135 事件の決着とその後
それから。
事態の収拾に向けて色々とありました。
俺とマイスとダルトン、ついでにファムも、治療のために救護棟へと搬送されました。
脇腹に穴が開いただけでしたが、滅茶苦茶痛かったです。
治療にかなりの時間を要するかと思っていたのですが、カテリーナさんを始め、魔法科の生徒や治癒系のスキル持ちの方々が熱心に治療してくれたおかげで、一日で全回復。
スキルの力ってスゲーと、改めて思いました。
マイスは一番沢山ボコボコにされていたはずなのですが、一番軽症で済んだということで、信じられない勢いで回復しました。
救護棟に運ばれて10分もしないうちに全回復。
本当に化け物過ぎて笑えません。
意外にもファムは俺と同じくらいに治療に時間がかかり、ゆっくりベッドで丸一日お休みになられたそうです。
それでも性欲は持てあますようで、夜中にファムから襲われそうになったのですが、救護班のおじいさんが助けてくれました。
本当にありがとうございます。
いや……マジで。
翌日、すっかり良くなった俺たちは学生寮のマイスの所へ行きました。
そこにはソフィアがいて、皆に囲まれて楽しそうにお茶をしていました。すごく居づらそうにしているのは気のせいではないでしょう。
次から次へお茶やらお菓子やら勧められるソフィアは、まるでお人形のように扱われていました。
中でも……。
「さぁ、ソフィア。
おいしいお菓子を沢山用意しましたの。
好きなだけ食べて下さいね。
あっ、あと……」
「ううん……分かってるよ、マイスお姉ちゃん。
一人で出歩いたりしないから……」
べったりとくっついてソフィアから離れようとしません。
さすがにソフィアが不憫すぎると思ったので、ツッコミを入れることにしました。
「ということでどうぞ」
「助かる」
俺はファムからハリセンをもらい、マイスをひっぱたきました。
ええ、それはもう、思いっきり。
「なっ、なにをするんですか⁉」
何を、じゃないです。
早く正気に戻って下さい、バカ野郎。
一発では効かなかったようなので、二発、三発とハリセンで突っ込みました。
それはもう盛大に。
丁寧に説明しました。
ソフィアはお人形でも、おもちゃでもない。
ましてやマイスの妹でもない。
構いすぎたらかわいそうなので、少し距離を置きなさい。
接し方も今まで通りに戻すのです。
「嫌ですわ! ぷんぷん!」
わけのわからないことを言い始めたので、さらにもう一発ひっぱたきました。
すると、なんか殺意のこもった目で睨みつけられましたが、遠慮なくさらに追加でもう一発。
この馬鹿を放っておいたら、ソフィアの未来が危険で危ない。
「なぁ……今更だけど、こいつヤバくねーか?」
何故かついて来たダルトン君がマイスを指さして言いました。
何気に彼が一番まともなキャラクターだと思います。
少なくとも他人を妹認定して溺愛したりはしないでしょうし、人の消化器官系に異物をぶち込んだりもしないはずです。
……だよね?
おふざけはこれくらいにして、現状について話し合いました。
生徒会の連中は姿を消し、何処にも見当たりません。
ゴッツも、キースも、エイダも、三人とも副会長と共に姿を消しました。
そして……あの、桧山も。
生徒会室にあった檻が何者かによって破壊され、中にいた桧山も連れ去られてしまいました。
おかげで組織とやらについても聞けません。
やはり、無理をしてでも連れて行った方が良かったみたいです。
生徒会の連中が姿を消したことで、真相は闇の中に。
彼らが何故、ソフィアを誘拐しようとしたのか、分からないまま終わりました。
嫌ですねぇ……そんなのは。
しかし、手掛かりが何もない今の状況では真相を知るすべはありません。
政府のエージェントが捜索しているとか、なんとか。
生徒会の人たちが全員いなくなったことで、新たに選挙が行われるようです。
まぁ、俺には関係ありませんね。
ちなみに、爆殺丸はちゃんと回収してあります。
学校の隅の方に転がっていたそうです。
うっかりどこかにぶつけたら大爆発しちゃいますからね。
伝説の武器を見失わずに済んで本当に良かった。
いや……マジで。
ということで、今回の事件はこんな感じで決着がついた。
ああ……疲れた。
俺はぐったりとベッドの上で寝そべり、ため息をつく。
今になって疲れがどっと襲ってきたぞ。
ソフィアを無事に奪還できたはいいけど、根本的な問題は何も解決していない気がする。
彼女が人間爆弾にされる運命が変わったわけでもないし、フォートン家が抱える問題が解決したわけでもない。
早いとこ何とかしないと、俺の運命が危険で危ない。
桧山が言っていたことが確かなら、俺にも審判の時が来るのだろう。
主人公として不適格と神によって判断されたら、動物にされてしまう。
せめて豚以外にしてほしいものだ。
犬とか……猫とか……あとドラゴンとかがいいな。
「ウィルさま、いる?」
部屋の扉がノックされ、ソフィアの声が聞こえる。
入ってどうぞと軽く返事をすると、扉が開いて彼女が入室してきた。
「え? その格好は……」
俺はソフィアの服装を見て目を丸くする。




