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魔王になりたい俺の友は善人として称えられる  作者: 狼煙
第4話 妙な奴に気に入られたのはグレイ
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4-⑩ 矛盾してんだよあんたの主張は!

(ダメだ!)


 相手に合わせることで、会話を展開していく。望んだ結果に行くかどうかはさておくが、グレイにしてみるとこれは得意としているつもりだった。

 だが今は、どう反論すればいいのか、何を返せばいいのか。想像することすらできなかった。


(くそっ! そもそも何でこうなった、突然この女が現れてきては俺にケツに何か入れられた感想を聞いてきたんじゃないのか。それがどうしてこうなるんだ。話が展開することで思わぬところへ飛翔するのはよくある話だが、これは飛びすぎだろ。しかもそれで性行為がありふれているとかどうとか……出発点からしておかしかったが、現状の到達点も訳わからねえぞこれ!)


 混乱する状況を立て直すため、これまでを振り返るグレイ。

 だが、それはおおよそ裏目に出ていた。

 この討論の開始時点と現状が全く結びついてこない。いや、正確にいえば結び付けることは出来ても、混沌としているものが全く解除されそうにない。それがグレイの思考を混線させる。


 しかしそれではこれは無駄だったのか、と問われればそうではない。

 過去を振り返り、それと現状を比較、考察、行動することで現在は作られる。歴史がそれを証明している。

 だからそのとき


(……っ!?)

 グレイの脳内にあるものが訪れたのも必然と言える

 それは、偶然の到達。

 それは、思考の跳躍。

 人の進歩に常に寄り添ってきた神に等しきもの。

 その名は、閃き。


(待て……いける……いけるぞ……これ……!)


 自らの理論を鑑みて確信した。これなら会話を続けることが出来る、それどころか突き崩せる。キウホの持論を。

 だからグレイは降参したように両手をあげた。


「分かったよ、さっき言った言葉を取り消すわ。お前の言う通り性行為は公的なものになりえるな。俺の考えは間違いであったと認めるわ」

 相手を論理で屈服させるのは麻薬のような甘美さをもたらす。これは人魔どちらにも共通した性質なのだろう、優越感を表出した笑みが見える。

 しかしグレイは屈辱と敗北感に幽閉されていたわけではなかった。


「だがよ! もし俺の言を否定するなら、それはあんたの考えを覆すことになっちまうんだぜ? それでもいいのかい?」

 それが引き金となった。先ほどまで一切の躊躇を見せなかったキウホの心情に、何かしらの感情をを産まれさせるための。先ほどまでの面持ちが一変した。


「……どういうことかしら?」

「あんたは言った。性交することはこの世の中でありふれたこと、だから馬鹿にするのはおかしいって」

「一言一句そのままとは言わないけど、それらしいことは言ったわね」


 その肯定が欲しかった。

 グレイの顔に先ほどから無縁であったものが宿る。笑顔だ。勝利を確信した笑み。

 そして指をキウホに突きつけ


「なら、なおさらおかしいぜ! 何故ならさっきのあんたは性交することを、礼儀とは対極の世界にある影と言った! つまりあんたは性交を非礼儀的なもの、公的なものではないといっているんだ! 矛盾してんだよあんたの主張は!」

 おお、驚きと感心が混ざったようなキバットの声が漏れる。


「……驚いたわ。まさか私の破綻を見抜いたなんて……」

「偶然さ、だが今度はあんたが黙る番だぜ」

 グレイの笑みがさらに深さを増す。その中には得意さすら混ざっているようだ。

 無理もない。先ほどまで完全に口で抑え込まれていた相手を口で負かしたのだ。先ほどキウホが感じたようにグレイの脳内に興奮物質が分泌されたとしても、それを責められるものはいないだろう。


 だがそれがため、崩されたときにはより衝撃が来るのだ。

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