プロローグ『暗殺者(いきる)か死ぬか』
初めての作品ですので、至らない点多々あると思いますが、どうか暖かい目で見守ってやって下さい!
プロローグ『暗殺者か死ぬか』
少年の眼には確かに標的を捉えていた。
暗い夜の町を、黒いフードを纏って、相手に気づかれないように近づく。
右手に握ったナイフは、あの男を殺すために持っているものだ。走り、距離を詰めて男にナイフを突き刺す。
後ろから確実に刺し殺す予定だった。そう『予定』だったのだ。
だが少年の体は地に伏し、その目で黒いタイルの地面を見ていた。ナイフの握った右手は背へと回され、確実にホールドされている。頭は力で押さえられている。
「どうして気づいた。お前は何なんだ!──なんで・・・・・・なんでお父様とお母様を殺した。忘れたとは言わせないぞ!お前は影の中から出て来て殺した!」
「君の・・・・・・父親と母親?」
街灯に照らされることで見える相手の姿。夜の町に溶けるような黒色の髪。顔から見てとれる年齢はまだ若いだろう。恐らくは二〇代だと思われる。
「そうか。君は彼らの・・・・・・申し訳のない事をした」
「お前っ!僕をおちょくっているのか?何で謝るんだ!」
少年は貴族だった。充分な教養を受けて、充分な食事をし、充分な愛情を受け取っていた。──だが、この男はそれらを一晩で壊した。
「そうか──でも・・・・・・俺も死ぬわけにはいかない。ここで俺を殺そうとした君を生かす事は出来ない。だから、覚悟して欲しい」
そう言った男の顔は、先程までの優しそうな、悲しそうな表情ではなく。圧を帯びた真剣な眼差しで少年を睨んだ。──そして、どこに隠していたのか、マントのような薄手のコートから白い刀身の刀を取り出す。
少年は知っていた。相手を殺せなかった時に自分がどうなるのか、だから覚悟していた。
そう、この刃はもうじき振り下ろされ、少年は死へと向かう。
「──だが」
刃の代わりに言葉が投げかけられる。
「君がもし、俺と同じように暗殺者を目指すのであれば話は別だ」
少しの間が空き、少年は言葉を理解する。
「一体・・・・・・どういうつもり何だ?」
「君には殺しの才能がある。その殺気を隠す事や、技術を磨けば君はかなりの使い手になれる。事実、俺の急所を確実に狙っていたからな。──君は強い、だから生きて俺を恨み・・・・・・俺を殺してくれ。──さぁ、どっちを選ぶ!」
少年はこの男の言っている意味が分からなかった。
―――何故、ここまで執拗に生かそうとするのか。
―――何故、ここまで執拗に死にたがるのか。
だが、答えは決まっていた。
「分かった・・・・・・僕は暗殺者事を選ぶ。お前を殺す事が出来るなら!」