表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/46

マティスの容姿を少し加筆しました

馬車の中は重苦しい雰囲気に包まれていた。

とりあえず必要な荷物はなかったので、学園長室を出るとそのままお父様の乗ってきた馬車に押し込まれた。

眉間にしわを寄せ、無言のままのお父様を上目遣いに見つつ(美しいお顔にシワが残るのでヤメて欲しい)お言葉を待っていた。


「何か不満でもあるのか?」

「へっ?」

「何か、今の生活に不満でもあるのか、と聞いている」


思春期真っ只中の娘を持て余してる感がひしひしと伝わってくる。

前世での父親も携帯代が凄いことになった時(ゲームのやりすぎと課金で)こんな感じだったな。と思い出した。

イケメンではなかったけど心配する気持ちは一緒なんだな。と懐かしく思った。


それにしてもハンカチ落としの原因か。本当のことを言ってみる?

ダリオ様とお話がしたい。できることなら、メイドでもいいからお側に仕えしたい。

でも、この世界での求婚はあくまでも男性側からのようだし、自分の娘の不埒な姿は知りたくないよね、お父様。

なんと答えたもんかなぁ。と思案に暮れていた私の口からポロリと本音が出た。


「あの学園での身の置き所が無いのです」


確かにダリオ様とお近づきになりたい気持ちは第一だけど、登校初日での身分の壁が思った以上に厚くて高かったのよ。

あの階級意識バリバリのお嬢たちと今更仲良くできる気がしないんだよねー

だってもう直ぐ学年終わりの長期休暇になるのに、未だに無言で会釈のみだ。

もちろんこちらから歩み寄ってるわけでもないけど。

かといって勉学にいそしむって言っても、レベルが......。


ダリオ様(推し)以外の楽しみを見つければいいのかもしれないけど、記憶が蘇ってすぐ学園に放り込まれたのでどうしていいかわからないのが現状です。

言い訳と言われればそれまでだけど。


でも、お父様も思うことがあったのか、


「確かに記憶が戻ってないディータにいきなりの学園生活は辛かっただろう」


それだけ言うと、また黙ってしまわれた。

なんとなく、理解してもらえたようでちょっと嬉しい。

その後の馬車での沈黙は心地いいものだった。


=== === ===


懐かしのとまではいかないが、今世での記憶にある我が家に到着するとお母様と私の至宝レオの姿が。

ああ、レオ!そのふわふわの金髪が懐かしかったよ。


「お母様」


馬車を降りてお母様めがけて駆け寄ると抱きついた。

なんとなく同性という気安さと、やっぱりいくつになっても母親って存在は安心する。

お母様にもぎゅっと抱きしめられましたが、妖精のようなお顔をしてドレスの下のふくらみはなかなかのものだった。

『私もこれぐらいになるかしら』前世では味わえなかった”肩が凝る”というヤツを体験したい。

お母様は私の頭を優しく撫でると優しい声で言われた。


「ディータが帰ってくるというのでマティスが腕をふるったのよ。皆でお茶をしましょう」


この一言で私の中のスイッチがまた入ってしまった。


マティスとは我が家のお抱えシェフでパティシエでもある。

栗色の髪にチョコレート色の瞳、この国の人らしく色気だだ漏れの孤高の人。

繊細な飴細工から子牛の丸焼きまで作れてしまう天才シェフなのだ。


私が前世、『独身だろうな』と思った理由の一つに天才的に料理ができないということ。

レシピ通りに寸分違わず作っても、出来上がりはなぜか別物。

それでも食べられればマシ。大体はゴミ箱行きの代物しか作れない。

なので前世ではもっぱら外食かデリバリー、コンビニにお世話になりっぱなし。

だってさぁ、食べられなくて捨てるのはもったいないからね〜


それにしても、男を掴むなら胃袋を掴めというけど、私の場合は自分の胃袋すら掴んだ試しがないのだ。

大体、『私、料理苦手なんです』って言っても謙遜してるってしか思われないのはなぜか。

事前に申告してるにもかかわらず、本当にできないと『料理もできないのか』ってなる不思議。

ならお前が作ればいいじゃん。腹減ったら栄養補助食か、ゆで卵でも食っとけ。


いかん、いかん。前世のトラウマが……。


あえて学園の話には触れず、お母様と私の天使レオとリビングへ。

お父様は眉間にしわのまま、一人書斎へと向かわれた。ごめんね。


サロンにはマティスが腕を振るったというアフタヌーンティーのような華やかなテーブルセットがなされていて、穏やかな午後の日差しを浴びながら母娘(&弟)でこやかに歓談をした。

もう少しで学期末の休暇にも入るし、テストはダントツ一位だったし、暫くはまったりと記憶の回復に努めることになりそう。


しかし、この焼き菓子、究極の美味しさなんですけど。

前世では壊滅的だった料理の腕だけど、もしかして今世ではチート的なものが発動しないかしら。

せっかくマティスっていう素晴らしい先生もいるし、謹慎中で時間も沢山あるし、やっぱりどの世界でも胃袋は掴むに越したことはないと思うのよねぇ。


明日にでもお母様に相談してみようかしら。

GWはいかがお過ごしでしたか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ