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013:クラスF「七組」

013:クラスF「七組」



 試験から翌日、結果発表からユウリは教室割の結果をみて、自身の教室を訪れていた。


 の、だが――、


「一人しかいない」


 クラスはS、A、B、C、D、Eとあり、Eに向かうほど、新入生試験での成績が下がっている。

 結果発表の掲示板では、不満や揉め事を起こさないためにそのクラスのランクは表示していなかったので、自身がどのランクなのか分からない。

 分かるのは、クラスに全員が集まって、クラス担当になる教官がそこで発表する時。


 であるのだが、


 これはそれ以前の問題だ。

 掲示板に書いてあった教室に入った時、誰もおらず。

 早すぎたのかと思い、一段ごと上がる壇上のようになっているクラスの真ん中の席でポツリと座って待つこと数分、誰一人として教室入ってくる気配はない。


 まさか部屋を間違えたのでは? そう思った頃、ようやく教室入口が開く。


 開けて入って来たのは、模擬戦の際、教官をしていた女性。

 白衣に、腰まである黒髪ポニーテール。

 真っすぐ背の高いスタイルの良いその女性は。


 不機嫌そうに、座っていたユウリをギロっと視線だけを動かして横目で睨んでから、教壇へとついた。


「このクラスを担当することになった、ウリア・キャンベルだ」

「あの……、他の人は」


 不機嫌そうな、教官に顔を伺いながらユウリが唐突に問う。


「おらん。喜べ、このクラスはお前だけの特別枠。Fクラス――7番目、7組だ」

「え?」


 何を言っているのか、ユウリは理解できなかった。

 F? 特別枠?

 いろいろ考えて、まさか自分の力が強すぎたのでは? という答えへと導く。


 それはあながち間違っておらず。


「お前は模擬線で貴族である、シルヴェストルのクソガキをボコしただろう。

あれはこの学園の教官でもある、アルファス・シルヴェストルの一番下の息子でね。

クラス決めの担当も奴だ。

ゆえに、お前は邪魔者としてこうして学院から追放された訳だ」


「え? じゃあ僕は? 不合格?」


「いや。さすがにそこまでのことはできない。

あれだけの騒ぎを起こして置いて不合格などにしたら、平民にとっての学園の面子も怪しくなるからな。

かと言って、貴族の連中にとっては、邪魔者には変わりない。

お前の存在一つで、貴族にひれ伏している平民が反旗を翻すきっかけとなりかねない。

だから、学園は貴様をこのまま抑えつける気で、特別待遇という建前で疎外した。

だがまあ、安心はしろ。

このクラスに居る以上、貴族どもは文句を言ってこないだろう。

無論、卒業も約束されている。

ワタシはその監視役だ」


「え?」


 そんなものは学園に、通っていると言えるのだろうか。

 それではここにきた意味などない。

 そうユウリが思うと。


「――と、言うのはワタシの建前でね。

そんなことはどうでもいい。

無論、お前がこの学園で何をしようと止めやしないよ。

ワタシとしては、貴族や平民などという、ふざけた戯言など知った事ではない。

あれはただの老害どもの、腐れた頭のうみだ。

貴族など気にすることは無い、好きに学園ライフを満喫するといい」


 その時だ。


――ドンッ!!


「ああああっ!! ここにいたーっ!!」


 扉を強引な勢いで開き切って、そこには、泣く泣くクラス分けを見た後、離れたリアが

ユウリを指さして大声で叫んだ。


「えっ!? リア? どうしたの?」


 戸惑うユウリに、リアはづかづかと教室に猛牛の如く鼻を鳴らして入って来てきたと思ったら、そのまま教官であるウリアの前へ行き。


「ちょっと、これはどういうことよ!!」

「リア!?」


 エストックを抜いたと思えば、教員の喉元に剣先を向けて再び怒鳴り散らした。


「ほう、お前は確か……」

「リア・フォルツゥーナーデ、ユウリの女よ!!」

「いや、えぇ?」


 見定めるように、はて? と、首を傾げてみるウリアに、よく分からない啖呵をきったリアにユウリが戸惑う。


「っと、言っているが?」


 肩を傾げて、首元に突きつけられるエストックに怖気づくこともせず、視線をユウリへと向けてウリア教官がユウリに問うた。

 

「えっと……まあ……」


 していることはしているので、否定しようがないと思いながらもユウリは同意した。


「なるほど。それで――リア・フォルツゥーナーデ、お前はなにしに来た? お前のクラスはB。3組だろう?」

「うるさいわね、関係ないわよッ!! クラスの教官に訊けば、ユウリは此処にいるっていうし、ランクはF? ふざけないで!! 

アンタ達、ユウリの実力も測れない無能なの?」

「まさか、測ったうえでのクラス分けだ。何の問題もない」

「このっ!!」


「リアッ!!」

「っ!?」


シュッツ――!!


 シラを切るような態度に、我慢しきれなかったリアがエストックをウリア教官の首に、突き立てようとした時、首に触れる寸前で、その刃をユウリはいつの間にかリアとウリア教官の間に立って、素手で握り止めていた。


 カタカタと、力が込められたエストックを強引に止めていることで刃は震え、震える刃を掴むユウリの拳から、血がエストックをたどって地面へ滴る。


「あっ……」


 カランッと、エストックが落ちる。


「ユウリッ、ごめんなさいっ、……」


 慌ててエストックを放し、ユウリの腕からエストックを捨てさせて、切れて血に塗れる手を大事そうに両手に握る。


「駄目じゃないか。こんなことしちゃ」

「ごめんなさいっ、うっ……うう……」


 手を自身の胸にあて、泣き始めるリアをなだめようと、手の痛みを気にせずユウリはリアを抱き寄せる。


「ほら、大丈夫だから」


 それから、すぐ、リアから手を放して、魔法で傷が塞がった手のひらを見せて安心させた。



「治癒魔法か?」

「え? まあ」


 治った手をみて、ウリア教官が興味津々に問う。


「ゴメンね、ユウリ」


 涙を拭いたリアが、落ちたエストックを拾い上げる。


「ただ、コイツは気に入らない」


 そして、そう言って再びエストックの剣先をウリア教官へ向けた。


「リア? だめだよ」

「嫌よ! アタシとユウリを放した挙句、ユウリにこんな仕打ちうるさないわよっ!!」

「ふむ。ではお前もこのクラスに入ればいい? それでどうだ?」

「え? そんなことできるの」


 と、言われて途端に呆けた顔になるリア。

 

「ここならば、二人っきりだぞ? まあ、学び舎である以上、いかがわしい行為は目を瞑るわけにはいかないが」

「そ、そう……」


 何かにうなづいたように、先ほどまで殺気立っていたリアは、エストックを下げ鞘に戻す。

 それから、にぱあっと笑って。

 

「じゃあ、ユウリ。よろくね!!」


 満面の笑みで、ユウリの腕へと抱き着いた。



「えっ? えええええええええええええ!!!!!」



「ワタシは構わんぞ、手続き一つで下のクラスへの移動は可能だかな。どうせ平民の生徒がどう移動しようと教員どもは興味ないだろうかなら」



「ええええええええええええ」



 三人しかいないスカスカの教室に、ユウリの声がこだました。

 そのユウリの隣では、リアがルンルンで幸せそうにしていた。



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