ」


 マイスが震えながら言った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 160 生徒会選挙と対抗馬 まで読みました。 メインキャラ揃ってホームレス!  ↑ わああ……((((;゜Д゜))) この良い意味で独特な前ふりが良いですね! 次回予告的な楽しさがあり…
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