代理人、神の願いを聞く
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「・・きて。・・起きて。起きろ!」
「痛い!」
体に痛みが走り気が付いた。一体何なんだ全く。俺の日常生活を返せ!そこまで俺を不幸にしたいのかこの世界は!そんな愚痴を垂れながらも辺りを見渡すと一面闇でした。もう真っ暗。真っ暗すぎて自分の手も見えない。まるで宇宙爆誕前の無の中にいるみたいだ。起き上がり、体の確認をするとちょっと探索しようと歩いてみた。
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数十分歩いただろうか?方向変えても何しても如何せん闇の中。恵美と奈々の名前を呼んでみたけど人っ子一人の気配すら感じられない。何でだ?
「それにしても俺はどこにいるんだ?俺は死んだのか?」
そう呟くと急に背後から何かの存在感を感じた。びっくりしたので振り返ってみるとやはり闇。でも確かにそこにいると分かる。
「誰だ?そこにいるのは分かってる。ここはどこか教えてくれないか?」
「・・・」
そこに「ある」存在感は無言のままでじっと俺を見つめていた。多分みてる。俺の体を舐め回すような感じで見てる。何だろうかと思いながらもじっとしていた。しかし体感で30分ぐらい?たったころ、俺の我慢も限界に達しその得体の知れない存在に触ってみようと立ち上がった。その存在に近ずいても動く気配がないので触れようとした瞬間俺の体が浮き上がって落ちた。実際、暗闇の中なので浮いているのかすら分からないがローラーコースターが落ちる時のキューってやつを丹田あたりに感じた。
「ヒャ!」
「いいわ、あなた、名前は?」
突然浮き上がり名前を聞かれて声が裏返ってしまった。恥ずい!でもここで名前が言えなければもっとかっこ悪い。
「お、俺は神原一だ。そう言うお前は誰だ?こそこそ闇の中で俺を付け回しやがって。」
「付け回すも何もあなたは私の中にいるのよ?ここは私が保有する空間の一部にすぎないわ。」
へっ?何言ってるのこいつ?そんな厨二病みたいなこと言うやつ久しぶりに聞いた。ここが私の中とか結構イってるんじゃないか?そしてなんかエロい。
「あなた、ちょっと失礼なこと考えてない?ここを無に戻すわよ?」
「無も何もあんた誰だよ?恵美と奈々をどこにやった?俺を早くあいつら会わせろよ。」
「すぐに会えるわ。でもちょっと私の話を聞いてもらうわ。」
「お断りします。俺は妹と幼馴染を迎えにいかなきゃならないんで。」
流石に相手も話もせずに命令だけってのはありえないと思ったのか泣きそうになりながらも仕立てに出て来た。
「ちょっとちょっと!お願いだから話を聞いて!別に損はさせないから!権能もあげるから!ついでについでにその子達のところまで転移させてあげるから!」
こいつにはプライドと言う言葉はないのか。。。
「分かった。早くしろ。」
「ありがとう!こほん。さて人間。ここに呼んだのは他でもない私よ!私はカオス。原初の神と呼ばれているわ。あなたが住んでいる世界を作ったも同然なのよ!ムフーッ。」
うわー、こいつさっきの弱気から手のひらを返した様にドヤ声?しやがった。こいつ絶対泣かす。
「で、その原初のカミサマが一介の人間に何の用で?まさか、寂しくて呼んだとかないですよね?そんなに偉いなら到底ぼっちじゃあるまいし。」
「そ、そんなわけないわ!それよりここに呼んだのはあなたが私の権能に合う器を持っているからよ!外見は中の中ぐらいだけど。で、権能云々の説明の前にあなたにいくつか聞きたいことがあるの。」
こいつ今外見って言いやがったよな、しかし俺は大人だ。苛立ちをねじ伏せ、話を聞くぐらいはいいだろうと思い相槌を打つ。
「やった!あ・・。こほん。それでは聞きます。一つ目はあなたは『テオゴニア』という書物をご存知かしら?多分日本では『神統記』と言う名で普及していると思うのだけど。」
「ああ、読んだことはあるぞ。ヘーシオドスとか言う詩人が書いたものだろう?あと普及はしていない。そんなにポピュラーな本じゃないからな。って、どうした。何故返事をしないんだ?」
答えた直後、闇の中でもやみたいな物体が浮かび上がる。そしてそれは徐々に人の輪郭を形作っていく。何ぞやと思いながらもジッと見つめていると突然輪郭があった場所から光が迸った。
「なんだ!?」
突然の出来事に驚いて目を瞑ってしまったが少しずつ瞼を開いていくとそこには全裸の絶世の美女が立っていた。腰まで届くほどの少しウェーブのかかった濡烏の髪。吹き出物一つないきめ細やかで透き通りそうなほどの美しい肌。黒真珠を埋め込んだ様な漆黒で澄んだ瞳。明らかに物理法則を無視している豊満な乳房。そして神々しいほどの左右対称の身体。そしてすぐに呆気にとられながらも俺は劣情を抱く余地すらなく、すんなりと最初に思った言葉が口からでた。
「一目惚れです。結婚してください。一生幸せにしてみせます。」
「ふぇっ!ちょ、ちょっと待って着替えるから!そしてジロジロ見るな!」
プロ格闘技選手顔負けの右足刀蹴りを顔面に受けた。だか一片の悔いなし。何故なら彼女は隠しきれずこぼれてしまったあの豊満な胸をしかとこの目に焼き付けたのだから。
閑話休題。
全裸に気付きキトンを慌てて纏ったカオスは顔を真っ赤にしながらも俺の方に向いた。
「色々ありましたが。。。コホン。何故『神統記』が普及していないのです!私の、この世界を生み出した私の本なのですよ!後それと私の子孫の。。てか、孫の世代の方が私より有名なんですが。。。」
「知らねぇよ!今の若い年齢の奴らはそんなの読まねーんだよ!俺がマイナーな本好きだけなんだよ!」
今にも泣き出しそうになっている神サマに対して少しきつめで答えてしまったがそれは仕方ない。漫画やラノベ、アニメやドラマがメインな時代で今時の俺たちの年齢層は本の虫でもない限り、授業でない限りあまり海外の古典は読まない。するとカオスはやれやれといった感じで首横に振る。イラっとするがまあいいだろう。
「仕方ないですね。まぁ召喚されたあなたが知ってるだけでもよしとしましょう。では・・。」
突如彼女から異常なまでの存在感を感じた。跪いてしまいそうなほどの、現に片膝を付いてしまうほどの圧力だがそれはすぐに霧散した。顔をあげると女神の顔は優越感で喜色満面の笑みを浮かべていた。そしてソイツは口を開いた。
「それではあなたに命じます!」
「唐突すぎんだろ!」
「黙らっしゃい!あなたにはこれから私の代理人としてある世界に行き、私の子孫達が選んだ代理人達の監視役をしてもらいます!はいこれ決定!」
文脈の「ぶ」の字もなく、傲岸不遜なこの駄女神の発言に俺の中の妹を探せない歯痒さと肝心な説明もされない苛立ちでついきれてしまった。
「何?俺はその別世界で他人を出歯亀しろと?バカかお前は。俺は他にやることがあるって言ってんだろ。早く俺を元の場所に戻せ、そして妹と幼馴染もな。」
グスン。。。
えっ。何コレ。泣くの?うわ!やばい!マジで泣きそう!
「うっ・・泣くな、話せ。」
何故だ。泣かすと誓ったのに何故こいつが泣くと罪悪感がハンパない。
「グスン。『神統記』を読んだあなたも知っていると思いますが私の系譜は3世代でその世代ごとに古き世代への恨みがあるのです。ですので世代間の戦争はある程度放っておいてもいいのです。ですがもしこの3世代の中で明らかに人道に反する行動や一方的に神の権能で暴れだすようでしたらそれを収めて欲しいのです。何せ神の代理人とはいえ『人』であることには変わりありませんから。差し詰め調停者ってところでしょうか?」
ん?じゃあ何か?こいつは俺はゲームマスター的な立場になって欲しいのか?まぁ、じゃあ大抵は傍観してていいってことだろ?そしたらゆっくり奈々と恵美を探せるか。それに命令されたって何も聞いてやる必要はない。打算的に考えて俺は女神にニヤリと笑った。女神はたじろいだが恐る恐る聞いて来た。
「この話、受けてくれませんか?好きに動いてもいいので私の願いを聞いてください!」
「いいぜ、受けてやるよ。」