007:霊装(ロザリオ)
007:霊装
「それにしても、お前すごいな。貴族のあのギルの魔法を魔法解除しちまうなんて」
「そう?別にたいしたことないよ」
試験の列に、並びながら二人は会話する。
あの後、試験区域に移動して列に並ばされてこうした、大きなコロシアムのような闘技場のような。
観客席のあるその下の会場に集められた。
ちなみに、リアは別会場らしくて、泣きながら別れを惜しむようにしてユウリから離れ自分の会場へ向かって言った。
「魔法解除なんて普通できないぞ?」
と言われても、ユウリは特にすごいとは思わなかった。
魔法はその基礎さえ知っていれば、外部から干渉してが操作は可能だし、あの程度の魔法ならばサルでも分かるレベルと言ってもいい。
むしろ、ユウリとしてはそんなレベルの魔法を飛ばしていること自体が不思議だった。
「まあ、コツはさえ分かれば簡単だよ」
「うなバカな」
ユウリの話をカインは信じてくれないようだ。
その時だ――。
「今より試験を開始する!!」
真っすぐ並んだ列の先、何列も並んだ列の前で、さっきのギルとリアを止めた女教官が声を上げる。
「まずは遠距離魔法だ!! 各自事前に支給されている霊装でもよし、個人で所有しているものもよし、各自自由に魔法をあの的へ向かって撃ってくれ!!」
言って、指を指す先を受験生一同は追う。
そこにあったのは。
「鉄柱?」
人間一人分ほどある鉄柱が、30メートルほど先に他の教員が運び立てていた。
「あの金属はこの世で最も固いと言われるオリハルコンでできている。せいぜい全力で撃って傷でもつけてくれ。説明は以上だ!! 呼ばれたものから、あのラインの位置へ行き魔法を撃て!!」
さらに、指刺される場所には白線でラインが。
「よく言うぜ。オリハルコンなんかに傷なんてつけれる訳ねーっての」
「そうか?」
愚痴るカインだが、確かオリハルコンって魔力元素にはそんなに耐久性はなかったと思うユウリ。
顎に片手を当て、考えるも、自身が呼んだ魔導書の中でオリハルコン自体は破壊不可能ではなかったようなと思い返す。
「そうかって……。マジかよお前。まっせいぜいのんびりやろうやお互い」
「うん……」
「まず最初!!ユウリ・クロノウズ!!」
「あっ!! はい!!」
「いきなりか。頑張れよ」
「ああ」
呼ばれたユウリは指定されたラインへの元へと小走りで行く。
順を待つ受験生からは。
あいつ入口で魔法を消したってやつだぞ?
消した?それってなに?
ディスペルだって!?
うそ?
ありえないありえない。
でも、私見たよ?
気づけば大事になっていたのか、いつの間にかユウリの噂は広まっている。
その声も無視して放つ魔法を考えるが……。
「おい貴様!!霊装はどうした」
女教官が考えるユウリに、ぶっきらぼうに声をかけた。
「霊装?ああ――いらないです」
霊装――女教官の話にもあったが、霊装と言うのは言わば武器だ。
剣や槍。形は様々。リアが持っていたエストックもソレで、ここに受験している生徒は全員腰に何らかの武器を装備している。
それがどういうシロモノ化と言うと。
まあ――つまりは、魔法が簡単に扱える武器とでもいえばいいだろう。
それぞれ霊装には、精霊や神などの祈りが込められており、その込められた祈りを魔力を通して撃ち放つことができるという物だ。
本来ならば、魔法を放つには詠唱をして精霊や神、といった者たちを自身に降ろすことによってその魔法を扱える。
だが――霊装と言うのはその間を省き、事前に精霊や神が祈りを武器へと属性付与すしていつでも簡易的に魔法を放てるようにしている。
この時代ではそれが主流化している。
この街に来る前に、いくつか文献を読んでこの時代について予習はしたが、本当にそうなんだと、ここでユウリは改めて実感した。
ただ――このエンチャント、穴が一つある。
武器にエンチャントされる魔法は限られてしまい、術者が使用できる魔法はかぎられてしまうというところだ。
その数は武器によってまちまちだが、まあ――受験生全員に配られてた装備はエンチャントされていま方は一つ程度。
その威力も知れている。
それに、とユウリは思う。
この霊装へ属性付与が主流になってしまったせいか、リアが言うには、この時代の人々は属性付与の意味を間違いているようだ。
属性付与とは本来、詠唱をして自身に精霊や神を降ろすこと。
かれらを降ろして、彼らの知識を扱うことで魔法を使う。
これが本来の属性付与だ。
だが、この時代の人々はこう認識しまっている。
武器に魔法を付与して撃ちだすもの。
理屈としては同じように見えるが、その規模が異なる。
付与するのは魔力やその魔法でではない。
元来は精霊や神なのだから。それも自身に。
そのため得られる恩恵は撃ちだす魔法だけにはとどまらない。元来はそれらの知識、戦闘経験もろもろも扱えることになる。
それに、元来属性付与の究極系と言うのは生きている人間の力を自身に投影することすらできるのだから。
そう言った点で、この時代の人間ははき違えている。
だから――武器を持たないユウリに女教官が言うのも当然で。
「大丈夫です。なくても魔法は撃てるので」
その言葉に「は?」っと返すのも当たり前だが。
「まあ――見ててください」