126 逆転の方法
朝日が昇る。
麦畑に光が差す。
周囲は水と電撃で酷い状況になっていた。
俺とダルトンは戦いに巻き込まれないよう、手動販売機の影に隠れながら戦いの行く末を見守る。
コルドは防御に徹し、攻撃を防ぐことに集中しているようだ。
彼女が発生させる水は電気を通さない。
距離が開くとマイスは我慢しきれずにスキルで遠距離攻撃を仕掛けてしまうのだが、水の壁によって全て阻まれ不発に終わる。
いくら攻撃しても無駄。
マイスが突っ込んで接近戦を仕掛けても、コルドは適当にいなして距離を置く。
その繰り返しだ。
しかし、いつまでも同じ展開が続いているわけではない。
着地の時に踏ん張って態勢を立て直そうとする時や、遠距離攻撃が途切れる時など、動作の合間にマイスは隙を見せてしまう。
その一瞬を見逃さず、コルドは小さな水の弾丸を発射。
確実に攻撃を命中させていく。
「ぐっ!」
攻撃が当たるとマイスは苦しそうに呻くが、致命傷にはなっていない。
どうやらスキルの力で防御をしているらしい。
あるいはステータスを消費して耐久力を上げているのか。
どちらにせよ、一発、一発は大したダメージになっていないが、少しずつ耐久力を削られているのは間違いないだろう。
このままだと……確実にマイスは敗北する。
それまでに何か手立てを考えないといけない。
「なぁ……ダルトン。
何か武器になるようなものは持ってないか?」
「いや、何も」
普段からナイフとか持ち歩いてるタイプかと思ったが、そうではないらしい。
まぁ、ナイフだのメリケンサックだのがあったところで、この状況を打開できる切り札にはならないだろうが。
仕方がなかったとはいえ、爆殺丸を最初に使ってしまったのは痛かったな。
あれを取っておけば切り札になっただろうに。
俺は必死に頭を働かせて起死回生の一手を探したが、何も見つからない。
遠くから石を投げたところで何にもならないだろう。
はて……どうしたものか。
「ぐはっ!」
ついにマイスがきつい一撃を食らった。
今までよりも大きめの水の弾丸をわき腹にくらい、数メートル吹っ飛ばされる。
地面を転がって泥だらけになるマイスだったが、なんとか立ち上がって態勢を立て直す。
そこへさらに水の弾丸が数発。
すぐさま電撃を放って迎撃を試みるが無駄だった。
立て続けに敵の攻撃を食らって更にダメージを受ける。
「ぐっ……これしきのことで!」
それでもマイスは倒れなかった。
なんとか態勢を保ったまま敵と対峙している。
ちょとやそっとのことで泣き言など漏らさない彼女だが、勝敗が決するのも時間の問題だろう。
無論、敗北するのはマイスの方。
このまま手をこまねいていたら、本当にマイスが負けてしまう。
せめて一撃、敵に打撃を与えられれば……。
「すっ……ステータスオープン!」
俺は苦し紛れにステータスを開く。
先ほどのゴッツとの戦いで消費してしまったため、ほとんどのステータスがゼロ。
残っているのはINTくらいだが……これの使い方が全く分からん。
そう言えば……LUKは?
俺はファムのせいで全て消費してしまったが、あれのお陰でなんとか助かったのだ。
ダルトンが消費してくれれば、もしかしたら……。
「おい、ダルトン! LUKは残ってるか⁉
あったら全部使ってくれ!
何かいいことが起こるかもしれない!」
「あのなぁ……LUKを消費したところで何も変わらねぇって。
それに、さっきから見てるけど……。
たぶんマイスさんはLUKを消費しながら戦ってるぞ。
もちろん、他のステータスもな」
うわぁ……マジかぁ。
LUKを使ってあの状態なのか。
おそらく、攻撃を避けきれない時とかに使っているのだろう。
他のステータスも消費しているとなると……これはまずいぞ。
ステータスで肉体を強化して戦っても、ジリジリと押されているのだ。
LUKが残っていたところで状況は打開できない。
「なぁ……INT! INTはどうやって使えばいいんだ⁉」
「はぁ? そんなこと聞いてどうすんだよ?」
「頼む! 教えてくれ! 早く!」
俺はダルトンの肩を両手でつかんで揺さぶりながら尋ねる。
使えるものは何でも使え。
今はとにかく何か手立てが欲しい。
INTの使い道が分かれば……もしかしたら何か思いつくかもしれない!
「はぁ、一応教えてやるよ。
INTは魔法を使うためのステータスだ。
それを消費して機械を動かすんだよ」
「機械って……例えばあれか?」
俺は離れた場所に転がっているある物を指さした。




