未来に
23章「未来に」
『イル、将来、俺かお前のところに子供ができてそれがどっちかが男でどっちかが女だったら、娘を持った方が息子を持った方に嫁入りさせよう。』
『面白そうだ。乗った。
どっちかが早く死んでも有効だからな。』
イル、それが嘗ての親友の名前だ。
本名、イルディフォンス=アルメリア。
アルメリア王国王太子だと知ったのは約束のあと。
互いに偽名で留学していた国で出会った。
イルが下級役人の子、俺が商人の子。
互いに近い身分設定と言うのもあって仲良くなった。
まさか、敵対国の王太子だなんて。
思っても見なかった。
卒業まで互いで取り決めて会わないようにした。
それもこれも友人を守るため。
互いに国に戻り王太子と皇太子として日々を過ごす。
数年がたった。
アルメリアの王が死んだと聞いた。新しい王には王太子が即位するのだとか。
その年の暮れ、アドリアンの皇もアルメリアの王を追いかけるように死んだ。
新しく即位することが決まった。
即位式の日、俺の前にイル、イルディフォンスが姿を現した。
『アルメリア王国王、イルディフォンス=アルメリアはかの時の約束をもう一度。
我アルメリア王家と貴国アドリアンとの未来の縁組みを。』
『ああ、イルディフォンス。わかっているよ。
イルディフォンスの娘なら器量良しだろうし。息子なら立派な武人になることだろう。』
健やかにアルメリアで育ち、アドリアンと縁組みをするだろう見目のよい若い夫婦を思うだけでほほえましい気持ちでいっぱいになる。
そんな未来を一緒に見れると思っていたのに…。
どうして…。
どうして先に逝ってしまうんだ。
娘を第一皇子にくれると手紙に書いてくれたではないか。
なのに…。
『アルメリア王国王イルディフォンス=アルメリアは誓う。
この先、子供を持ちそのいずれかをアドリアン皇国皇デメティル=アドリアンの子供のいずれかと結婚させると。』
『この誓いは互いが愛する相手でない限り無効となる。』
未来に生けるものの運命を決めてしまうのはどうかと思うが、誓いの言葉を決めてきていた友の思いに報いたい。
友だって子供には幸せになってもらいたいだろう。
秘密裏に示し合わせてアドリアンの二人の皇子とアルメリアの王女を会わせる手筈だった。
結局、アポロンが会う前にアルメリアの王族が全員亡くなったとされたけど。
あたしはアルメリア王がアドリアン皇と子供たちの縁談を即位式で約束したのだと昔、夢物語でお兄様に教えてもらった。
優しい未来を造ってほしい。
兄からのたったひとつの願い。
だけどね、セイレーンには優しい、愛してくれる人と幸せになってもらいたいんだよ。
幼いあたしにはわからなかったけれど――――。




