秘密
24章「秘密」
『このような非公式なお願いに上がった私をお許しください。
しかし、可及的速やかな対処を求めるべきことです。』
『して、その用件とは?』
かしこまって改まる隣国の女王。
私とアドリアンの二人の皇子どちらかとの婚約を解消してくださいませ。
父との約束はどちらかだったはず。
いま、王太子のみが残るアドリアン皇家の皇子と私の婚約がまとまれば不本意ながら政略結婚と見られても仕方ない。
世間に地位のために隣国の皇太子と結婚したなんて思われたくない。
私は一人でも頼ってくれる民草がいる限り力を賭して救ってみせる。
だから、傀儡皇妃にはならない。
誰がお飾りの皇妃で人生を終えるものか。
私は、アルメリアで最後の王となる。
『最後の王とはどういうことだ?』
『私は結婚する気はおろか、子供を持ち王位を継がせる気はございません。』
あたしの宣言に目を見開く皇。
しばらくの沈黙の後、国は、どうするのだと問いかけてくる。
愚問ですね、と笑う。
答えは決まっている。
国民の国民による国民のための政治が行われる。
永世中立国としてどこの国の利害にももう、属さない。
貴族、民草問わず優秀なものは高等な教育を受けられるようにする。
そして何より、愚鈍なものを貴族や大臣などに据える気はない。
私はどこかの愚鈍な皇と違って友を殺した臣下を持つ気はございません。
『アルメリアとの縁はなかったこととする。
本人同士が思いあっていなければ不幸になることは見えている。
イルディフォンスともそういった約束だった。』
『…それはどういうことですか。』
そこであたしが聞かされたのは、兄も聞かされていなかった正しい父と友の誓い。
あたしはあたしとローランド、当事者の意思を尊重した誓い。
当事者の意思を無視して誓いの言葉を公衆の面前で発した父を止めてくれた人物。
あたしとローランドの幸せを願ってくれた人。
『あっ、…あたし、あたしも誓いを立てたんです。
とても酷い誓いを。
憎しみにばかり囚われて。』
泣きながら、兄のためにも復讐をして命を絶つと誓ったことを。
悪いのは皇ではなかったのに。
あたし、ローランドに伝えなきゃいけないことがあるんです。
あたしはアルメリア王女であると同時にひとりのお転婆で気が強くて辺境の村で若い父親に育てられた村娘でもあります。
あたしの言葉に皇は面食らっていた。
『そなたは兄の手によって養育されたのではなかったか。』
『兄が記憶を失ったあたしのために嘘をついて守ってくれたんです。』
兄は父にあたしを守ると誓いを立てたから。
悲しそうに明かす少女に罪悪感が浮かぶ。
ありがとう。そんな大事なことを教えてくれて――――。




