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俺、南蛮人と間違われる

時代考証は適当です。方言モードは途中で面倒くさくなってやめました。

ウィキペディアを見たら、小山田信茂は韮山城を攻めている真っ最中かもしれません。

コメディ―だから許してくださいね。

 気がつくと、田舎の日本にいた。場所は不明だ。

街中の駅の雑踏の中に居たはずなのに、急な大地震に襲われて……。

というのはありきたりなので、雹ですよ、雹なんですよ。


駅から出て人ごみの中を歩いていたら、いきなり夏なのに雹が降ってきて、痛いのなんのって、

天候なんぞにボコボコにされるのは不本意だったので。

「ここじゃないどこかへ連れてけ──っ! 」と思ったらあれま……。


あの記憶は夢ではないはずだ。今が夢なのだろうか。

草のにおい、日の光に温かさを感じる肌。時折、シャツの間をすり抜けていくさわやかな風。

全てにおいてリアルだ。

いったい、ここはどこなのだろうか?


「おーい。怪しい人がいるぞ」

遠くの方にいる農家の人たちが、俺を指さして話をしている。

茶色がかった灰色の着物を着て帯をしめている。手にはクワを持っている。何人かは頬かむりをしたり、笠をかぶっている者もいる。

俺は、あぜ道を駆け抜けて、農家の人たちの所にたどりついた。

「ハァハァ。ここはどこなんだ」

「甲斐の国さー」

おかしなことを言うと俺は思った。貝の国だなんて、メルヘンチックなことを言われてもと、首をひねる。

「貝の国って、海はどこなんだ」

「海はねえよ。ここらへんはずうーっと山国さー」

俺は少し混乱した。ひょっとして貝塚があって、それで貝の国を自称してるとか、貝塚を観光に利用しているのではと考えてみた。


「それよりおまん、ずいぶんと変な服装してるな」

「これは、もしかすっと南蛮人って奴かな」

俺は辛い物が好きでないので、『南蛮』と言われてもピンと来なかった。

「もしかしたら外国から来たんでねえか」

やっと繋がった。どうやら俺はファッションが流行の最先端を行っているので、外国人だと思われているらしい。髪の毛も茶色だしピアスもしている。しかし誤解は解かねばなるまい。

「俺はれっきとした日本人だ」

「はぁ~、こんな日本人なんて見たことねえだ」

「きっと他所から来たに違いねえ」


 農家の一人が、頭にかぶっていた手ぬぐいを取ると、ちょん髷が結ってあった。

農家の人たちの顔をよく見るとみんなちょん髷を結っていることに今更ながら気づいた。

俺は全てを理解した。時代が明らかに違う。

「今は何年だ?」

「元亀元年ぐらいさー」

「元気? そんな元号は知らん」

しばらく考え込む。良く考えたら日本史は興味がないので勉強は全くしていない。これでは今が何時代か手がかりもつかめない。


「おまんは、どこから来たんだ」農家の人の一人が尋ねてきた。

「未来から来たんだ」

「ミライって国から来たんだとよ」

「ほーけー(注方言です)」

困った、話が全然通じない。

「南蛮人はだたら珍しい、ひとつ侍衆に会わせてみよう」

農家の人たちは相談している。

俺を侍に対面させるつもりらしい。南蛮人から珍しい物を頂こうという腹積もりなのだろうか。

残念ながら、バッグの中にはスマホと、漫画の本とノートとボールペンぐらいしか入っていなかった。


 しばらくして、侍衆の一人がやってきた。年齢は20ぐらい。薄いあずき色の着物に刀を差している。聞いた話によると、侍衆とは農民の少し上の位で、村民を束ねる支配者層としては末端に位置しているそうだ。せっかく未来から来たのに、領主やさらに上の大名に会うまでには、まだまだ先らしい。

「お前がミライ国から来た南蛮人か。名をなんと申す」

江戸井翔(えどいしょう)でございます」

なるべく相手に無礼にならないように敬語を使った。

「エディ・ショーか、いかにも南蛮人に多そうな名前よのう」

侍衆の一人は人の名前を勝手に洋風に変換すると一人で納得していった。


 侍衆の屋敷は、農民の家と比べて多少見栄えがいい程度だった。といっても日本史の授業で寝ていた俺には、歴史的価値が全く分からない。屋敷の中で、侍衆と対峙することになった。

「ミライ国とはどのような国か」

「アメリカでもイギリスでもない、この国のずっとずっと先の時代です」

侍衆たちは首をかしげている。南蛮人がたくさん来ているにもかかわらず、アメリカもイギリスも知らないとは少々あきれた。だから俺は発音を変えてみた。

「アーメェーリィカやエゲレスと文化文明では比較にならない進んだ国です」

侍衆は集まって相談した。漏れている会話から推理すると、自分たちでは手に負えないから、ここら辺一帯を治めている黒人の領主に対面させるという。


 黒人と聞いて少し困る。実は英語も得意な方ではない。

屋敷から出ると馬に乗った侍が来ていて後ろに乗れと言う。

馬の二人乗りは当時の法律で大丈夫なのか気にかかった。

「国人の小山田様の谷村舘につくまでの辛抱だ」

侍は馬の鞍の後方に俺を乗せると手綱を引いた。




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