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はあ、だろうと思いましたよ。
今までガン無視だったのに急な接触ですからね〜
聞きたいことはそこですか?他にはない?お嬢さん方。
「それは、ガストルディ様からお聞きいただければ......」
出来れば穏便に済ませたかったのよ、婚約解消をお願いしている状態だから。
「それができないからお聞きしてるのですわ」
「そうです。なぜあなたが私たちの憧れの君と婚約を」
「持参金をどれほど積まれましたの?」
うわっ。さりげなく下世話なこと聞いてくるよ。
それに”憧れの君”って。
「皆様はガストルディ様をお慕いしていらっしゃるのですか?」
「いいえ、違いますわ。仮にも私たちは婚約者のいる身。そのような不謹慎なことは」
お、レアンドラ様、即答です。そこは流石、貴族の責任というものがわかってらっしゃる。
「そうですわ。ただ、あのお美しいお顔を拝見させていただくだけで幸せなのです」
「そうそう、ガストルディ様は学年一、いいえ、学園一美しいお方ですもの」
「独占してはいけないお方なのです」
口々にどう美しいのか素敵なのかとダリオ称賛の声が上がる。
はあ、そうですか。早い話、彼女たちはダリオの追っかけってこと?
確かに、この学年でイケメンってダリオぐらいしか思い浮かばないものねぇ。
その彼を皆で密かに見てたってことになるのか。
っていうことは、ちょっと前までの私と同じってこと?
ああ、同好の志よ、同じ穴の狢たちよ。
「まだ公にはなっておりませんが、確かに私はガストルディ様と婚約しております」
そう言って出されたお茶を一口飲んだ。
「ですが、皆様のお気持ちもわかりますわ。美しいものを愛でたい気持ち。
よろしければご一緒にガストルディ様のお話でも」
「きゃー」
一斉に上がる黄色い声。やっぱりね。
ダリオの情報に飢えてたのか。
いくら顔が良くても性格に難ありだもんね〜彼は。
親しくお話なんかできない雰囲気を醸し出してるわよね。
その後は一転して和やかな雰囲気のもと、私が持っている情報を小出しに披露し、マティスの焼き菓子をいただきながらお茶を飲んだ。
なんか推しの魅力を語るオフ会にでも参加してる気がする。
しかし、あのストーカー行為が思わぬところで身を結ぶとは。
宴もたけなわですがそろそろ下校の時刻になりました。
「では明日、情報をまとめたものをもってまいります」
ご挨拶をすると、ご令嬢の皆様、目が輝いておりましてよ。
とりあえず、その日はそこで解散となった。
翌日、ちょっとしたペーパー的なものをレアンドラ様にお渡しする約束をして。
寮に戻ると早速ダリオノートを探した。
もう、ダリオへの気持ちは憑き物が落ちたようにさっぱりしているが、二次使用となれば話は別だ。
推し認定してから謹慎を言い渡されるまで書き溜めていた、その中から使えそうなものをピックアップして漫画にしてみよう。
前世では薄い本を作るほどの力量はなかったけど、学生の手慰み程度なら問題ないぐらいの画力はあると思う。
この世界には、オタク文化などというものがないからきっと受けると思うの。
うわ〜なんか急に学園生活が楽しくなってきた。
そのうち、徐々にだけどオタク道に彼女たちを引き込みたいなぁ。
それよりも先にマティスにお礼の手紙を書かなくちゃ。
あの焼き菓子にダリオ同様ファンがついたかも。
こっそりお持ち帰りしてるご令嬢を見たとき心の中でガッツポーズしちゃった。
それからマティスへのお礼のカードを書いてからダリオへの二次使用に取り掛かった。
この世界でも個人情報って気にするのかな?とりあえず名前は伏せておくことにした。
=== === ===
翌朝、簡単なふたコマほどの漫画とダリオの似顔絵、プチ情報を描いたペーパー(結局、3枚ぐらいになった)を持参してお教室へと向かった。
自分の席に着く前に、レアンドラ様に昨日お約束したブツを渡す。
「スビサレタさん……なんですの?これは……」
ありゃ、この世界ではこういうの受けなかったか。先走りすぎちゃった?
レアンドラ様、こんなの描いちゃった私のこと軽蔑してる?
せっかく仲良くなれたかと思ったのに、あ〜あ、またぼっちに逆戻りか。
ちょっと落胆し始めた私の耳に救いの声が飛び込んできた。
「す、す、素晴らしすぎますわ」
そう言ってペーパーを握ったままレアンドラ様は私を見た。
感動していたんだね、レアンドラ様。
感情を表に出さないからわかりずらかったよ。貴族令嬢だから仕方ないけど。
それにしても、異世界でも追っかけというかオタクの根っこは一緒なんだ。と妙に感慨深いものを感じた。
レアンドラ様、好きになりそう。
梅雨入りしましたか?




