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童話りんくんとピロピロピィ  作者: 美祢林太郎
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二章 お父さんとお母さんは鳥星人?

二章 お父さんとお母さんは鳥星人?


19頁

 ぼくはそれから毎日一人で考えました。このことはけんちゃんにもさやかちゃんにも相談できません。お父さんとお母さんは、本当は鳥なのではないでしょうか。


20頁

 お昼は人間ですが、夜は変身して鳥になっているのではないかと思ったのです。夜の鳥と言えばフクロウです。でも、フクロウはホーホーと鳴くのをテレビで見ました。お父さんとお母さんはホーホーと鳴かないので、フクロウではないようです。顔もフクロウには似ていません。


21頁

 では、「ぴろぴろぴぃ」と鳴く鳥は何でしょうか。ぼくは図書館から鳥の図鑑を借りて、庭で毎日鳥の観察をすることにしました。庭にはスズメ、シジュウカラ、コゲラ、メジロ、エナガ、モズ、ムクドリ、ヒヨドリ、キジがやってきました。どれも「ピロピロピィ」と「ピルピルピィ」って鳴いた鳥はいませんでした。


22頁

 お父さんとお母さんが鳥だったら、ぼくも鳥かもしれません。だって2人の子供だからです。ぼくも寝言で「ピヨピヨピィ」って鳴いているのかもしれません。3人で楽しく鳥語で会話しているのかもしれないのです。


23頁

ぼくが鳥だとすると、ぼくは卵から生まれたのかもしれません。卵の大きさはどのくらいだったのでしょうか。ニワトリの卵よりもおおきいのでしょうか? ダチョウの卵よりは小さかったのでしょうか? ぼくは自分が卵の頃の写真を見たことがありません。これは我が家の大切な秘密なのかもしれません。

 

24頁

 お父さんとお母さんは、ぼくに子供部屋で一人で寝るように言っています。そうするともう3人で夜に鳥語で話をすることができません。やっぱり、ぼくだけどこかでもらわれてきた人間なのでしょうか。


25頁

 そう言えば、幼稚園の頃、「鶴の恩返し」の紙芝居を見ました。夜な夜な、鶴が自分の羽で織物を織っているのですが、それが見つかってしまったので、飛んで逃げてしまうというお話です。まだ飛べる羽が残っていてよかったです。もしかすると、羽を使い切る前にみつけてもらうように仕向けたのかもしれません。「見ないように」と言われたら、誰でも見たくなるものです。なかなか手の込んだことをします。

もし、お父さんとお母さんが鳥であることがみんなにばれてしまったら、鶴のように二人ともいなくなってしまうのでしょうか。するとぼくは一人で残されてしまうのでしょうか。でも、お父さんが「ピロピロピィ」って鳴いていることは、けんちゃんとさやかちゃんのお母さんにばれてしまいました。お母さんはあんなに簡単にばらしてよかったのでしょうか。お母さんは少し軽率だったのではないでしょうか。お母さんは自分が鳥だということを知らないのでしょうか。それとも、鶴のように飛び立つ前に布石を打っているのでしょうか。

しかし、お父さんは今でもおうちにいます。鳥だということがわからなければいいのでしょうか。難しい問題です。


26頁

 けんちゃんとさやかちゃんと3人で砂場で遊んでいたとき、けんちゃんが唐突に「りんくんのお父さん、本当は宇宙人なの?」って言いだすんです。ぼくは驚いて「どうして?」って聞くと、「お母さんが、りんくんのお父さんは本当は宇宙人で、みんなが寝静まってから「ピロピロピィ」って宇宙語で遠く離れた星の人と話をしているんだよ、っておもしろそうに言うんだ」。ぼくのお父さんも「そうかもしれないね」って相槌を打つんだ。さやかちゃんもそれを聞いて、「宇宙人なら、かっこいいね」ってぼくを尊敬するように見つめるのです。


27頁

 ぼくはうれしくありません。だって、お父さんが宇宙人だったらいつか宇宙に帰っていくかも知れないからです。それにお母さんも宇宙人だったら、ぼく一人が地球に取り残されてしまいます。もう鳥どころではありません。


28頁

 えっ、もしかしてぼくも宇宙人なの。

お父さんとお母さんが宇宙人なら、その子供のぼくも宇宙人のはずです。ぼくは両手を見ました。右手も左手も指が5本ずつありました。以前、テレビでエビが直立したような2本指の宇宙人を見たことがあります。

ぼくは宇宙語もわからないので宇宙人ではないと思うのです。きっと宇宙人ではありません。


29頁

ぼくは地球が好きです。遠い星の言葉の通じない学校に転校するのはいやです。でも、お父さんとお母さんが一緒に行こうといったら、ついていかなければなりません。地球に一人で残るより、一緒に行った方がいいと思うのです。


30頁

 2年生の時、同級生のひろちゃんがお父さんの仕事のつごうで、外国の学校に転校しました。ひろちゃんは日本語しか知らないはずですが、話をすることはできたのでしょうか。お友だちはできたのでしょうか。


31頁

 ぼくは「かぐや姫」の話を知っています。月のお姫様が地球で育てられ、美人でわがままな性格に育ったために月に連れて帰られた昔話です。

美人には気を付けなければなりません。将来、美人な人をお嫁さんにもらわないことに決めています。そう言えば、クラスの中にも美人でわがままな子がいます。待てよ、そう言えば、美人ではないのにわがままな子もいます。顔と性格は一致しないのかもしれません。でも、顔にだまされてはいけないのは確かなようです。

 さやかちゃんは、ちょっとやんちゃだけど、かわいくってやさしいです。。


32頁

ぼくはけっしてわがままではありません。この前も、レストランでデザートにチョコレートパフェを食べましたが、食べた後でクリームあんみつも食べたかったのですが、ぼくはじっと我慢をしました。

これからも決してわがままを言いません。お父さんとお母さんもわがままを言わないので、連れて行かないでください。よろしくお願いします。お母さんは、時々お父さんにわがままを言っていますが、大目に見てあげてください。

宇宙人は心が広いでしょうか。きっと宇宙のように広いと思います。


33頁

 食べ物を残したりしません。全部食べます。好き嫌いはしません。おねだりもしません。宿題もきちんとします。掃除もします。忘れものもしません。友だちと仲良くします。虫さんたちとも仲良くします。花壇の水やりもします。電気も消します。いまはどうしたらいいかよくわからないけど、おとなになったら地球の環境を守ります。どうかずっと地球にいさせてください。地球の神様、よろしくお願いします。

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