表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/206

159 可愛く思えて仕方がない

「ただいまー」


 俺たちは街のはずれにある仮住まいの小屋へと帰って来た。


 宿をずっと利用し続けるのはコスパが悪いと思った俺は、早々に新しい定住先を確保。誰も利用していない小屋があったので、持ち主にお願いして安く借りることに成功。

 当面はここに住む予定だ。


 小屋と言ってもそれなりに広く、6人が生活するのに十分なスペースがある。

 一人用の個室などはなく男女で寝室が分かれているだけ。寝る時以外は全員が同じスペースで過ごしている。


 まぁ、これでも一部屋で全員一緒に泊まるよりはいいだろう。

 少なくとも男女で部屋が分かれるわけだし。


「おお、お帰り。遅かったな」


 薪を割っていたアルベルトが、手拭いで汗をぬぐいながら声をかけて来た。


「すみません、色々とありまして」

「そうか、頑張れよ。俺も仕事を頑張るぞ」


 そう言って斧を両手で握り、薪割りを再開するアルベルト。

 ここ数日でようやく働き始めた。


 屋敷を追い出された当初は完全なニートと化していたアルベルトだが、今は生活のために頑張って働いている。

 と言っても、薪を割ったり、庭の畑を耕したりと、力仕事しかしていないが。


「お帰りなさい! ウィルフレッドさん!」


 洗濯を干していたマイスが手を振って迎え入れてくれた。

 今日は学校を休んで仕事を手伝っているらしい。


 雲一つない青天の空の下。

 風にたなびく洗濯物が気持ち良い。


「ただいま。洗濯お疲れさま」

「えへへ……ありがとうございます」


 照れくさそうに笑うマイス。


 彼女は制服ではなく、ゆったりとしたワンピースを着ている。

 お嬢様っぽくなくてちょっと新鮮。


「冒険者のお仕事は続けられそうですか?」

「それが……」


 俺はマイスに冒険者ギルドの状況を話した。


「そんな……廃業だなんて……」

「でも、ダンジョン攻略を諦めたわけじゃないぞ。

 とりあえず学校へ行って情報を集めてみようと思う。

 生徒会のメンバーがいなくなったから、

 別のパーティーが攻略に乗り出すと思うんだ」

「え? 生徒会の方々がダンジョンを?」


 どうやらマイスは知らなかったらしい。

 この様子だと他の生徒たちも、生徒会が普段から何をしていたのか把握してなさそうだな。


「ああ、ここ最近はずっと、生徒会のメンバーだけで、

 ダンジョン攻略の依頼を一手に引き受けていたらしい」

「それは存じませんでしたわ。

 そう言えば……生徒会の方々が失踪されて、

 選挙が行われることになりました。

 立候補しないかと私も声をかけられたのですが……」


 選挙?

 ああ……例のお約束イベントが英雄学校でもあるのか。


 どうやら生徒会選挙が行われるらしい。

 マイスもそのイベントに巻き込まれたってことか。


「わたくしを生徒会長に推す声があるようで、

 英雄科の方々から立候補を勧められましたわ。

 でも……おうちでの仕事もありますし、

 どうしようかと迷っていたところでして……」


 マイスは洗濯や掃除など、ソフィアと一緒に色々と頑張ってくれている。

 確かに助かってはいるのだが……。


「家事ならみんなで何とかすればいいから、

 マイスは今やるべきことを頑張ればいいと思うよ。

 生徒会選挙に立候補するつもりがあるのなら、

 是非とも挑戦した方がいい。

 それに……俺もマイスを応援したい」

「ウィルフレッドさん……嬉しいです」


 俺の言葉にウットリした様子でほほ笑むマイス。


 なんか最近、彼女が可愛く思えて仕方がない。

 洗濯や掃除などの仕事をしている姿を見ていると、ドキドキしてしまう。

 後ろから抱きしめたいなんて思ったこともある。


 今まではお互いにある程度、距離を置いて接していた。

 しかし……同じ屋根の下での生活が始まり、彼女の姿を間近で見るようになって、今まで気づかなかった魅力に気づけたのだ。


 こんなカワイイ女の子が俺を好きだなんて、奇跡と言ってもいいだろう。素直にこの幸せを噛み締めたいのだが、今の俺はちょっと複雑な気分。


 本来であれば、彼女はウィルフレッドと結ばれるはずだった。


 しかし、今の俺はウィルフレッドの皮を被った小日向聡こひなたさとるである。

 まったくの別人なのだ。


 それはマイスもよく分かっていると思うのだが……。


「ウィルフレッドさんが応援してくれるのなら……。

 わたくし、頑張ってみようと思いますわ!

 ありがとうございます!」


 そう言って俺の手を取り、ぴょんぴょんと跳ねて無邪気に喜ぶマイス。

 彼女の乳がぶるんと揺れた。


 ダメだ……可愛すぎる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ