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一夜にしてイタイ令嬢が悲劇のヒロインになった私の元に、ダリオの家から使者が来た。

ダリオの家でお茶会をするから来て欲しいというものだった。

日にち書いてないんだけど、いつ行けばいい?


しっかし、今更感が半端ないんですけど。行かなきゃダメなのかなぁ。

とりあえず、父母にダリオからの手紙をそのまま転送し、マティスには次回のお茶会でのお菓子を頼む手紙を書いた。


ダリオノート(ネタ帳)を開いて次のお茶会で披露するネタを探していると、部屋をノックする音がした。

基本、高位貴族でも寮の部屋には侍女の常駐はないのでドアは自分で開けなければいけない。


「はい、どうぞ」


ドアを開けるとレアンドラ様が立っていた。

中に通して椅子を勧めると迷いながらも話を始めた。


「実は、ディータ様が馬車の事故に遭われて王宮の夜会を欠席された時のことなのですが———」


話を要約すると、私が夜会を欠席した日、ダリオは来ていた。

確かに、王宮主催の夜会は婚約者が欠席ぐらいで行かないという選択肢はない。

この国の貴族に生まれたからは、よほどの理由がない限り王様からの招待を欠席するというのはありえない。

だが、ダリオはその時に私ではない女性をエスコートしてきたというのだ。

その時は私と婚約していることを知らないレアンドラ様は、ダリオの婚約者候補が誰なのか興味津々だったという。

お相手は新興貴族(つまり爵位を金で買った)の中でもかなり裕福な男爵令嬢とのことだった。


「子爵家はお父様が早くに亡くなられてから、領地運営がうまくいってないと聞き及んでおります。ですから、いろいろと噂の絶えない男爵令嬢ですが、仕方がないのかな。と思っておりました」


婚約者の現行犯の浮気ですか。記憶が戻る前なら怒り心頭だったろう。


「しかし、婚約者がありながら他の女性をエスコートするのは社交上、最高位の禁忌事項。

もちろん、婚約者がご一緒できない場合もあります。この国ではそういう時、母親か既婚の姉妹か親族にパートナーを頼むことになっていますの。それでもふさわしい女性がいない場合、男性に限り一人で参加することも認められています。ですから、親戚でもない女性をエスコートすることはできませんし、あってはならないことなのです」


図書室で婚約した日をぽろっと言ったのをレアンドラ様は覚えていたらしい。

私が他国からの人間ということを踏まえて、この国の慣習をさりげなく教えてくれている。


「それに、その方とは今回だけではございませんの」


なんですとー。人の誘いは散々断っておいて、自分はちゃっかり他の女性と遊びまわってたってこと?

確かに、この国の女性と私とは女性の魅力という点においてベクトルが違うことはわかったけど、好みじゃないならそっち(男爵令嬢)選んでくれよー

なんでわざわざ面倒な私(ストーカー)にしたのか意味わかんないんですけど。


「と言うことは———」

「ええ、エステルや他のご令嬢よりお話を伺いましたの。その時はディータ様と婚約されていたなんて知らなかったものですから」


うーん、謹慎中で屋敷から出れなかった時に決まった婚約だったからね。

そうなるだろうなぁ。でも、お茶会にはご招待しましたのよ、何度も。

もしかするとウチに来ると言ってその女と逢いびきってことはないわよねぇ。

自分のやったことはとりあえず棚に上げて、湧き上がる殺意に握られる拳。


「このような言い辛いことをわざわざお伝えいただきありがとうございます」

「いいえ、そんな。かえってお気を悪くされたのではなくて?でも、王宮の夜会という公の場でのことですから、ディータ様から破棄を申し立てても誰も非難いたしませんわ」


おお〜それはいいことを聞いた。

レアンドラ様は頼りになるわね。伊達に学年で一番の爵位もちを名乗ってるわけじゃなかったのね。


「その時は証言をお願いしてもよろしくて?」

「ええ、もちろんですわ。その時は私の婚約者からも口添えさせますわ」


それから、この国での婚約者のいる女性の心構えを聞いた。

未婚女性の場合、エスコートは原則婚約者、もしくは両親(後見人)だけになるらしい。兄弟でも後見人でも既婚者じゃないと難しい。

奥さんと対で参加する夫婦にお邪魔させていただくって感じですね。聞いといてよかった〜

そして私に対する理不尽な噂の出所は男子生徒からだったのもわかった。


「この学年の男子生徒の品がなさすぎてイライラしますわ」


そう言うレアンドラ様はお怒りのご様子。

どうやらセクハラ発言は私だけではないようですな。


「ですから未だにこの学年で婚約が決まっていない生徒は、男子生徒のだけなんですよ」


そう言って笑うレアンドラ様の黒い微笑み。好きになりそう。

蛇足ついでに、レアンドラ様の婚約者は年離れてますよね〜と聞いてみた。


「ええ、私の生まれる前から決まっていた婚約でしたから」


って爽やかに言われましたよ。恐るべし、貴族社会。

不景気なのに体重だけは右肩上がり。困ったものです


ここにしおりを挟んで。ありがとうございました。

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