第1話 のんびりな朝
「ひいちゃん朝だよー起きてー」
その声と共に私の布団が剥がされる、布団を剥がして来たのは私が運営している大規模ギルド『プリン四面楚歌』のメインアタッカーでプリン四面楚歌メイド隊のメイド長兼恋人の『サヤ』だ。
「ンン……布団返して…」
そんな事を言うがサヤは私の言葉を無視し私のちまっこい身体を抱き抱え、何時もの服に着替えさせてもらう。服自体はウィンドの操作であっという間に着替える事が出来るけど…一部の人達はこうやって着替えている。
こうして時間が掛かりながら、何時も着ているドレスに着替え終わった、このドレスは『回復魔法の回復量を増加する』スキルが付いている為、ヒーラの私にはピッタリの服だ。
まぁ…少しこの身体には大人びてるけど。
「それじゃあ朝ごはん食べにいこ?」
そう言いながらサヤは私の手を握る、それに対しニコリと微笑み答える。
私達は今現在、何故かVRMMORPG『フリーワールド』の世界に居る。理由は不明で元の世界に戻る手段は不明……元に戻る手段は実際の所。探されてはいない……理由は良く分かっている。
現実の世界よりもこの世界の方が遥かに住みやすいからだ、だから皆探そうともしないんだ……私もその内の一人だけど。
暫く無駄に広い『プリン四面楚歌』の拠点を歩く、この拠点は元々は小さな家だったのだけど、次第にメンバーが増えるにつれ段々と大きくなり、最終的には大きなお城になっていた。
道中、すれ違う今は命が宿っている元NPC達が挨拶をしてくる。これでも私はこのギルドを造り上げたギルドマスターで様々な人達から『最初の三人』或いは『聖女』と呼ばれている。
つまり結構私は凄かったりする。そんな事を考えていると、気が付けば目の前に四面楚歌メンバー総勢120名が入れる位の巨大な食堂が目に入った。
そのまま食堂の中に入れば、中にはメンバー120人その殆どが席に座っていた。つまり私とサヤが最後らしい……何時もの事だけど。
「んっ……美味しそうな匂い」
「本当だねぇ」
そう言いながら、途中ギルドメンバー達に挨拶しながら何時もの席に着いた。
「やぁ姉さん」
「おはよーユナ」
私の右席にサヤが座り、左席には男の子に見える私の妹『ユナ』が座っていた、ユナは私とサヤが座ったと同時にそう言った。
ユナは四面楚歌のサブマスターで、戦闘に於いて両手に持つ盾で攻撃を一手に引き受けるタンクを担っている。
「それじゃあ寝坊助姉さんが漸く来た事だし」
その言葉にギルドメンバーが笑う、其を見ながら隣にいたメイドに目配りをする。メイドは一礼し奥に行った……直ぐに料理を持った複数のメイドが現れた。
何時も思うけど…手際がいいなぁ。
その手際の良さのお陰か、直ぐに皆のテーブルに美味しそうな料理が配られた。
「それじゃあ!」
私は大きい声を出す為に息を吸う
「頂きます!」
その声と共に女の子しか居ないギルドの朝食が始まった、そしてゲームの世界に囚われている私達の日常が始まった。