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109 俺にそっちの趣味はない

「……くっ」


 俺がにらみつけると、キースは悔しそうに唇をかむ。

 このまま一気に肩を付けてもいいのだが、ゴッツのようにはいかないだろう。


 ゴッツは完全に俺を見くびっていたし、戦闘慣れしていないのが明らかだった。

 なので罠をかけるのはそう難しくないと分かったし、思った通りにことが運んだ。


 しかし、コイツがどう動くかは未知数。

 明らかに戦闘力はゴッツよりも劣るだろうが、それでも不用意に手を出せば手痛い反撃を受けるだろう。

 追い詰められたネズミは猫をも殺すというし、慎重になった方がいい。


 だが……相手の様子を見る限り、こちらの方が優位に立っていると思われる。

 できる限り情報を引き出しておきたい。


「なぁ……教えてくれよ。どうして俺を殺そうとした?」


 俺は冷たい口調で語り掛ける。


「言うはずないにゃぁ」

「そうか、なら仕方ない」


 俺は気を失って倒れているゴッツの頭を踏みつける。


「今からこいつの頭部を破壊する。

 非力な俺の力じゃ無理だろうが、

 ステータスを消費すればできなくもないだろう。

 どんな風になるか見ものだな」


 わざとらしく口端を釣り上げて見せる。

 少しだけキースの顔に焦りが滲んだ。


「まっ……待って!」

「待って欲しいなら情報をよこせよ。

 俺を殺そうとした理由を話せ。

 それとも、俺とガチの殴り合いでもするか?」


 俺はゴッツの頭を踏みしめたまま、肩をすくめる。

 キースが攻撃してきそうな気配はない。


「副会長に命令されたんだ……それで……にゃぁ」


 副会長が俺の命を狙う理由が全く分からない。

 ファムは何かしら気づいていたようだが……救護棟を襲ったってことは、やっぱりソフィアが狙いなのか?


「副会長から俺を殺そうとする理由については何か聞いているか?」

「いや……なにも」

「お前らは理由もなく人を殺せと命ぜられて、

 反対もせずに素直に従うのか」

「副会長の命令は絶対だにゃぁ」


 言われるがままなんでも従う傀儡。

 殺人ですら厭わない。


 とんでもない連中だな。


 キースは不安そうにゴッツをちらちらと見ている。

 どうやらコイツ一人で俺を倒すのは難しいらしい。


 先にゴッツ(こっち)を倒したのは正解だったな。

 キースを先に倒したら情報を引き出せなかっただろう。


「その副会長ってどんな奴なんだ?」

「僕たちの恩人だにゃぁ。

 居場所を与えてくれた、大切な人だにゃぁ。

 だから……どんな命令でも従う。

 それが殺人であったとしても」


 じっと俺を睨み返すキース。

 先ほどとは表情が打って変る。


「……なんだ、その眼は」

「このままここで油を売っていていいのかにゃ?

 お仲間さんは倒されちゃったみたいだけど?」

「……え?」


 仲間というのはファムのことか?

 あいつ、負けたのか?!


「どうせハッタリだろ?」

「嘘じゃないにゃぁ。

 さっきから全然動いてない。

 このまま放っておいたら死んじゃうかもにゃ」


 俺の動揺を誘っているのか。

 キースは挑発的な口調で言う。


「ファムはどこにいる?」

「教えてあげてもいいけど、取引をするにゃぁ。

 ゴッツを解放してくれたら教えてあげるにゃぁ」


 いっちょ前に取引を持ち掛けてきた。

 暴力で屈服させて従わせてもいいが……。


 俺はキースの手に目を向ける。


 ナイフか何か隠しているとしたら、それをいつでも取り出せるように意識しているはずだ。

 ポケットを触っていたら得物を隠している証拠。


 その素振りは見せていないが、何かしら武器になる物を隠している前提で考えた方がいいだろう。


 こいつの申し出に従うのは悪手だ。

 素直にファムの居所を教えてくれるとは限らない。


 そもそも今の言葉が真実とは思えないしな。


「バカが……状況をよく考えろ。

 どっちが優位に立っているのか教えてやるよ」


 俺はステータスを消費。

 STRを強化して倒れているゴッツの腕を踏み潰す。




 ごきっ!




 鈍い音が聞こえる。


 まるで自分の足が鉄の棒になったよう。

 踏みつけた時の感覚が通常とは異なる。


 さっき足を引っかけた時も感じたのだが、ステータスを消費すると自分の身体が別物になったような違和感を覚える。


「やっ……やめろっ!」


 たまらずに叫ぶキース。

 一気に冷静さを失う。


「お願いだにゃぁ!

 これ以上、酷いことをしないで欲しいにゃぁ!」

「はぁ⁉ 俺を殺そうとしたくせに!

 なんだったらコイツの手足を、

 全部へし折ってやってもいいんだぞ!」

「そっ……そんな!」

「冷静に状況を振り返ってみろよ。

 命令するのは俺か? お前か?

 なぁ……どっちだよ?

 答えないと――」


 俺は腕を踏みつけた足をゴッツの頭へと持って行く。

 キースは観念したように肩を下ろした。


「こっ……降参するにゃ。

 なんでも言うことを聞くから……」

「じゃぁ、脱げよ」

「……え?」

「服を脱いで全裸になれって言ってんだよ。

 早くしろ」


 断っておくが、俺にそっちの趣味はない。

 別にキースの裸が見たいわけじゃないぞ。


 ……ほんとだぞ。

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[一言] >……ほんとだぞ 信じるよ♡(←うさんくさい笑顔)
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