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136 お互いに求めあう関係

「どう? 似合うかな?」


 ソフィアはくるりと一回転して見せた。


 彼女が着ているのは赤いパーティードレス。

 裾が膝丈までしかない今風のデザイン。


 ちょっとかわいいと思ってしまった。


「似合ってるよ、とても」

「本当に? 嬉しいな」

「そのドレスはマイスが?」

「うん……前からプレゼントしようと思ってたんだって。

 最初はいいよって断ろうとしたんだけどね……」


 そう言って苦笑いするソフィア。

 でも嬉しそう。


「良かったね、マイスと仲良くなれて」

「うん……まぁ、今までも仲良くしてたつもりだけど。

 あそこまで私のことを好きだとは思わなくて。

 ちょっと……照れちゃうかな、あはは」


 苦笑いするソフィアだが、顔が赤くなっている。

 恥ずかしさ半分、嬉しさ半分ってところか。


 俺はソフィアを隣に座らせる。

 ちょこんと腰かける姿がカワイイ。

 ドレスを着ているからか、いつもよりも色っぽく感じる。

 まぁ……見た目はほとんど小学生のままなんだけど。


 そう言えば……聞きたいことがいくつかあるな。


「今までマイスを、どんなふうに思ってたんだ?」

「どうって……友達だと思ってたよ」

「あんなに意地悪されてたのに?」

「あれは意地悪なんかじゃないって分かってたよ。

 ウィル様も気づいてたでしょ?」

「まぁ……うん」


 あの態度を見ていれば誰でも気づく。当の本人はばれてると思ってなかったみたいだけど。


 マイスはソフィアが現れたことで友達ができたと言っていた。

 だからこの子を特別な存在として受け入れたのだろう。


 では……ソフィアの方はどうなのか?


 ある程度、好意的に接してくれていたとはいえ、表面上は悪役令嬢が意地悪するかのような態度で接してきていたのだ。

 マイスのことを☆5評価するほど、好印象を抱いたのは何故か。


「マイスは君と距離を置いていただろ。

 それでも、君は彼女を友達だと?」

「うん……思ってたよ。

 マイスが私と距離を置くのは仕方ないし、

 それで彼女を嫌いになることはなかったかな。

 毎日声をかけに来てくれて、

 どんなに私が周りに迷惑をかけても離れなかった。

 ずっと傍にいてくれたのはマイスだけだよ」


 ソフィアはそう言ったあとで「あっ、ウィル様もだけどね」と、割とどうでもいいフォローをしてくれた。


 ソフィアにとって、マイスは唯一の繋がりだったのだ。


 彼女だけが、この世界でソフィアに関心を持ってくれる。

 離れないで傍に寄り添ってくれる。

 だから……特別な存在だと思っていた。


 一見、犬猿の仲に見えた二人が互いに最高の評価を付けていたのは、孤独を埋め合わせるため互いに強く繋がろうとしたから。

 他人との関係に煩わしさを感じざるを得ない混沌としたこの世界で、彼女たちはお互いに孤独からの救済を求めあったのかもしれない。


「なんにせよ――

 二人が本当の意味で友達になれてよかった。

 心の底から祝福するよ。

 おめでとう」

「うん……ウィル様も色々とありがとね。

 ボロボロになるまで助けようとしてくれて」


 あれはソフィアを助けようとしたというより、ソフィアに助けてもらおうとしたんだけどな。

 まぁ……彼女が救われたと思うのなら、それはそれで構わないけど。


「ああ……別にいいよ。

 それより、副会長だけど……面識とかあったの?」

「ううん、まったく。

 手動販売機の中の人が、まさか副会長だったなんてね」


 ソフィアとコルドの接点は、やはり手動販売機に限られていたようだ。


 マイスの話によると、あの手動販売機はコルドが副会長に就任すると同時に設置されたらしい。

 つまり、奴は最初からソフィアを狙っていたのだ。


 しかし……どうしてもっと早く手を出さなかった?

 あいつらならソフィアを誘拐するくらい、朝飯前だったと思うが……。


 ファムから聞いた話だが、エイダも相当強かったとか。

 ゴッツの能力は微妙だったけど、キースのもなかなか有用なスキルだったし、協力すればそれなりに強いはずだ。

 邪魔が入っても四人で協力すれば簡単に排除できる。


 ソフィアの誘拐も薬で眠らせて箱の中に閉じ込めればいいだけなので、いつだって計画を実行できた。

 実際、コルドから飲み物をもらって飲んでたからな。


 簡単に目的を達成できる条件がそろっていたのに……どうして実行したのが”今”なのか。


 ここで考えていても分からないな。

 せめて桧山がいれば色々と聞き出せたのだが……。


「なぁ……ソフィア」

「なぁに? ウィル様?」

「ソフィアってさ……キスしたことある?」

「……え?」


 色々と考えを巡らせた俺は、とりあえず目の前の課題をクリアしていくことにした。


 このまま何もしないでいたら、問題が山積みになったままである。

 せめて……ソフィアの問題だけでも解決しないとな。


 マイスとファムか彼女を誘拐して安全な場所へ連れて行こうとしていたが、確実な手段ではない。

 やはり、アルベルトが言っていた通り、俺が彼女を――


「まっ……まだだけ――え?」


 俺はそっとソフィアの顎に指を添える。

 彼女の口を上向かせて、そのまま……。

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