王城
7章 『王城』
『ああ、すっかり寝てやがる。』
可愛い顔してすやすやと。
本当、天真爛漫で元気な、あいつに似てる。
頭も良さそうで思いやりがあって育てた兄と言うのがどれだけ有能であったかわかる。
そう言えば、建国記念式典にアルメアに来たとき、幼い姫君に会ったことがある。
人見知りだが仲良くしてくれて優しい。
そして、母親に似たであろう可憐な美しさ。
その瞬間に恋に落ちていたのだと思う。
だから、アルメリアと戦争になってセイレーンが死んだことを知ったときは悔しかった。
セイレーンは好きだと言ってくれたのに、何の言葉も返せなかったことに。
王都に着いたのは10日が経ってからだ。
王城に部屋をもらえる身分だから、とセインに部屋を用意する。
せめて、1日でも休んでほしかったから。
1人、セインにどうしてもつきたいと言った女官がいたからつけてやる。
『あれが、弟とセイレーンの両方と同じ髪と瞳の色だから、だから、気にかかるのか?』
入浴して、自室でのんびりする。
俺が、本来軍に守られている俺が軍にいるのは弟を守れず命を落とさせた無力感からだ。
強く、強くなって大切な物を守らなければいけないから。
『殿下、皇の部屋に怪しい女官が侵入した模様。』
まったく、今日ぐらい休ませてくれないのかねえ。
神様という奴は。
いや、神様自体が無に等しい存在なのかも。
『えーと神様見習い。
僕の勘が正しければ…。』
僕は思うところを述べてこの縁はなかったことにしてほしいと懇願した。
このままだとセイレーンは傷つくことがわかっている。
わかっていたさ。
セイレーンと彼が幼いといえ、想いあってたことを。
だからこそ、再会してこれ以上傷つくのは見たくない。
今はまだ、正体をお互いに知らないからいいけど。
全てを知ってしまったらセイレーンは…。
『あたしは長き時間を生き過ぎ、大切な人たちを全て失いました。
本当はお兄様とお城に残れば。
お兄様を見捨てなければ死ねたのに。』
神様は残酷だ。
だけど、この運命に復讐するチャンスをくれたんだ。
皇よ。お覚悟を。
あたしから、お兄様さえ奪わなければ、あたしはまだお兄様の作り上げた嘘の世界でいたわ。
あたしから、最後の家族を奪わなければもっと、長生きできたわ。
アルメリアの紋章が入った短剣。
兄は最後に王族としてセイレーンが正統な身分を示せる物を用意していた。
だけど、もう、二度と使うことのない身分だから。
『やめろ。』
アドリアンの兵士に止められる。
もしも、失敗に終わったそのときは…。
もう、二度と来ることもないと思っていた生家で。
ここなら、怖くない。
父様たちが迎えに来てくれるから――――。




