神々に選ばれた日
やっと投稿できました。
変な感じだ。眠っているのに意識がある。そして宇宙空間にでもいるような、上下左右が分からないおかしな空間で蹲って寝ているのが何となくだが分かる。
どうしてこうなったんだけ。。。
僕は確か。。。
どっか古代の格好をした神とやらにあって。。。
変な模様の中にいて、体が薄くなっていって。。。
そうだ、思い出した。僕達はどこかに転移させられたんだった。動かない体を僕はコントロールしようと試みる。
だが僕が精一杯できたのは目を開くことだった。どうしようか。みんなを探さなければならない。僕は皆のリーダーで僕がいなきゃ女の子達は不安だろう。そんなことは僕がさせない。しかし、どんなに躍起になっても体が動かないので精神的にもがいていると突然野太い男の声がした。
『やっと起きたか。もし後30秒で起きなかったら叩き起こすとこじゃったわい。ちと待てい。今動けるようにしてやる。ほれ!』
すると急に雷に打たれたような衝撃が体を走った。
痛い!!!!
痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!
体が痙攣しているのが分かる。目の前がチカチカする。まるで血管の中に熱い茨の棘がのたうち回っているかのようだ。だがその激痛は一瞬。痛みから解放されると何故か動かなかった体は動く様になり体から力が溢れ出てくる。まるで全てを掌握できそうな全能感で満たされる。
「何だこれ。すごい。すごいぞ!」
『ほう。久しぶりに人に権能を与えてやったがここまで儂の力に馴染んだやつはいつの時じゃったか?お前に与えてやった力のもう6割はものにしておる。これなら儂の代理人に相応しかろうて。ガッハッハハ!』
野太い声が声高らかに笑う。だけどそんなことはどうでもいいんだ。この神の如き力で僕は何処かに飛ばされてしまった皆を救う。僕がいなければみんな何もできないんだから。よし、思いだったが吉日。
でも、やはり無視と言うのは良くないだろう。一言お礼を言いたいけど姿が見えない、見えないのに圧倒的な存在感を感じる。第一印象は豪快だけど何故かその声には深い見識と理性を感じる。
「声だけ聞こえるんだが貴方の姿が見えないんだ。この力を分けてくれたのだろう?お礼がしたいので顔を見せてはもらえないだろうか?」
刹那の停滞の後、僕の眼前に黄色の光弾け直後に閃光は縦横無尽に駆け巡り雷鳴と共に視野いっぱいに光が広がった。目を瞑り、光が引くのを感じて目を開けると僕の前に黄金の瞳に立派なヒゲを蓄え、古代の服装を纏った老人が光の玉座に座している。そしてニッと笑いながらこちらを見て、玉座から僕を見下ろしていた。
『坊主、名は何と言う?』
野太い声で聞かれた質問に俺は即座に答える。
「僕の名前は天神俊介。高校2年だ。差し支えなければあなたの名前を教えてもらってもいいだろうか?」
『ふむ。まぁ教えてやってもいいんじゃが、ただ名前を教えると言うのもつまらん。じゃからこれから少し儂の戯れに付き合え。権能をものにしてものう、頭が悪きゃ話にならん。』
何をして遊ぶのかは分からないがまぁいいだろう。ご老人には優しくしないといけないと父上からも言われているしね。
「分かった。何をしたらいいんだ?」
『では二つ質問を坊主にするぞい。問い一じゃ、儂を誰だと思う?』
「まぁ明らかに人間ではないだろうね。さっきの雷光から察するに雷神の類だろうか。しかし神を見たことがないから分からないな。」
『惜しいのう。当たらずとも遠からずのようじゃ。儂の名は最後に教えてやる。』
なんだ、違うんだな。まぁ仕方がない。僕は神話系に疎い。
『問い二じゃ。坊主、お前は儂がくれてやった力で何を為す?』
「それは簡単なことだよ。僕はクラスの皆のリーダーだ。皆と会ったらそこから目的を決めて僕が率いる。しかし、あなたに聞きたい。なぜ僕に権能をくれたんだ?なんの理由もなく力を渡すとは思えない。」
『ほう。何も考えずにもらうだけのうつけでは無いようじゃのう。』
そう言ってご老人は玉座を立った。そしてその場で足を一度踏み鳴らした時、ご老人の足元を中心に玉座以外何もなかったところに薄く膜を張るように光が伸びていった。
光の膜が四方八方に伸びきった時、他の十一の玉座が円形に設置され中心に美しい大理石と玉虫色の光沢を放つ見たことのない金属で飾られた浅い井戸の様な物体が具現化した。そして現れた十一の玉座を詳しく見てみると一つ一つに違う装飾がなされていることが分かる。
例えば、一つは三叉槍を中心に水が螺旋状に纏わり付いていたり、葡萄の蔦で埋め尽くされていたり、炎と何かしらの金属で飾られていたり。で、呆気にとられていた俺は視線をご老人に戻すと玉座に座ってそして頬杖をつきながら言葉を紡ぎ始めた。
『では坊主に教えてやろう。儂の名はゼウス!天空然り全宇宙を統べ、人類の守護神であり神々の王じゃ!そして坊主に命ずる!儂の代理人として坊主の級友を束ね、他の神群から世界の権利を勝ち取るのじゃ!』
このご老人は何を言っているんだろう。代理人?世界?全く意味がわからない。しかし、どんなに神話系に疎くてもゼウスは分かる。人類史の中でも多分最も有名かつ強き神だろう。何せあの大英雄ヘラクレスの実父だからね。僕だってヘラクレスぐらい知っているよ?
「では神ゼウス、僕は何をすればいいのかな?代理人やら世界やら聞こえてきたのだが。全く説明なしというのも無責任なんじゃないかな?」
『もちろんじゃ。そのまま説明せずにどこか見知らぬ地に放り出すわけではない。さて、坊主にしてもらうことは一つ。お主をデウステラという世界へ送り、我の代理人としてその世界の覇権を握ってもらう。お主が覇権を得た暁にはお主の願いを一つ、なんでも叶えてやろう。』
「世界の覇権を握るってのはつまり世界の王になれということかな?」
なかなかに面白いと思う。まるで昔遊んだゲームのようだね。
『簡単にいうとそうじゃ。お主にはデウステラという世界の神王になってもらう。なぁに、心配せずとも良い。儂の代理人になったのじゃ。今のお主に逆らえる者などデウステラでも実質的におらぬじゃろう。』
「そうか。僕はやはり人の上に立つ資質に溢れているんだね。分かった。神ゼウスの頼みを聞こうじゃないか。しかし僕をデウステラに送る前に一つ教えて欲しい。この権能の使い方なんだけどね。力があるのは感じるけどどういうことが出来るんだい?」
万能感溢れる力が今でも身体中に巡っているのが分かる。しかしながらこの力の使い方が全く分からない。デウステラに行くのは構わないがやはり力の使い方を知っているのと知らないのでは天と地の差があるだろう。
『坊主、それは教えられんな。儂は天地を焦がし、万象を灰燼と化す破壊の雷槍を武器とするのはお主も知っておるじゃろう?しかしこの雷槍はほとんど儂の体の一部の様なもので、思うだけでこの手に体現するのじゃ。しかし一つ言えることはお主が己が魂へと語りかければ自ずと答えは出るはずじゃ。』
そういってゼウスは直接見れば誰もが恐れ、存在すら焼かれてしまいそうな光を放つ雷槍を手にして言葉通りにゼウスは自分の四肢に蛇がごとく纏わせ、雷を自由自在に操り始めた。
その光景を記憶に焼き付けながら僕は瞼を閉じて自分の内側に意識を向けた。すると無数の雷が縦横無尽に体を駆け巡っているのが見える。
そして僕はその駆け巡る雷を追いかけて行くと眩く光る黄金色の球体に辿り着いた。そして僕は迷うことなくその球体を掴み取ったその瞬間に球体が弾け、眩い幻光によって頭が真っ白になった。
頭の中の幻光が覚めると今度はある一文が頭の中に浮かび上がった。その一文が何故だか力を発動させるに至るに言葉だと分かる。
そして僕は呟いた。
「神王たる覇を示せーーケラウノス」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「やぁ、ゼウス。調子はどうだい?」
大神が無言で雷を声のする真後ろへ目も向けずに放つ。来る雷に対して男は怯えもせずに向かっていく。すると見えない壁に阻まれたかのように突然雷が霧散した。
「ひどいなぁ。今のが当たっていたら僕死んでいたよ?」
おちゃらけた声で出てきたのは、燃えるような橙色の長髪を肩まで垂らし、軽薄な人相を浮かべる若い少年。軽い足取りで円卓を周り正面に立った時、ゼウスの正面でふざけるような仕草でお辞儀をする。
『抜かせひよっこ。それも貴様の義兄弟の加護であろう。ましてや儂が本気なら貴様らが使う北欧の魔術など塵芥にすぎんわ。』
「分かっているさ。冗談だよ。もし貴方が本気なら僕は壁を張ることすらできなかっただろうから。しかし大神ゼウスよ。本当にあの少年で良かったのかい?あの子は些か歪んでいると思うけどね。」
目を開きゼウスは男の質問に当たり前のように答えていく。
『ヘルメスが連れてきた童どもの中で坊主が一番儂の権能に相応しかった。貴様も隠れて見ていたじゃろうが坊主は見事に神装を具現化させた。色々な人間を見てきたが彼奴に対抗出来るものなど下界じゃアルケイデスぐらいしかおるまいて。』
「あっそ。ならいいんだけど。じゃあ僕は行くね。また会おう、大神ゼウス。ちなみに、その内僕の義兄弟も動き出すからさ。その時はよろしく。」
直後、男はつま先で床を二回小突くと、背後に道化が彫られている門を出現させ、その中に消えて言った。
男が消えた後、ゼウスはため息をつく。
『彼奴が動くならば、儂も手を打たねばならぬかのう。』
独り言を呟き、大神は虚空へと消えて行った。
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