11 誰にも見えないメニューアイコン
ゴロネイルのステータスにも、ファムのステータスにも、メニューアイコンが見当たらなかった。
一応、ナーガにも確認しておくか?
「なんなんだ、さっきから。
何をしているんだ?
ステータスなんか見せ合ったりして」
俺の背中から首を出して俺のステータス画面をのぞき込むナーガ。
「あの……ナーガさん」
「なんだっ⁉」
「俺のステータス画面に変なもの映ってません?」
「変なもの? ステータス以外、何も映っていないが」
「…………」
この人にはメニューアイコンが見えないのか?
だとしたら……。
「そんなことより! バカ亭主!
さっさと仕事に戻んな!」
「でっ……でも……こいつらが屋敷を……」
「屋敷なんて後で直せばいいんだよっ!
少し壊れたくらいでごちゃごちゃうるさい!
それより! お花さんが優先だよ!
早く植えないとかわいそうだろうが!
アンタの『土壌改善』で土をキレイにするんだよ!
ほらっ! 早く来な!」
「ひいいいいい!」
ゴロネイルはガーナの首根っこをつかんで、ひょいと持ち上げてしまった。
俺の頭の高さくらいで彼のつま先がブランブランする。
どんだけ力持ちなんだよ。
「邪魔したね、失礼するよ」
ゴロネイルは一礼すると、ガーナを連れて出て行ってしまった。彼女の歩いた跡がくっきりと凹んでいる。
体重、いくつくらいあるんだろう。
「おっ……恐ろしい人でしたね……」
「彼女はアルベルトさまに並ぶこの国の英雄です。
今も前線に赴いて活躍されています」
「そうですか……」
その情報はいらない。見ればわかる。
「ちなみに、ガーナさまの『土壌改善』のスキルは、
土の毒素を浄化して栄養を豊富にする力があります。
彼はその力を求められジェステの家に婿入りしました。
何が人を惹きつけるのか分かりませんね」
「ええ……そうですね……」
何気に重宝しそうなスキルだ。
俺が代わりに欲しいくらいだよ、それ。
「ちなみにゴロネイルさんのスキルは?」
「彼女のはシンプルですよ。その名も『自己再生』。
普通よりも何倍もの速さで傷が癒えます。
身体を欠損してもしばらくすると元通りになるそうです」
「…………」
あんなのが戦場で大暴れして、ダメージを与えてもすぐに回復するとか……彼女と戦う敵の兵士は災難だろうな。
「それで……ファムさん。
一つ見て欲しい物があるんですが……」
「なんでしょうか?」
俺はステータス画面を開いて、左上のメニューアイコンを指さす。
「これ、見えますか?」
「いえ……私には何も」
「…………」
どうやら、俺以外の人にはメニューアイコンが見えないらしい。
それはつまり……メニュー画面から行けるシステムに関して、その存在を誰も知らないということだ。
これ……何気にスゴイ発見だぞ。




