11話 異世界もので意外と見ない「売り込み」
「私が?」
「聞きましたよ。畑を増やしたから人が足りてないって」
管理人のおじさん情報だ。
「まぁ、見ての通り一人の男。特になにかできるわけじゃありませんが、何ができるわけでもないなりに豚小屋の手伝いくらいはできました。なら見様見真似でも鍬をもって畑を耕すくらいはできるでしょう。力仕事は得意じゃありませんが、不平不満を述べるような人間は雇われないので我儘は言いません。高いところは苦手じゃありません。牛や馬に乗れと言われてものれませんが、まぁ練習次第じゃないですか。そういう男を雇っていいような仕事はありませんか。服は当分これでいいので、住むところ寝るところ、あと食い物が確保できる仕事がいいです」
「でもなぁ」
心動いてるか?ならばもう一押し。
「今後何かの采配で、まぁ神の思し召し的なあれで、私が何かに目覚めたらまず一番にあなたに知らせましょう。当然よくわからない宗教と過激な政治思想は別です。それ以外のものに目覚めたらあなたの利益のために使いましょう。目覚めるか私もしりませんが。それにまだ土地が余ってるんでしょう。貴族らしく、馬の育成でもしてみたらいいじゃないですか。そしたらもっと人がいる。都会に行かせた若者を連れ戻すより、目の前の私を雇った方が効率がよい。私を雇えば天地がひっくり返ってもあなたの利益になる、なんてのは契約上の真偽があるので申しませんが、その点は努力してあなたの利益になるために働きましょう。どうですか」
「君はうさん臭い商人かなにかか?」
そう言って親方様は笑う。
豪快とも素朴ともいえる笑い方。この世界の貴族というのをこの人以外知らないので言いきるのはどうかと思うが、貴族らしくない。やっぱり職人のまとめ役か大工の棟梁といった感じの風情が似合う。こちらは人生で一度もあったことがないが。
「分かった、一つ、家の者たちと相談してみよう。私の一存で雇うわけにはいかないが、一人雇おうかって話はでていたんだ。読み書きはできないという事なら重要な仕事は任せることができない。それは覚悟しておけ。まぁ、君が言う通り何か縁だ。雇わなくても今日明日くらいの飯はくれてやるよ」
「ありがとうございます。感謝の言葉をいかに表すかわからない無学な自分を後悔していますよ」
そもそも元の世界の感謝の言葉が通じるのかしらん。
誰も見てないんだからいいんですけど、一章間違えて削除してました