紙一重
悲観主義者は風にうらみを言う。
楽観主義者は風が変わるのを待つ。
現実主義者は帆を動かす。
ウィリアム・アーサー・ウォード
「ロレーヌ・・・?」
三人はロレーヌにあるというルーアン城を目指していた。
「そこに“茨姫”っていう人工知能が身を潜めているらしい」
「姫ってくらいだから、美人なんだろうなー」
何を想像したのか、ラルトはニヘラッと笑う。
ふと、顎に指を置いて何か考え始めた。
「なーんか聞いたことあるな。ロレーヌ・・・?ルーアン城?なんだっけ?」
途中、山賊に襲われそうにもなったが、逆に酒を奢ってもらうことに成功した。
計画を立てていたわけではないが、気の弱い山賊だったのか、それともロイを見て怯んでしまったのか。
別れの際にはゴマすりするように去って行った。
「にしても、ルカの話だと、あいつら以外にもソレ目的で殺されて、実験台にされた奴らがいるってことか?」
「だろうな。船長の航海日誌にも、狙われただのなんだの書いてあったしな」
バサッと地図を広げ、ロイは今の自分の場所を確認する。
「けど幽霊船ってかなり前の船だよな?」
「そんなにあいつらに感情移入するな。大体、政府の奴らのしてることを白から黒になんて、そうそう簡単に変えられるもんじゃねーんだぞ」
「わかってるよ」
「ロイさん、あの川の向こうの塔ですね」
一人黙々と目的地を探していたオ―ガスが、二人の会話を遮った。
ロイもオ―ガスの言葉に顔を上げる。
ルーアン城と呼ぶにはあまりにも貧相な高い塔がそこに建っていた。
その手前には川があり、三人は靴を脱いでズボンの裾をまくりあげ、川を渡ることにした。
だが、入ろうとした時、ラルトが何かに気付いてすぐさま川から出た。
「なんかいるんだけど!この川!」
「魚じゃねーのか?」
「違う!もっと大きな・・・やつ・・・」
目を凝らしていたラルトだが、ここは川。
魚以外の何か、と言う方が無理だろうということも分かってはいた。
だが、確かに感じた魚などという可愛いものではないソレ。
「!ラルト危ねぇ!!!」
「え」
グイッとロイに首根っこを掴まれ、岸に放り出される。
その間、オ―ガスが銃を構えていた。
「なんでこんな川にいんだよ!シャチが!」
「いや、シャチなだけじゃねえな」
その川にいるはずなどないシャチの姿は、ルカやノエルと良く似ていた。
シャチの姿をしたソレは川から出てくると、長い黒髪を振り乱す。
ルカとはまた違い、女性らしい女性。
だが、先程見たとおり、きっとこの女性も確保すべき対象なのだろう。
「あなたたち、誰?」
「お前さんこそ誰だ?」
「・・・ロザリオ」
そう言うと、ロザリオはまた川に消え、嫌な気配だけが残る。
オ―ガスは川の様子を窺いながら、ゆっくりと岸にあがっていく。
そういう能力なのか知らないが、シャチのように動きが速いのだろう。
バシャッ!!!
すごい勢いでロザリオが川から出てくると、オ―ガス目掛けて飛びかかってきた。
銃を構えたオ―ガスだが、その前にラルトが立ちはだかった。
そして、ロザリオはラルトの腕を噛んだ。
「いってェェ!」
「噛み砕いてあげる」
さらに強まるロザリオの顎の力に、ラルトは顔を歪める。
だが、逃がすまいとラルトは噛まれていない方の手でロザリオの後頭部を押さえつける。
「!?」
その行動に驚いたのか、ロザリオは更に力を強めながらも、ラルトから逃れるタイミングを探る。
「逃がすなよ、マッカーン」
「早くしろよ!まじでちぎれるって!」
悠長にラルトの傍に寄ってくると、オ―ガスはロザリオの背後に回る。
そしてロザリオの口に、巻いたタオルを喰い込ませるようにグイッと引っ張る。
尚も負けまいと、ラルトの腕に噛みつくロザリオに、ラルトが頭突きをした。
「あーあ。あの石頭喰らったか」
なんて、ロザリオ確保の様子を眺めていたロイは言っていた。
ロザリオの頭は通常の人間のものだったため、ラルトの頭突きは効いたらしい。
そのままタオルを口に巻くと、腕を後ろで縛る。
ラルトは自分の身体に巻いてある包帯で、自分の腕の噛まれた部分を巻く。
「ロイさん、ロザリオを連れたまま塔に向かいますか?」
「・・・いや、一人で行ってくる。お前ら先にそいつ引き渡しておけ」
ロイのその言葉に、オ―ガスはただ頷く。
そして、ロイはオ―ガスに耳打ちすると、二人はロザリオを連れて先に帰っていく。
「よし」
一人になると、塔へと向かって歩いて行く。
見上げれば小さな窓がちらほらあり、てっぺんはまるで帽子のような形をしている。
塔の中に入る為、木製のドアを開けて行く。
「大丈夫だよ。僕が茨姫を守るから」
少年は、目の前で目を瞑っている少女に囁いた。
少女はゆっくり目を開けると、少年に微笑みかける。
「ごめんなさい。祈ることしか出来なくて。みんなは無事かしら?」
「僕たちはあなたの為にいるのです。あなたさえ無事でいてくだされば、それで良いのです」
「・・・でも、もうダメみたいね」
「茨姫?」
「・・・聞こえるの。声が」
「神のお告げですか」
少女は顔をあげてじいっと一点を見つめると、その目を潤ませる。
そんな少女に声をかけることなく、少年もじっと少女を見つめていた。
少女の頬を伝うそれは、床に落ちていく。
「お?」
塔の前まで辿りつき、木で造られた分厚い扉に手を置いた。
ぎい、と重たく冷たい音をたてて開かれた扉は少し湿っていた。
天井からはピタ、ピタ、と滴が滴り落ちてきて、頭に直撃する。
すると目の前に、一人の少女が立っていた。
「えーと、茨姫か?」
「はい。私を連れ戻しに来たんですよね?」
「まあ、そうなんだが・・・」
うーんとその少女を上から下まで見た後、喉を鳴らして笑った。
その姿に、少女は首を傾げる。
「確かに連れ戻しには来たけどよ、あんたじゃないんだわ。本物の茨姫んとこ、案内してくれるかい?」
「・・・・・・」
口を閉ざした少女は真っ直ぐに目の前の男を見据えている。
そんな少女に対してニヤッと笑えば、少女の姿が変わって行く。
金髪に緩いニット帽を被った少年が、一礼してきた。
一礼したとき、ニット帽が落ちそうになり、その時に少年の頭に何かの動物の耳がついているのが見えた。
少年は手でニット帽をキャッチすると、すぐに被り直した。
今度は落ちないように少し深めに。
「失礼いたしました。僕はクロードといいます。ここにいらっしゃるということは、ロザリオはもう捕まってしまったんですね」
「ああ。俺の知り合いにな」
「そうですか・・・」
クロードは下を向き、唇を噛みしめていた。
すぐに顔を上げると、歩き出す。
「茨姫はこちらです」
「・・・・・・」
寂しそうな冷たいそうな、そんな目を向けてきたクロードの後を着いて行く。
塔の真ん中を吐きぬけるように螺旋状の階段が聳え立っている。
その階段をひたすら上がっていく。
ぐるぐる回っていくうちに、歩いている場所が高いのか低いのかさえ分からなくなってくる。
所々にある小窓から差し込む光は僅かではあるが、充分な明るさのように感じる。
「どうしてこんなところにいるんだ?」
「・・・茨姫を守る為です」
「守るって、政府からか?」
「彼らは恐れているのです。茨姫の持つ力に」
「そんなにすごい力なのか?」
政府が恐れている力になんて興味もないが、きっと世界に影響をきたすものなのだろう。
「・・・茨姫は特別なのです」
それ以上話さなくなったクロード。
「特別ねぇ・・・。政府が好きそうな言葉だ」
「あなたは、どうして茨姫を迎えに来たのですか」
背中を向けながら聞いてくるクロードに、なんとなく鼻で笑う。
「お前等から見りゃ、俺達はただの政府の犬だろうな。大人しく言う事聞いてるだけなんだからな」
「僕を殺して茨姫を連れて行くことくらいわけないはずです。しかしそれをしなかった」
「・・・ああ。俺だって政府の連中は嫌いだ。餌貰う為に喜んで尻尾振るなんて御免だ。だが、黙ってやられる心算もない」
クロードには見えないが、きっと睨みつけるような顔をしているのだろう。
声色からでも分かるほどの政府への恨みは、笑い声によって掻き消される。
「なんてな。俺ぁ面倒なことに巻き込まれたくねぇからよ。さっさとお前たちを連れて行って、一秒でも早くあいつらの監視から逃れたいんだ」
「・・・・・そうか」
再び訪れた沈黙の中、足音と滴の音だけが響く。
そして、やっと茨姫のいるという場所まで辿りついた。
そこは牢屋のようにも見え、もっと言えば茨が何重にも巻きついて、大きな塊となっていた。
ちょっとでも触れればすぐに怪我してしまいそうだ。
「どこ?」
「ここです」
声が聞こえたかと思うと、茨がまるで意志を持つかのように動き出した。
自分は動いてないはずなのだが、茨の中に吸い込まれていく感覚に陥る。
そこから現れたのは、クロードが先程姿を変えていた少女そっくり。
どうでも良いことかもしれないが、茨に包まれていたにも関わらず、少女の身体には傷ひとつついていない。
大きな目にやんわりとシフォンのような髪は肩までで、肩を出したドレスは少女の華奢な身体を主張している。
「あんたが茨姫?」
「トルチェと申します」
ゆっくりとした動作で茨の中から出てくると、クロードの頬に触れる。
それはまるで高貴な姫君のようだ。
だが、その足元は何も履いておらず、裸足で此処まで逃げてきたのだろうか。
「ありがとう」
「・・・茨姫」
そんな二人を見て、ドカッとその場に座り胡坐をかいた。
「少し、世間話でもしてから行くか」
「え?」
「例えば、なんでここにいるか、とか」
少しだけ下を向いたトルチェだったが、その場に正座をする。
トルチェが正座をすると、トルチェを守ろうと取り囲むように茨が動く。
「私はここで、オルレアンの乙女を待っているのです」
「オルレアンの乙女?」
静かに、トルチェは頷く。
「神の声を聞けたという、女性です。彼女はその神から聞いたお告げをもとに戦い、その戦いに勝ち、一人の男性に王位まで与えました。しかし彼女は敵に拘束され、異端審問を受けます。彼女の力を恐れていた敵国は、彼女を魔女として磔にしようとしました。けれども出来なかった。なぜか分かりますか?」
「いや」
「当時、処女を処刑することが躊躇われていたからです。彼女は処女だった。拘束された彼女は、大抵男性の服装を身につけていました。それは、女性として見られないようにです。彼女は女装をしろと言われました。そうすれば、罪を赦すと言われて。だから彼女は女装をしました。しかし、彼女を殺したがっていた敵は、彼女に再び男装させようとしました。そして、彼らは彼女の牢屋に忍び込み、彼女を犯しました」
トルチェの言葉に、思わずゴクリとする。
「彼女はまた、男装をしました。とうとう彼女は魔女として罰せられることとなり、火刑を受けたのです。彼女の遺体は砕かれ、ロザリオのいたセーヌ川で流されました。その時、川から白い鳩を見た者もいるそうです」
「・・・それとトルチェ、あんたとはどんな関係があるわけ?」
「私は彼女の魂を取り入れようと、ここに来ました」
「?」
何を言っているのか分からないが、トルチェは至って真剣のようだ。
きっとトルチェが話していた彼女というのも、大体は予想がついた。
きっと、気高き女性と言われている、ジャンヌ・ダルクのことだろう。
だが、それにしてもよく分からない話だ。
その魂を取り入れるとはどういうことか。
「あなた方にはきっと理解し得ないことでしょう」
「ああ。ちょっとわかんねえ」
その返答にトルチェはフフ、と小さく笑った。
そんなとき、口を開いたのはクロードだった。
「茨姫も、神の声を聞けるのです」
「・・・はあ?」
「自分達の存在が広まれば、必ず人間は滅びてしまう。茨姫にそう預言が下りてきたのです」
「預言、ねえ」
はは、と鼻で笑っていると、クロードはムッとする。
「信じなくて良いのです。こんな力、無い方が良いのですから。それでも私は、神に求めます」
「・・・・・・」
「最後の悪あがきと思っていただいて構いません。もう少しだけ、祈っていても良いですか」
「・・・ああ、好きにしな」
クロードから聞いた話では、トルチェは最新型らしい。
神の声を聞いて、そこにいてはならないと、政府から逃げてきたようだ。
まあ、あながちそれは間違えではないのだろうけども。
トルチェは茨に包まれながら、何かを祈っていた。
その内容などに興味はないし、どうこうしたってもう政府の元に戻ることは確定済みなのだから。
そしてようやく祈りが終わったのか、トルチェがゆっくりと顔を上げる。
トルチェは、涙を流していた。
「茨姫?どうしました?」
クロードが心配そうに牢屋に入ってトルチェの背を撫でる。
それに対して首を横に振ると、トルチェは涙を拭った。
「クロード、私たちも帰りましょう。神のお告げのもとに」
「・・・はい」
トルチェが牢屋から出ると、不思議なことに、それまで青々をしていた茨が、次々にしなっていった。
それは水分を失くしたようにも見えるし、太陽の光が遮られたようにも見える。
とにかく、しなしな、と枯れてしまった。
「それにしても、大人しく捕まってくれるもんだな」
「あなた方も私たちと同じですから」
「同じ?普通の人間だぞ?」
肩を揺らして笑うトルチェ。
「神が仰っていました。あなた方は白い鳩だと」
「鳩?」
「自由ということでしょう」
色々とわからない話ではあったが、納得したことにする。
トルチェもクロードも大人しく、全く抵抗しなかったため、すぐに連れて行くことが出来た。
連れて行く途中、先程のトルチェの言葉が気になった。
「預言ってのは、血で受け継がれるもんなのか?」
その質問に、トルチェは海の彼方を見つめながら答える。
「血もあるでしょう。しかしその場合、由緒正しき代々受け継がれてきた場合にのみ生じると思います」
「あんたは血じゃない、ってことか」
「私は人間ではありませんから。きっと人間は生き急いでいるのです。未来に早く到達しようとしすぎているのです。だから私たちのような存在を産み出してしまった。私達が言う事を聞く、都合の良い玩具ならば良し。もし牙を向く様であれば、私達はいとも簡単に破壊されてしまうのですから」
そう話すトルチェは決して悲しそうな顔はしていなかった。
全てを悟っているような、諦めているような、そんな表情だ。
今はコソコソとされている研究でも、きっといつかは当たり前になってしまうのだろう。
「茨姫」
「クロード、何があっても信じて。私は死なないわ。だから決して諦めないで」
引き渡し場所まで来ると、二人は最後の会話をする。
柔らかく笑うトルチェはクロードの手を握り、クロードもその手を強く握り返す。
ただそこから伝わる温もりだけが自分の味方だと、そう信じて。
「御苦労だったな」
「これで丁度五人だろ?捕獲終了。それにかかった期間は二カ月ちょい。これもクリアだ。裏切ってねぇし、これで俺も解放ってことだろ?」
「いや・・・」
「!?」
瞬間、ガシャン、と冷たい感覚が手首に伝わる。
自分が捕まったことくらい、容易に理解出来た。
男に睨みをきかそうとしたが、それよりも先にトルチェとクロードが男たちに連行されていった。
トルチェとクロードはルカたちと同じように目隠しをされて連れて行かれる。
「・・・あいつら、どこに連れて行かれるんだ?」
「ブラックボックスだ」
「ブラックボックス?」
手錠をされたことを確認していると、男二人に強引に引っ張られる。
ぐいぐいと引っ張られる為、手首が少し痛くなる。
「早くしろ、お前はこっちだ」
「茨姫を放せ!」
「何が姫だよ、馬鹿じゃねーの。お遊びはここまでだってんだよ」
ブラックボックスに連れていかれた二人は、またその中で別々の部屋に入れられた。
クロードは手術台の上に寝かされ、手足を固定されるとニット帽を取られた。
「良い子にしてなきゃダメでしょ」
聞こえてきた女性の声は、遥か昔に聞いたことのあるものだが、誰かなんて名前までは分からない。
「痛くても我慢してね」
「・・・・!!!!ぐあっ!!!」
クロードのお腹の真ん中を、麻酔をせずに雑に開けると、躊躇なく中に腕を入れていく。
「あら、前は気絶しちゃったのに。ちょっとは根性ついたみたいね」
嬉しそうにそんなことを言っている女性に向かって嘲笑えば、左足の太ももにナイフを突き刺された。
一方のトルチェは、目隠しをされたまま椅子に座らされていた。
「君は良い子だと思っていたんだがな」
「私は道具ではありません」
「おやおや、そんな生意気な口を聞くようになってしまったのか。困った娘だ」
パン、と乾いた音が鳴った。
ヒリヒリする頬を摩ることも出来ず、相手を睨みつけることも出来ず、ただじっと座っているだけ。
「道具なんかじゃない、兵器だ。優秀で有能な兵器、そうだろ?」
「いいえ。私達は・・・」
「五月蠅い、黙れ」
男はトルチェの髪を掴むと、背もたれに叩きつけたり右往左往に振り回した。
その後首をぐぐっと掴み、謝罪するようにと強制する。
「私達はいずれ、あなた方にとって最悪の兵器となるでしょう。人工知能は意思を持ち、自らの考えや価値によって世界を滅ぼす時が来るでしょう」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れェェェェェェ!!!!!」
ボキッ・・・・・・
コロン、と落ちた配線によって繋がれていた首は脆く弱かった。
男は呼吸を荒げながらその首を持ち上げると、別の男たちを呼んだ。
「直しておけ」
ぽん、とボールを投げるように首を男に向かって投げると、部屋から出て行く。
「あそこから出られるかどうかは、あいつら次第だ。忠実であれば良し。反乱するのであれば・・・まあそういうことだ」
「で、俺はどこに連れて行かれるわけ?また牢屋か?」
「友達もいるぞ」
「友達?」
トルチェたちとは別の部屋に連れて行かれ、急に感じた眩しさに、思わず目を瞑ってしまう。
白く広い部屋の真ん中、用意されていた椅子は三つ。
すでに二つは先約がいるようで、もうそこは埋まっていた。
「趣味の悪いことを」
「さて、お前には選ばせてやろう」
男は、別の自分用の豪華な椅子へと腰を下ろすと、足を組んでニヤニヤと笑う。
「ここでこいつらと始末されるか。交換条件を飲んで解放されるか。さあ、今ここで決めろ」
「・・・はっ。お前らが約束守るなんて、これっぽっちも思っちゃいなかったがな」
「さあ、時間はないぞ」
そう男が言うと、別の男たちが現れ、真ん中の椅子に座っている二人に銃を向ける。
「君のお友達を助けたいだろ?」
すでに気付いてるだろうが、捕まっていたのはあの二人。
「ラルト、綺麗に捕まってるな」
「うるせえ!」
「交換条件ってやつを、まずは聞かせてくれや。それからでもいいだろ?」
「・・・・・・」
男は余裕そうに微笑むと、「いいだろう」と答えた。
そして、三人はアイコンタクトを取る。
小さく笑ったのは、きっと男たちは知らない。