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141 おすすめの就職先

 マイスは実家を追放されることになりました。


 いやぁ、笑えないなぁ。

 メインキャラ揃って全員ホームレスとか、笑えないなぁ。


「ははは……どうしよう」

「それを考えるのがあなたの役目です。

 なんとかして下さい、ウィルフレッドさま」


 ファムが真顔で言う。

 なんとかしろって……俺にどうしろって言うんだ。


 俺たちは近くの街で宿を取り、全員で同じ部屋に泊まることにした。

 所持金はまだ少し余裕があるが、この人数で生活するとなると数日で底をつく。

 それまでに生活費を工面しなければならない。


「皆様、お疲れのようでぐっすりと眠られていますが、

 明日になったら現実を突きつけられて不安になるでしょう。

 すぐに手を打たないと……」


 ファムはベッドの上で横になって眠る四人に目を向ける。

 アルベルトとセリカ、ソフィアとマイスは、それぞれ二つのベッドに分かれて一緒に横になって快眠している。

 人の気も知らないで……。


 部屋にはベッドが二つしかないので、俺とファムは床で寝ることが決定している。

 まぁ……それは仕方ないが……。


「あのさ……俺は窓側で寝るから、

 お前は通路側へ行けよ」

「夜は寒くなりますし、一緒に眠った方がいいですよ。

 そちらの方が温かいですし」

「お前と並んで寝るとか死んでも嫌なんだが?」

「ご安心ください。

 万が一ウィルフレッドさまがご死亡されたら、

 すぐに蘇生措置を取らせていただきます」


 マジで言ってそうなところが怖い。


「冗談はこれくらいにして、

 行動目標を決めておいた方がよさそうですね」

「ううむ……」


 確かに、具体的にどう動くか決めておいた方がよさそうだな。


 俺を含め、6人分の生活費を稼ぐには、そうとう稼ぎの良い仕事をする必要がある。

 楽にがっつり稼げる仕事なんてのはそう簡単に見つからないので、地道に稼いでいく必要があるな。

 最初のうちは。


 絶対評価ポイマスを使えば、商会にコネを作って、それなりに大きな金額を扱う仕事にありつけるかもしれない。

 ただ……今の段階だとちょっと難しいかな。


 俺の住んでいた世界とはかなり勝手が違うし、バカを騙して大儲けとはいかないだろう。

 何故なら一般市民は日々の生活をするのがやっとで、貯蓄をしている家庭はほとんどないからだ。


 これは学校で生徒たちと取引をして分かったことだ。

 庶民出身の生徒たちはお金にほとんど余裕がなく、小銭数枚しか財布に入ってない奴も多かった。

 騎士科や英雄科の生徒ですら、俺の所へ来るようなやつはろくに金を持っていない。


 向こうの世界ではどんな奴でもある程度は金になった。

 しかし、こちらの世界では誰もが金欠状態。

 おまけになんの伝手もない一般人に金を貸してくれる消費者金融のような業者も存在しない。


 なので、そこら辺の奴を騙してがっぽり大儲けって言うのは難しそう。


「なぁ……俺でもできる仕事って何かあるか?」

「あるにはありますが……

 働き口はやはり限られていますね。

 新しく商売を始めるにしても元手が必要ですし」

「そこら辺の石ころでも拾って、

 魔法のアイテムとか言って売るか?」

「最悪、死刑になりますので、やめておきましょう」


 詐欺で死刑になるのか、この国は。

 色々とヤベーな。


 アルベルトの名声を利用すれば、まとまった額の金を借りることも可能だろうが……それを元手に商売を始めるにしても、ある程度は情報が必要になる。


 俺はこの世界のことをまだ何も知らない。


 英雄学校はこの世界の一部でしかないのだ。

 屋敷と学校から外へ出たことがないくせに、全てを知った気になるのはおろかだろう。


 まずは地道に世の中の仕組みを理解していこう。

 大きく儲けるのはその後でいい。


 絶対評価ポイマスがあれば、資金を得るのに時間はかからない。

 焦らずに少しずつ……。


「ちなみに、おススメの仕事ってなに?」

「やはり冒険者ですかね」

「え? 冒険者?」


 聞きなれない単語が出て来た。

 いったいどういう仕事なんだろうか?


「どこかに探検にでも行くのか?」

「ダンジョンの探索や、魔物の討伐を行う仕事ですね。

 依頼があればどんな仕事でも引き受けます」

「人殺しも?」

「場合によっては……」


 ならパスだな。

 殺しは専門外だ。


 俺は人殺しなんてしたくない。


「ですが、依頼は自分で選べます。

 人を殺す依頼を受けなければいいだけです」

「ううん……」


 仕事が選べるって言われてもなぁ。

 魔物の討伐も嫌だし、ダンジョンとかよくわからない場所の探索もゴメンだ。

 もっと安全な仕事を探そう。


「そもそも俺に戦いなんて向いてないだろ」

「ええ、もちろんそれは私も分かっています。

 あなたが最弱で、クソ雑魚で、カスで、ごみで、

 うんこちんちんな戦闘能力しかないことは、

 ソフィアさまもマイスさまも理解しているかと」

「ひでぇ言いようだなぁ、おい」

「ですが……」


 ファムはにぃっと笑う。


「全ての冒険者が戦うわけではないのですよ」

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