5、今日は、いよいよ卒業式、卒業式の後はグランベリーとホワイトイーグルの合同卒業ダンスパーティー
そして今日は、いよいよ卒業式。
卒業式の後はグランベリーとホワイトイーグルの合同卒業ダンスパーティーだ。
きらめくシャンデリアの下、ワタクシは王太子とワルツを踊る。
私と踊るときはいつもそうだが、王太子は今日も嫌そうな顔をしている。
眉をしかめ、ワタクシと絶対に目を合わせない。
ほんと、失礼しちゃう。
王太子の肩ごしに、モモカがピアノを奏かなでているのが見えた。
モモカは家にピアノがなくて、いつも学校でコソコソ練習しているくせに、妙にピアノが得意なのだ。
向こうから王太子の従妹いとこの公爵令嬢がやってきた。
王太子はほっとした顔で、ワタクシから離れて、公爵令嬢に挨拶しダンスを始めた。
私はモモカにそっと後ろから近づくと、何か嫌がらせをして恥をかかせようと考える。
モモカが真剣な顔つきで、両手を目にもとまらぬ速さで動かしているところに……
「ねえ!
モモカさん!
お聞きになった!?
ネリーさまったら卒業されたら、トミー先生とご結婚なさるんですって!!
知らなかったわ、あの二人がお付き合いしていたなんて!」
とわざと話しかける。
モモカの手の動きが怪しくなる。
メロディーが崩れる。
モモカが真っ青になり、手をとめる。
踊っていた貴公子や令嬢たちが急にダンスをやめ、一斉いっせいにモモカに目をやった。
ワタクシが
「あらっ! モモカさんどうなさったの?」
ときょとんとした顔をしていると、
王太子が大股で近づいてきた。
王太子はハンサムな顔を怒らせ
「ネウェル!
私は見ていたぞ!!
そなたはモモカがピアノを失敗するように、わざと話しかけたのだろう!!」
「いいえ、ワタクシそんなつもりは……
ただモモカさんに面白いお話を聞かせてさしあげようと思って……
それにモモカさんはピアノがとてもお得意だから、ワタクシが話しかけたぐらいで、失敗するなんて思いませんでしたのよ……」
ワタクシがここまでで言うと、王太子はついに決め台詞をいい放つ。
「ネウェル・スターブレス嬢!!
もういい加減にしろ!!
モモカに対する数々かずかずのいやがらせ、私はすべて聞き及んでいるぞ!、
私はそなたと婚約破棄する!!
そして私はこのモモカ・アオイ嬢と結婚する!」
王太子は象牙のピアノ鍵盤に手を叩きつけた。
ビギャアアンと不協和音が会場に響きわたる。
ワタクシは下を向いてニマニマすると
「よろしくってよ!!」
と堂々と答えた。