31話 ドワーフ(酔っ払い)
「人を食ったことあるやつだっているさ」
そういってドワーフの集団はゲラゲラ笑った。
ドワーフ領と人間領の間にある畑の一角、そこにすでに集まっていたドワーフ達と合流し、自己紹介ついでの挨拶と雑談。そこでこういう話がでた。
ドワーフ領、といってもそれは古代の名残でウェイバー伯爵の土地というのは変わらないとの事。
別に人間が出入りしてもエルフが出入りしても問題はないし、ドワーフにしても他所の領で商売をやってるやつもいる。
しかし店を構えるや住み込みのバイトをするとかの事情がなければ他所の領で住むことはない。
ニュアンスとしては「ドワーフ村」というところか。
そのドワーフ、というのはちいさなおじさんって感じだった。
いやほんと。みんな僕より頭一つ分か二つ分くらい小さい。その代わりみんなマッチョ。取っ組み合いなんかしたら直ぐに投げ飛ばされるだろう。そして髭
「お前異世界から来たんだってな?異世界の同胞たちはどんな感じなんだ」
「ドワーフ、ファンタジーの生き物って感じの扱いでしたね」
「なんだ、同胞たちはだらしないな」
そういってまた笑う。こういうのがドワーフの性格なのかと思ったが、違うなこれ。
「昼前から飲んでるんですか?」
「あ、お前ら飲むな言っただろうが、顔洗ってこい」
ドワーフの中で比較的髭が薄い(といっても人間基準ではモジャモジャ)赤毛の若者がそう怒鳴りつけてドワーフの集団を水場に走らせた。
リーダー格なのだろうか?
「まったくもう。人の言うことききゃしねぇ」
「彼はドワーフ領長の息子だよ」
おじさんがそういって紹介してくれた。
「よろしくお願いします」
「エッダだ。こちらこそよろしく。若いせいかで誰も人の話を聞きゃしないんだが、一応今回の猟では頭ってことになってる」
「新人の領主様が見くびられるのはどこも同じだ。伯爵様みたいに実績を積んでいくしかないよ」
「伯爵様に弟子入りでもしようかね。まぁ今日はよろしく。異世界から一人来たってなれば不便なこともあるだろう。何かあれば遠慮なく言ってくれ。ここいらじゃ若者同士だ。出来る限り力になろう」
エッダはそういって握手を求めてきたので僕も返す。ゴツゴツした力強い手。
確かに髭だらけな顔を見ると僕と同じくらいの年齢だろう。しかしなんとなく下働きをして暮らしているぼくよりしっかりしてる感じ。長の家系という奴か。
「若者、って言ってもそいつは人間の年だともう40手前とかだかだぞ。俺が餓鬼の頃一緒に遊んでた覚えがあるからな」
後ろで弓の調整をしていたおじさんの人がそう口を挟んだ。
「僕の一回り上ですか」
驚いてそういったらみんなに笑われた。




