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魔王になりたい俺の友は善人として称えられる  作者: 狼煙
第4話 妙な奴に気に入られたのはグレイ
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4-⑯ 私はいつでも座れるものなので、ありがたみもありませんのでね

 ヴァンがその男に気付いたのは、グレイがいなくなってからしばらく経ってのことだった。

 組別対抗武術大会の作戦、開会宣言等の原稿を仕上げていたため、机に向かいっきりであったため、ドアが開いていたことにも気付かなかった。


 まず目を引いたのは格好である。

 当然ヴァンと同じヴァルハラント学校の学生であるから制服を着ているのだが、それが綺麗なのである。異様な程に。

 毎日熱心に手入れでもしているかのように、皴一つなく、シミなども当然ない。ノリまできかせているのか、服全体がパリッとしている。

 新品制服を着ているのではないか、そう推測してしまうほど男の制服は綺麗だった。

 その服とは対照的に男自身には特徴が全くなかった。

 十代後半の年頃の顔立ち、赤い中途半端な長さの髪の毛。こういっては失礼だと思うが、どこにでもいる人族の男子としかヴァンには形容しようが無かった。


 ともあれヴァンはその男の顔をじっと見つめていたが、全く見覚えがなかった。だがヴァンの心中にいぶかしさは無かった。

 恐らくはグレイへの意趣返しとして企画した


『グレイ・グラディウスVSキバ・ワーウー 影の薄い副生徒会長の意地と非モテ男の激突! 愛に狂う嫉妬の炎は生徒会内で行われる愛の巣まで焼き尽くすのか!? 醜き男と男の喧嘩! 反面教師にしたい記録映像の頂点を極めしもの、今ここに降臨!』


 という記録映画の放映を開始したところ、人魔を問わず見に来たものが多かった。だからその手の手合いだと考えたからだ。


「映像を見に来た方か? それなら少し待って頂きたい。いくらでも見せるが、少し準備が……」

「小物が何をしようがされようがどうでもいい。私の用があるのはお前だ」

 席を立とうとしたヴァンに冷水を浴びせるかのような低い声。それは友好という2文字から程遠いものであることが容易にうかがえた。


「……随分な言い方だな。確かにグレイは大物ではない、だがそれでも私の副官にして友だ。友を扱き下ろされて私が冷静でいられると思っているのか?」

「友とは互いを認め、讃え、高めあう存在。醜く悪し様に口論している様がそれにあたると思っているのか? このようにおちょくりからかうものが友であるのか? 思考まで愚かだとは思わなかったぞ」

「堅苦しい定義のみがこの世に存在していると思っているのなら、素晴らしい見識の持ち主であらせられる。さぞかしあなたの行く道は皆から称賛され、語り継がれるものなのであろうな」


 せせら笑うヴァンに対して男はあくまで無表情であった。少なくともヴァンの見る限りでは。

「下手な皮肉を言っても何も思わん。そもそも悪の言葉など聞く価値すらない」

「………………ほう、私が悪と?」

 ヴァンの体が小刻みに震えた。


 人は受け入れがたい現実に直面すると体がそれを拒絶せんと行動する。

 泣いたり、叫んだり、暴れたり。どのような行動を取るかは人魔によるが、それは確実であろう。その原因が憎しみであろうとも悲しみであろうとも、喜びであろうとも、だ。

 今のヴァンの震えは、まさにそれであった。


「私を悪と言うことは……あなたは裏生徒会のものか」

「……名乗り、目立つことは私の最上級にして不本意。だが、今だけはそれをやめよう。それがせめて、間違いとはいえ生徒会長として選ばれた男への礼儀としてな」


「私の名前はジウソー。ジウソー・オー。裏生徒会四天王筆頭だ」

「……これはこれは。まさか四天王の頂上にいる方がお出ましとは。大変失礼をいたしましたな」


 右腕を胸に当てお辞儀するヴァン。礼節にかなったものであったが、それに対するジウソーの反応は不愉快そうに鼻を鳴らしただけであった。

(見るところ大分怒っている様だな……潔癖というところも聞くに、俺と会話をすることすら嫌というところか……大分扱いやすい人族だ)


「ともあれ歓迎致しましょう。お出しするものもございませんが、せめてあちらにお座りくださるがよいかと」

 ヴァンが指し示したのは生徒会長席だった。

 招いたわけではないが客は客だ。礼儀を失するわけにはいかない。故にこの部屋で最も豪華であり、ドアから最も遠い位置にも当たる会長席を進めるのは当然でもあった。

 それを分かっていたからか、ジウソーも当然の様にして歩を進めていく。

 と


「私はいつでも座れるものなので、ありがたみもありませんのでね」


 その背中にヴァンは不意打ちを食らわせた。

 俺は生徒会長であり、お前と違うんだよ。

 遠回しながらこのような意味を含んだヴァンの発言は、刹那的ながらジウソーの足を止めさせた。

 だがそれもすぐに過去となり、不愉快さを抑えきれなかったが、ジウソーは座ることとした。

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