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魔王になりたい俺の友は善人として称えられる  作者: 狼煙
第6話 魔王になろうと開発したのはヴァン
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6-⑩ あなたは花瓶に牛乳を注いで飲むの?

 その様な経緯があったからこそヴァンは魔力変換意志洗脳機を作ったのである。これを使い魔王化計画を実行しようとしていた。


(これまでを振り返って考えてみれば、俺は俺自身で悪事をはたらきそれが翻ってきた……最早それは否定できない事実。しかしそれならば、他人が行う悪事はどうだ? 果たして他人の悪事すら捻じ曲げることはできるのか? できはしない! もしそうならかつてのグレイドアノブ尻直撃事件も善行に変わっていた! しかしそうはならなかった! ということは、あるのだ! 悪事を行う方法!)


 そこで再び手の中に魔力変換意志洗脳機を転がす。少し力を加えれば壊れてしまいそうなそれは、ヴァンの手の中で東西南北、自由に転がる。


(そして今キフドマがもう1人の四天王を連れてここに来る。しかもジウソーお墨付きの強さを持つものが……! そこで奴らの片方でも洗脳すれば……! 『破壊』を命じれば……!)


 キフドマかもう一人の四天王によって破壊された風景をヴァンは想像する。。

 廃墟同然と化した体育館、傷つくことなく絶望している生徒達、呆気にとられ対応策を考えられないでいる教員や職員たち。

 そしてその中で仁王立ち高笑いするヴァン。そのすぐそばに控え、笑うミリアとグレイ。


(見えた……! 見えた! これが、俺がたどり着くべき、焦がれた世界図! 俺の願望の到達形態! あるべき未来図!)

「さあ、早く来い、キフドマ! 裏生徒会四天王!」


 人の願望が現実世界に影響を及ぼすはずはない。いくらヴァンが叫び渇望してもそれは虚しいものにしかならないはずである。

 しかし今叫んだと同時に爆発が起きた。これは偶然と片付けことができず、運命をヴァンは感じた。そしてヴァンのあずかり知らぬところではあるが、ちょうどキウホが狙っていると告げた時でもあった。




 爆音が響いた。

 場所は体育館の天井。

 火薬を混ぜた爆破の音、独特の匂い。人魔の持つ身体能力に差はあれど、そのどれもが感じるのは必至。であるからこそ体育館に集結している1~3年すべての生徒が視線をそこに集中させた。


 しかしそれは囮。

 その間に体育館の壇上に飛び降りて参上する影。それが微妙にこけたことに気付いたのは、かつて同類だったキウホだけだった。


「偽りの正義を掲げし生徒会……その欺瞞に満ちた世界の中で生きる者たちよ、聞け!」


 その声量に皆の視線は声の主に集中する。全身黒、黒、黒。黒尽くしで頭の先から爪先まで覆われ、見えるのは目だけだ。


「誰あれ……?」

「忍者……?」

「何かの演出か……?」


 口々に人々の口から感想が、推察が、疑問が放たれる。が、それら1つとてキフドマは答えず、手を民衆にかざす。


「真なる正義は我ら裏生徒会にこそある! それを証明するためにジウソー殿は紳士的な話の場を持って証明しようとした! しかしその結果は! 気絶の末の捕縛という最悪の手段でもって応じたのは、生徒会だ!」


 残念ながら完全なる人心掌握術をキフドマは持っていなかったようだ。バースが腕を一振りする動作を行ってしまった。そのため、三連牙は階段目掛けて歩き始め、バースも三人についていくように下り始める。


「ならばどうするべきか! 正義は死滅するべきか! このまま座して死を待つべきなのか! 否! 断じて否! 正義とは実行することに意義がある! それはたとえ一人になろうと例外ではない!」


 30点、ヴァンは心中でそう評じた。

 余計な言葉だらけで人魔誰しもが理解できてない、いくら言っても『?』しか抱かせない内容では誰にも響かない。虚しいだけだ。

 そもそも何が言いたいのか。抽象的な言葉ばかりで内容が伝わらない。自分のことを悪と呼んだことだけは評価するがそれ以上は評価できない。

 勿論そんな酷評されていることをキフドマは知らない。独りよがりの演説は続いていく。


「その正義を実行するは裏生徒会四天王!そしてその一員、キフドマ・キフエクツ! ここに推参!」


 シ……ン

 水を打ったような静けさとはまさにこれ。誰も動かないために物音すら体育館内を走っていかない。しかしそれは永遠ではない。それ故ある一つの音がするとことさら注目される宿命を持つ。


 パチパチパチと間が抜けた音が体育館に響いたとき一斉に皆が向いた。

 拍手の音。それもおざなりの、いい加減な拍手。何百という目はそこに向かって視線を飛ばす。


「ご立派な演説、ご苦労様。内容は及第点すらあげられないけど」


 その声の主はキウホだった。

 しかし肉体が無いキウホは拍手が出来ないため、頼まれたのか操られているのか分からないが、グレイが代わりに叩いていた。


「………………ふん」

 そんなキウホに冷淡な無視という対応を取る。キウホの話から察するにこれまでも行ってきたであろう行い。

 だがそれがキウホの逆鱗に触れた。


「久しぶりね、キフドマ……もう足の調子はいいの?」

 それがキフドマから狼狽を誘う一言だった。それまで崩さなかった直立不動の姿勢が崩れ、制止するように手を突き出す。


「よせ! キウホ! 言うな!」

 明らかに声色が変化する。これまでの演劇で見られるような低い通る声ではなく、地声。しかしキウホは意趣返しした。


「あなたが勇んで行った生徒会室爆破事件、その時飛び降りて脱出。かっこよく着地して終わりかと思えば、そこで着地失敗。魔法で変換していた両足を複雑骨折病院直行。お加減はどのようなものかしら?」


「ちゃ、着地に慣れてないんだから仕方ないだろ!」

「へえ、忍者の格好をした人が、忍者の最も基礎基本である高地からの着地ができないのね。泳げない水泳選手や硬貨の区別がつかない商売人くらい残念だと思うのは、私の個人的見解に過ぎないのかしらね?」

『あ、確かに』


 誰かが言ったわけでもないのに、それが現実に起きたかのような空気が流れる。そんな空気を振り払うかの様に手を大きく振るキフドマ。


「やめろ! 俺は……! 俺は残念なやつに見られるのは嫌いだ! 俺は残念なやつではない! 俺は真面目な実力者だぞ! 能ある鷹は爪隠す的な奴だぞ!」

「忍者部を作ろうとするやつが残念じゃないとか、お笑いなんだけれど?」


「今鋭意努力中なんだよ! 努力を馬鹿にするのか! お前最低だな! だから友達いないんだ!」

「器と合わないと言っているの。あなたは花瓶に牛乳を注いで飲むの? 飲まないでしょ? それと同じで部活の設立に重要なのは設立するものの器なのよ。残念な人がそれに当てはまるわけないじゃない。あと友達はいなくても魂を分けた人は見つけたわ」


 言うなりグレイの傍らに寄り添うキウホ。騒ぎ出すミリア。そんな様子を睨みつけるキフドマ。

 最早緊張した空気はどこにもなかった。口論にだれてきたのか、多くの人魔から


「早く大会の続きやろうぜー」

「昼休み何食べるー?」

「俺ちょっと忍者部興味あるなぁ」


 と思い思いの感想が出始めた。中には背を向けて違う場所へ移動している面々もいる。

 さすがのヴァンですら不安になり


(……作戦、やめようかな……?)


 とさえ思った。

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