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そらのそこのくにせかいのおわり(改変版)2.6 < chapter.5 >

 蓮池横の東屋では、控えめな音量であの曲が流されていた。

 一通りの振りを覚えたオリヴィエは、デニスと一緒に一曲通して踊っている。

 しかし、本来は男女カップルで踊る前提の曲である。さすがに途中のハグとキスはしないだろうと思っていたオリヴィエだが、デニスは何の遠慮も無く腰に手を回し、オリヴィエの頬に口づけた。

「っ!?」

 驚くオリヴィエの顔を見て、デニスは悪戯小僧の顔でイヒヒと笑う。

「やりやがったなぁ~?」

「やられやがったなぁ~?」

「この!」

「わひゃっ!? やめ、ちょ、あははははは! やめて! くすぐったい!! うわあぁ~っ!!」

 脇腹をくすぐられて身をよじりながらも、変顔を見せて笑いを取りに来るデニス。そんなデニスを見て爆笑するオリヴィエ。

 すっかり打ち解けた二人は、このあとも別の曲のステップを練習した。これはオリヴィエの希望した『バースデープレゼント』である。一般常識ばかり勉強していても、いざ目覚めたとき、今どきの夜遊びを知らないのではつまらない。今のナイトクラブで定番の曲とダンス、店ごとの『暗黙のルール』のようなものを覚えておきたいと思っていたのだ。

 オリヴィエにとって、遊び慣れた都会っ子のデニスは最高の『家庭教師』だった。

 デニスにとっても、霊的能力の大先輩であるオリヴィエは長年渇望し続けた『お師匠様』である。

 互いの求めるものを教え合える最高の出会いに、二人のテンションは自然と高まっていた。

「やっばいなー! 僕、女だったら絶対惚れてましたよ!? つーか男でも惚れるでしょ! オリヴィエさんイケメンすぎ!」

「おー、言ったな? 士族に前言撤回は効かないぞ!?」

「お嫁に行きます!」

「いいよ来いよ!」

「オリヴィエさーん!」

「デニスー!」

 もちろんこれは冗談である。二人はふざけて抱き合っていたにすぎない。

 だが、そこに通りかかってしまったのがミュージアム帰りのゴヤである。

「……ご成婚おめでとうございます……??」

 空気が凍った。


 なにをしているんだ。

 なぜここにいるんだ。

 式にはぜひ来てください。


 それぞれの心の声は誰の耳にも届かない。

 リピート再生設定のミュージックプレーヤーからは、男性ボーカルの力強いシャウトが聞こえてくる。

「沈没すんなよ、クソ野郎ども!!」

 いったいどこに、どんな船で漕ぎ出そうとしているのか。それはこの場の誰にも分からなかった。

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