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「あのガストルディ様の絵を拝見して思ったことなのですが……もし良かったら私の婚約者の絵を描いて頂けないかとっ!」
すっごい前のめりできましたね。メイベル様。
そう言って婚約者の姿絵を出してきた。
そこにはフェロモン全開で胸元全開の薄手のドレスシャツ姿で決めポーズをする30代前半な男性が微笑んでいる。
バラの花をくわえてないだけマシな、胸毛が描かれてないだけマシな、そんな絵が。
見た感じだけどメイベル様は年の差婚なのかな?
「こちらが私の婚約者の姿絵でアルトゥーロ様から頂いたものなんですけど……ちょっと違うというか......」
わかります。わかります。
ティーンエイジャーの女子が、中性的なダリオを(この国基準)お好きなメイベル様から見れば、この姿絵の男性はおじさんです。
フェロモンはよく伝わるけど……
「それは私も常々思ってましたわ。私の婚約者も私にはもったいないくらい素敵なお方ですが、姿絵はちょっと違うかなって。なんと申しましょうか、別の方の絵を持ち歩いているような違和感を常々感じておりました。だって、ティブル様はまだ18歳ですのに姿絵のティブル様は30歳のおじさまみたいなんですもの」
おっと、こちらのご令嬢は確か子爵令嬢のカリナ様?でしたっけ。
そう言って姿絵を見せてくれた。
えっと、なんかアイコラ?頭だけ挿げ替えてるだけで構図もポーズもメイベル様のと寸分違わないんですけど。
婚約者に渡す姿絵ってひな型が決まってるのかな?
「因みになんですけど、皆様、姿絵ってお持ちですの?」
「当たり前ですわ。正式ではありませんけど、婚約の後でお互いに贈り合うものとなっていますのよ」
そうレアンドラ様がおっしゃった後、微妙な雰囲気が流れてきた。
なんか地雷踏んだかな。
「……あ、あの、不躾で申し訳ありませんけど、もしやディータ様はガストルディ様の——」
「あ、いただいてませんけど(何か?)」
「「「「「ええーっ!!!!!」」」」」
皆様、姿絵を胸に抱いたまま固まってしまいましたね。
えっと、それってダメなやつ?
「信じられませんわ。婚約が決まった女性に姿絵を送らないなんて」
「……でも、こちらも渡してませんし(たぶん」
「いいえ、姿絵はまずは殿方から贈るものですのよ。女性から先にはありえませんの」
「いくらお父上が早くに亡くなられたとはいえ、お母上はご健在でいらっしゃるのに」
「後見人の方は何をされているのかしら」
「これは子爵家の恥になりましてよ」
「そこまで非常識なお方とは思いませんでした」
うわ〜、エスコートに次いで姿絵のダブルパンチでダリオの株は大暴落のストップ安までになっちゃったよ。
姿絵はこちらの世界で婚約指輪のようなものらしく、正式ではないけど慣習として絶対なものらしい。
それからご令嬢の皆様、口々に非難轟々、罵詈雑言。ついでに阿鼻叫喚でもう何が何やら。
そんな中、コホンと咳払いを一つレアンドラ様が。
途端に静けさが戻ってまいりましたよ。
やっぱり、身分不問って砂上の楼閣よね〜
「こんなことを申し上げてよいのかわかりませんけど……早急にご両親とご相談されることをお勧めいたしますわ」
それだけ言うと優雅にお茶をお飲みになりました。貫禄。
結局、紆余曲折を経てお茶会の継続は決まった。
家政を取り仕切る身になった時、完璧なお茶会を開くためにも洗練されたお菓子は必須ということで、各家のシェフの自慢の焼き菓子を食べ比べする会になった。
ま、それはあくまでも建前でお茶菓子を持ち寄ってのおしゃべりが楽しいってことにみんな気がついちゃったのよね。
初回はレアンドラ様が主宰するそうで、今から楽しみ〜
うちの猫は舌がうまく仕舞えません
ここにしおりを挟んで。ありがとうございました。




