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118 唯一の切り札

 やる気まんまんの副会長。

 もちろん、戦って勝てる見込みなどない。


 マイスの力はいまだに戻っていない。

 このまま戦えば二人そろってなぶり殺しにされるだろう。

 完全に詰んでいる。


 しかし、まだ俺には切り札が残されているのだ。

 ちゃんと機能するか分からないけどな。


「なぁ……コルド。

 マイスは学園一の実力者なんだろう?

 アンタが戦って勝てる見込みはあるのか?」

「ええ、もちろん。

 でなければアナタたちの前に姿を現したりはしないわ」


 でしょうねぇ。


 俺はちらりとマイスの方を見る。

 彼女は毅然とした顔つきでコルドに視線を送っていた。

 ビビっている様子など、微塵も見受けられない。


 虚勢を張っているのか、それとも演技をしているのか。

 どちらにせよ非常に助かる。


 ここで態度に出されたらヤバイからな。

 劣勢であることを相手に知られてはならない。


「ちなみに……水と電気、どっちが強いと思う?」

「よく水は電気を通すっていうけど、

 それはあくまで普通の水の場合ね。

 混じりけのない純粋な水であれば、

 電気を通さないというわ」

「というと?」

「私は完全なる純水を生成することができる。

 つまり……彼女の能力は通用しないってこと。

 これがどういうことか分かるかしら?」

「いや、まったく」


 そう言って俺はわざとらしく肩をすくめる。


 本当はよく分かっている。

 非常にヤバイ状況だと。


 仮にマイスのスキルが復活したとしても、戦って勝てる見込みはゼロだぞ。


 それにこいつはファムを倒した。

 マイスが敵う相手じゃないんだよなぁ……。


 だから……うん。

 やるとしたらこれしかない。


 俺は手に持っているブツを強く握りしめる。


 唯一の切り札。

 爆殺丸。


 こいつがどう役に立つのか分からない。

 しかし……どうにかしてくれるよう、祈るしかないのだ。

 伝説の賢者が使っていたという、伝説の武器に。


 何かに強く衝突させることで爆発が起こると聞いている。

 なので、副会長に直撃させればそれなりにダメージが通るはずだ。


 まぁ……当たればの話だけども。


 多分、無理だろうなぁ。

 当てられる気がしない。


「お喋りはこれくらいにして、そろそろ始めましょうか。

 アナタたちがどれほどの力を持っているのか、

 実際に試してみたかったの」


 そう言って彼女は自身の身体の周りに水を生成。

 糸のように細いものが何本も現れたかと思うと、コルドを中心にらせん状の形態へと変化。

 これからいったい何を始めるつもりなのか。


「どっ……どうしましょう?」


 不安そうにマイスが呟く。


 どうするか全く考えてない。

 しかし……やるしかないんだよなぁ。


 さて、何処へ爆殺丸これをぶつける?

 コルドの足元? それとも……。


「さぁ、見せて頂戴。

 我が国最強とうたわれる、マイス・フィルドの実力を!」


 コルドがそう言うと、らせん状を描いていた細長い水の先端が一斉にこちらへ向けられる。

 まるで槍のように鋭い。もはやただの液体ではない。

 人を抹殺できる武器。


 串刺しにされたら途端にハチの巣だ。

 もう逡巡している暇はないぞ。


 俺はDEXデクスティリティを消費。

 大きく振りかぶって爆殺丸を砲丸投げの要領で投擲する。


「あら……そっちが戦うつもり?」


 俺の貧相な投擲攻撃を見て鼻で笑うコルド。

 爆殺丸は彼女に当たることなくすぐ横を通り過ぎ、地面へと落下した。


 その瞬間。




 どがああああああああああああああん!




 すさまじい爆発音と共に大きな衝撃波と閃光が放たれた。


「マイス! 伏せろ!」


 俺は隣にいたマイスを地面に伏せさせる。

 その上に覆いかぶさり、飛んできた飛来物から彼女の身を守る。


 爆発によって発せられた爆音のせいか、耳が聞こえない。

 周囲の状況がどうなっているのかもわからない。


 衝撃はものすごい勢いで拡散。周囲の物をあらかた吹き飛ばしてしまう。まさかこれほどの爆発が起きるとは……。


 敵をひるませたらマイスと共に魔道艇に乗って逃げる算段だったのだが、この様子だと船も無事では済むまい。

 その前にコルドも消し炭になったかもしれないが。


 あたり一面に土煙が舞い、パラパラとつぶてが頭上から落ちて来た。


 ようやく頭を上げた俺はマイスの肩をポンポンと叩く。

 どうやら怪我はしていないようで、彼女はすぐに体を起こして胸元や肩の土埃を払っていた。

 この様子だと大丈夫そうだな。


 彼女は身振り手振りで何かを必死に訴えようとしているが、まったくわからない。俺の方から何を言っても聞こえないだろう。


 さて……これからどうするか?


 こういう時、やってないと考えるのが妥当だろうな。

 映画とか漫画だと爆発に巻き込まれた敵は普通にぴんぴんしている場合が多い。

 コルドも今の爆発では死んでないだろう、多分。


 予想以上に大きな爆発が起きてしまったせいで、魔道艇で逃げることはできなくなってしまった。

 ソフィアが閉じ込められた箱を運びながら逃げるのは無理がありそうだが……。


「……! ……!」


 マイスが俺の肩をバンバン叩いて何かを指さしている。

 コルドが復活したのか? と思ったが違った。

 敵がいたのとは反対方向だ。


 彼女が指さした先には……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 爆発音で耳が聞こえない、といった表現だったり >あたり一面に土煙が舞い、パラパラとつぶてが頭上から落ちて来た といった表現であったり、その場の画像が映像として、鮮やかにイメージできまし…
[良い点] 物語序盤は良くある転生物の俺TUEEEEが無いので安心しながら読ませていただきました。作品のコンセプト的にはこれからも無いのかな? 自分の好きなスタイルの物語進行なので大変嬉しいです。 …
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