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散々、お母様と泣いた後、私は父に尋ねた。


「エマとヘンリーはどこ?私が悪かっただけで彼らはちっとも悪くないの」


私のせいで彼らが職を失うのは忍びなかった。


「わかってるよ。ただ、エマは責任を感じ寝込んだから、暫く休むように言った。そのうち戻ってくるから心配しなくても大丈夫だ。ヘンリーはもう仕事に戻っているよ」


エマが戻ったら謝りたいと伝え、ヘンリーには彼の娘に買ったリボンを渡してくれるように父に頼んだ。


=== === ===


結局、王宮の夜会には行けなかった。

確かに怪我といえば足を軽くひねっただけなんだけど、後から身体中、打ち身の青タンで身動きができなかった。

実際に舞踏会ってものを見てみたかっただけに、残念。


日光浴のため侍女の手を借りてバルコニーの椅子に腰掛けながら考えた。

私の奇行を父母が許してきた理由を。

実際は前世の私の(へき)による暴走なのだが、父母にしてみればホルヘに面影が似ていたダリオに執心したと思ったに違いない。

確かに髪の色は似てるけど、記憶が戻ってから言うのもなんだけど、ホルヘとダリオじゃ月とスッポンもいいところよねー


とは言っても、ダリオに多少なりとも(いや、かなりか)迷惑をかけたのは反省する所。

いくら貴族の婚姻は政略と言っても、好意の欠片すら持ってない相手との婚約は不憫すぎる。

つい”推しとの結婚”という、前世で夢見たことが実際にできると舞い上がった私が悪いんだけど。

アイドルはアイドル、ファンはファン、自分の立ち位置を弁えなきゃね。

学園が始まったら婚約解消の話をしてみようと思う。


しかし……夜会に行けない連絡が入っているにもかかわらず、お見舞いどころか花の一つも送ってよこさない。

安定の放置っぷりにある意味感心するよ。

一体どんな婚約の取り決めをしたのか父よ、私に教えて欲しい。


打身による痛みが引いた頃、学園は新学期を迎えた。

謹慎も新学期までだったらしく、また私は学園に通い始めた。

私が馬車から転げ落ちたという事実はやはり噂にはなっていたが、馬車のドアに袖が引っかかって開いた事故とされていた。

それよりもお教室のご令嬢方は王宮で開かれた夜会の話で持ちきりだった。

いいなぁ、うらやましい。

私も行きたかったよ。自業自得だから仕方ないけど。


隣の席のダリオの態度は相変わらずで塩で、おはようの一つもないのは人としてどうなのか?

はあ、仮にもあんたの婚約者なんだから、お愛想の一つくらい言えないのかねぇ。

それとも強要された婚約だからする必要もないとか?

それにしても憑き物が落ちるというのは、こういうことなのかな?

推しに飽きることはあっても推しは推しのハズなのだけど、今はダリオのことはただの級友としか見れなくなっていた。(しかもかなりのモブ)


どっちにしても、今後のことを思えば話は早いに越したことはないので昼休みに思い切ってダリオに話しかけた。


「ダリオ様、婚約のことで御内密にお話があります。お時間をいただけないでしょうか」


もう思いっきりやな顔されたけど、私の独断で勝手に決められないじゃない。

過去の私ならまだしも。

少し考え込んだダリオは人目のない場所を探しているようだった。


「では放課後、図書室でどうだろう」

「絶対来て下さいますよね。いつもみたいにお母様の具合がお悪くて取り消しなんていうのは嫌ですよ」


と、釘を刺しておいた。じゃないと逃げられそうなんだもん。

盲目的な私しか知らないダリオは面食らったようだが知るか。



釘を刺したおかげなのか、放課後の図書室に(イヤイヤ)ダリオは来た。

流石に学園内でママの具合が悪くてとは言えないよね。


「一体、なんの話だ。手短に頼むよ」


あーはいはい。私と同じ空気を吸うのも嫌みたい。

ま、ストーカーと一緒にいて楽しいわけないのはわかるけどさ。

でも、今日の私は違うのよ。あなた(ダリオ)に朗報ですよ。


「ここだけの話にしていただきたいのですが、ダリオ様はこの婚約にご納得されています?もし、不本意とお考えであれば婚約を解消していただいても、私、構いませんのよ」

「えっ?」


ダリオは鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をした。

えっナニ?そこ驚くとこ?

散々っぱら放置しといて、婚約の解消に驚くお前が驚きだよ。


「ええ。私の態度がいけなかったせいでダリオ様に迷惑をかけてしまったと謹慎中に悟りましたの。それで、意にそまない婚約にダリオ様を縛り続けることはいけないことだと……」

「ちょ、ちょっと待ってくれる?それは僕の母に相談してからでいいかな?」

「もちろんですわ。私も父に相談する前にお互いの気持ちを確かめておきたかったからお聞きしたのですわ。でも、ダリオ様は私との婚約は乗り気ではなかったのではありませんこと?」


チラッと嫌味を言ってみる。


「いやいやいやいや、ほんと、母に聞いてみるから待ってくれる?」


予想していたとはいえ、やっぱり自分の本音すらママに聞かないとダメなんでちゅね、ダリオ君。

貴族の婚約は家同士だから大人(当主)に相談しなきゃダメなのはわかるけど、今の自分の気持ちぐらい言ってもいいと思うんだけど。オフレコだって言ってあるんだし。


誰かが図書室に入ってくる気配がした途端、ダリオは安定の塩対応で私を置いてそそくさと出て行ってしまった。

ツンなの?って言いたいけどデレの部分は見たことがない。

本当に私と一緒のところを他人に見られるのが嫌みたい。

それなら、とっとと婚約の解消なり破棄なりしてくれればいいのに。


『めんどくせえなぁ』


つい、美少女のアバターで”のぞみ”が本音を漏らしてしまった。

私の推しはてるリンです

ありがとうございます。

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