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エスケープ  作者: 明日奈 美奈
本編
31/33

紫陽花の君

31章 「紫陽花の君」

『一曲お相手ねがえませんか?

紫陽花の君。』

ヒースから声がかかる。

紫陽花の花言葉を知って今のあたしのことを例えているのだろう。

ええ、光栄だわ。ヒース様のお相手だなんて。

落ち着いた物言いをしてみる。


『紫陽花だなんて酷いですわ。ヒース様。』

怒って見せたら、ごめん、と返して、それだけ妖艶な魅力があるってことだよ、なんて囁く。

あたし、こんなに強引でよかったのかしら?

だけど、ローランドは王たちの約束を知らない。

話すわけいかないよ。


『ああ、紫陽花の君の婚約の話だね。

父上がその場にいたから子供の頃、王女様の犠牲なくしてこの国は成り立っていないと、聞かされた。』

本当に酷い約束だと思ったよ。

皇が付け加えた条件がなければ。

愛し合っていないのなら、叶えられるはずもない約束だからね。

さぞかし悔しいだろうが、それが当事者の選んだ答えだろう?

皇は何も言えないって。

例え、叶わない友人との夢を抱えたまま死を迎えることがあっても、彼は後悔しないだろう。


『ええ、そうだといいと思っているわ。

彼はあたしに未来を選ぶ権利をくれた。』

あたし、彼のその思いを叶えられそうにない。

悲しげに息をつくセイレーン。

ローランドに想いを告げる勇気もなければ、離れる勇気もない。

これは一計を案じた方がいいだろう。


『皇太子様、これは俺の妹のティアナだ。

これはセイレーン王女のような気品も勇敢さも持ち合わせていません。』

『ティアナ=レイチェルですわ。

兄について今日はこちらに参りましたの。』

それにしても、お兄様、少し酔いすぎですわ。

妹のあたしに気品がないなんて。

本当は誰のことも兄とは呼びたくない。

だけど、ヒースは親が戦争で亡くなって兄に育てられ、その兄さえ亡くしてしまったあたしの境遇を家族全員で泣いてくれてあたしを、ありのままを受け入れてくれたレイチェル家の長子。

あたしのために泣いてくれたから家族の一員になりたかった。

愛する人を想って泣いてるあたしと一緒に泣いてくれたから。


『ヒース様、あたしの皇子への告白が終わったら、旦那様にあたしを養女にと望んでください。』

あたし、レイチェル家の、ヒース様の妹として過ごしたい。

あたしのために泣いてくれたから。

お父様、お母様、お兄様、ごめんなさい。

あたし、温かく迎え入れてくれた家族に移り気してしまったわ。

そちらに向かうと誓いを立てたのに、浮気して、もう少し生きたいって、そう思ったのよ――――。

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