プロローグ もう助けられるわけには行かない
どうも!聖天海瀬と名乗った光輝です!今回の作品は、書き始めるまでに一週間かけ、設定、ストーリーとかなり力を入れています!!だから面白いはず!今回はプロローグになりますが、ここで面白いと思った方!ぜひ!本編も読んでくれ!!
――生きている。
固いゴツゴツした壁の感触を背中に感じ、彼はなんとか意識があるのを確認する。
身体が思うように動かず、目を開けるので精一杯だ。
恐らく、肋骨が折れているのだろう。
呼吸をする度に鋭い痛みが彼を襲う。
目の前には彼を庇い、意識を失った二人の仲間が倒れている。
――俺のせいで、俺がバカなせいで、みんな死ぬ。
赤い悪魔が、ゆっくりと近づいてくる。
赤い巨大な肉体、発達した筋肉。その巨体に引けを取らない大きさの棍棒を肩に担いでいる、牛の化物だ。
洞窟の広い更地に、重い足音を響かせ、彼に近づいてくる赤い悪魔は、彼の前で静止する。
唸り声とともにトドメの一撃を与えようと、担いでいた棍棒を両手で振り上げる。
――俺は、負けるわけには、死ぬわけにはいかない。
言葉にならない、自分の貧弱さを、愚かさを、そして悔しさを噛み締め、目を瞑る。
グゥオォオ、?
疾風の如く駆け抜ける風により、赤い悪魔の左腕が、肘から切断された。
正確には斬撃だ。
凄まじい技量による、岩をも断つその斬撃は、軽々と赤い悪魔の腕を切断することなど容易い。
切断面から血が吹き出し、唸る赤い悪魔は、片手で支えきれなくなった棍棒の重さにより、よろめき、倒れる。
突然の斬撃により腕を切断された赤い悪魔は、唸り声をあげ、本能のままに生き延びようと立ち上がり、現れた敵を探す。
突然聞こえた、赤い悪魔の唸り声に目を開ける。
赤い悪魔が睨みつけている先には、青髪の男剣士が立っている。
彼は何が起こったのかすぐに理解することができた。
――また、助けられた。
後ろから、魔法の詠唱が聞こえてくる。
そこにいるのは一人の少女、否、ウィザードだ。
ウィザードとは攻撃魔法のあらゆる属性を扱う、魔法職の上級職にあたる。
彼女の凄まじい魔力が解放され、周りに冷気が漂う。
「ウル・ブーリザ」
―最高氷結魔法―
赤い悪魔は目の前の剣士に釘付けになっていたが、魔法の詠唱に気づき振り向く。
だがもう遅い。もうすでに詠唱が終わって魔法が放たれていた。
最高火力の氷結魔法により、赤い悪魔は、氷に包み込まれ、成すすべなく砕け散った。
そして後ろにいた二人が近づいてくる。
魔法により赤い悪魔を倒したウィザード、きめ細やかな黒い髪をなびかせる短髪の少女は、彼を見て驚いている。
「なんでっ、ここに…?」
そこへ、青髪の剣士が駆けつけた。
「ユイと僕は倒れている二人を救助へ向かう。ソフィアは彼を頼む。」
「うん!エルもあっちの二人をお願いね!」
目を見開いて驚いているウィザード、否、ユイを見つけて、エルと呼ばれた青髪の剣士は声をかける。
「どうしたんだい?ユイ」
「えっ、あ。いやなんでも。それより、早く倒れている二人の救助へ行かないと!」
「ああ。後で話はきかせてもらうよ!」
そうして二人は意識を失っている二人の所へ、救助に向かった。
まだ、うっすらと意識の残っている彼の元へ駆け寄ったのは、透き通るような美しい銀髪を後ろへ流した長髪少女、ソフィアだ。
「い、いま、ヒールをっ!」
「や、めろ。」
彼は助けを拒んだ。声になっているのか、なっていないのかもわからない、息の漏れるような声で。
しかし彼女には聞こえていた。
驚いているのだろう。
微かに、驚きの声を漏らした少女は一瞬戸惑いつつも、回復魔法の詠唱を始める。
彼はちっぽけなプライドを、意地を守るためだけに、最後の力を振り絞り、かすれた声で叫ぶ。
「俺は…もう…助けられるわけには…」
彼の目から涙が溢れる。
もう彼は痛みすら忘れるほどにある感情に飲み込まれていった。
――悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい。
彼は弱い自分が嫌いだ。
何度も何度も助けられてばかりでこの世界を生きてきた。
助けられる度に自分の実力の無さを、自分の愚かさを突きつけられる。
自分が常に守られている立場にあるのが、彼は気に入らなかった。
いつしか、守る側に立ちたいと強く願うようになっていた。
少しずつ遠ざかっていく意識。
ただの弱者の、負け犬の遠吠えだ。
だが、それでも――。
「俺は、君に――」
――もう助けられるわけにはいかないんだ。
そして彼の意識は暗闇に沈んでいったのだった。
さぁ。面白かったでしょう?
何がなんだかわからないって??なら本編読んでくれ!わかっていくはず!文章もどんどんよくなっていくはず!これからもよろしくお願いします!