未来へ
33章「未来へ」
『あたし…、伝えたいことがあるの。』
あなたのことが好きだった。
小さい頃から、本当に。
今でも、愛してる。
その告白を聞いてすぐに彼女を抱き締める力を強める。
俺も、愛してる。
本当は今日、ここに来たのも、メイドの彼女に
セイレーンが外国に出ようとしていると聞いたから。
まんまと罠に嵌まったわけだ。
『アルメリア、並びにアドリアンの国民よ。
今日、ここにアルメリア王国第一王女セイレーンと、アドリアン皇国皇太子ローランドの婚約が正式に決まったことを発表する。』
16年前の誓いを知っているアルメリアの国民たちは新たなる君主の恋を温かく見守る。
アドリアンの国民は属国扱いだった王国の王女が嫁いでくることでまた、アルメリアの国民を我が物顔で使役できると考えた。
『えー、あー。いっておくが、アドリアンの国民がアルメリアの国民を使役することは今後、あってはならないことだ。』
もし、行ったときは極刑にするから覚悟しろ!
俺、愛する妻を泣かせるやつは嫌いだ。
だから、おいたはだめ。
そう恥ずかしげもなく、宣言してくれたお陰で人種の垣根を越えてひとつの国に纏まった。
国名はアルメリアの言葉でも、アドリアンの言葉でも、〈虹〉の意味をもつ言葉。
国王夫妻が出会ったとき、一番きれいだと感じられた虹を、そして、その虹をきれいだと思える心を大切にしたいと語ったから。
『セイン、アポロン。夕食よ。』
あの、新国家樹立から数年。
あたしとローランドの間に二人の子供が生まれた。
二人はアルメリアとアドリアンの血筋を色濃く残している。
そして、何となくあたしたちを後押ししてくれた。
そばにいてくれたとあたしたちが思える二人の名前を付けた。
逃げ出したいと思ったこともある。
だけど、今は。
逃げ出さなくてよかったと思う。
大切な家族を失って一人、泣いた夜があった。
大切な家族が増えて皆で、笑った朝があった。
痛みは消えず、想いは募る。
それでも、未来は輝いていると知れた。
繋がる命の連鎖。
叶えられた幸せの果てに人知れず流された涙がある。
『ローランド。あたしね、もう、逃げ出さないことに決めたよ。』
あなたの愛を信じられる。
だってこんなにもあたしを大切にしてくれる。
だってあたしたちのために泣いてくれた。
あたしも、彼のために一緒に泣いた。
悲しみは消えない。
だけど、悲しみも喜びも分かち合おうと決められた。
ねぇ、過去のあたし。
諦めないで。まっすぐ歩んで。
逃げたいのはわかるけど、幸せを目指して。
未来へ――――。




