演説
20章 「演説」
『民草の声を聞くべきですわ。
少なくとも、あたしが知る君主と言うのは民草を想い民草のために最善を尽くす仕事。
欲に駆られて私利私欲のために動くものではない。』
玉座の上でぐうたらだらけている皇に苦言を呈する。
ああ、もう。このままでは父様と母様、お兄様の命をかけて守られた民草に不自由を強いてしまうわ。
あたしの苦言なんて聞きやしない皇にアルメリアの統治を任せてはいけない。
こうなったら、あたしは覚悟を決める。
『なんだい。皇家からの大切な知らせとは?』
わらわらと宮殿の前に集まる民草。
あたしはアルメリアのために命をかけると決めた。
たとえ、それがローランドと袂を別つ決断だったとしてももう、失うものを無くし尽くしてしまったあたしは進むだけだ。
ドレスとティアラや宝飾品は兄が家の地下に埋めておいてくれたものだ。
兄は何かあったら、結婚するときまで村に帰ってくれるなと耳にタコができるぐらいあたしに言い含めた。
その意味は長らくわからなかったのだけれど、兄はどうやら母からあたしの結婚のときにと託されていたようだ。
メイクも着付けも全てを自分でこなす。
『皆さん、お静まりを。』
テラスに歩み出る。
いま、あたしはアルメリアの次代の王としてこの場に立っている。
ストレスで今にも吐きそうだけど、自分に負けたくない。
『あたしは、…私はアルメリア王家王位継承権第一位、セイレーン=アルメリア。
10年前、国が危機に瀕した折りに当時、王太子であった兄に連れられ逃げ延びました。
国を追い詰めたるはアドリアン皇国の財務大臣、ネッケル。
国を追われ、記憶を無くし、父と名乗った兄に育てられた私から、ネッケルは兄まで奪った。
皮肉にもそれが真実を思い出すきっかけとなった。
名をセインと偽り、旅をして王宮に入り込み、皇の命を狙った。
真犯人がネッケルだとわかりはしたものの、国の人間可愛さにネッケルをただの罪人として裁きを下した。』
真実を話す。
あたしは、生きている。
死んでなどいない。
そして、兄の名誉の回復。
『私は新たなアルメリアの君主として、アルメリア王家のアドリアン皇国からの独立を宣言する。
もとは一人のアドリアン人の私的な攻撃によって王家は長らくの間、後継者不在になっていたにすぎない。
それに、アルメリアの皆も知っていよう。
アドリアン皇国はアルメリアをきちんと統治などしていなかった。
何においても、アドリアンを優先していた。』
言ってしまった。
あたしの本音を。
あたしは知っているんだ。
デイネストさんやおばさんたちがアドリアンが統治し出してから犯罪は増えて、アドリアンの兵が率先して助長させていると。
市井で育ったから、国の現状について明るい。
それがあたしの強みだ――――。




