15話 異世界転生→豚小屋で働く→役場で申請→掃除
「どうかしら」
「くしゅん。いいところです。僕が住んでたところより広い」
お世辞ではない。
連れてこられたのは屋敷から少し歩いた場所にある倉庫のような建物。
一階には何に使うのかよくわからないガラクタらしきものが積まれている。
その上に設置された二階、ロフトというんだろうか?が僕に割り振られた部屋。
ベットと枕元にちょっとした収納が設置されているだけの質素な部屋だが一人暮らしには少し広いくらい。
ガラスはないが窓はあるので光は入る。便所は外。風呂はないが外にある井戸は清潔だからそれで洗いなさいという指示。
布団とシーツは後から運び込んでくれるそうだ。
「こういう秘密、くしゅん」
ただ埃臭い。掃除されてないのだ。
「これからやることってありませんよね」
「えぇ、あなたも異世界からやってきたりでいろいろあって疲れたでしょう。夕飯の時にだれかを呼びに呼びに行かせるから、それまでやすんでなさいな」
「それじゃぁ一つ、お借りしたいものが」
その日の夕方。具体的には夕飯前。親方様が開墾する畑。
「そろそろ切り上げるぞ」
と親方様が周りの人間に指示を出す。
「今日は晩飯をうちでだす日だったな」
「へぇ、ありがとうございます」
「一度家に帰って着替えてからきてくれよ。掃除が大変なんだ」
「よくよく言い聞かせますんで」
雇われた村人の代表が執事の小言にたいして頭を下げながら答える。
親方様の一族の仕事はこの辺じゃ珍しい現金収入が入る仕事の一つだ。
しかもやることはいつもと同じ農作業だから慣れたもの。むしろ親方様がしっかりと管理するから働きすぎることもない。
給料はまぁまぁ、安くないが高くもない。不満がでないぎりぎりのライン。代わりに週に何回か晩飯がつく。現金収入と現物支給の組み合わせで労働者である村人に不満はない。
こういった人を使いのうまさにウェイバー伯の手腕が光る。
「そういえば彼、異世界から来た彼はどうなった」
親方様も土を払いながら隣に控えていた執事に聞く。
「えぇ、明後日から試用期間ってことで働かせようかと。まずは屋敷の雑務と、あと豚小屋の方に回そうかとおもってます。管理人も悪い印象をもってはないようですし、彼もなじみがある者から手ほどきを受けた方がいいでしょう」
「いいね。まぁ当分は様子見だ。今は何をしている」
「なんでも掃除をしてるそうです。物置小屋の二階を割り振りましたが、埃臭いからと、メイド長にバケツとぞうきんを借りて」
それを聞いた親方様は笑って一言。
「なんだかなぁ。小市民ってやつなのかしらん」
1話が短いんですが、これは露出を増やしてPV数を伸ばそう大作戦の名残です