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エスケープ  作者: 明日奈 美奈
本編
18/33

祈り

18章 「祈り」

『父様、母様、お兄様。

セイレーンはまだ、民として生きるか、王族の生き残りとして生きるか決められずにいます。

ですが、きっと、そのうちに決めますからね。』

毎朝、廟に詣でては祈りを捧げる妹。

そして、その奥でじっとその様子を眺め、奥の墓石にそっと花束を置くのはアドリアンの皇太子。

アポロン、と寂しそうな顔で呟く。

アポロン、お前が生きていたらもう、14になるんだね。

アポロンは俺に似て優秀で顔形だってかっこよくなっただろうから、モテまくっただろうな。

兄弟仲良く成長してふざけあったりもしてさ。

そんな未来でさえ、想い描けないようになったけど。

アポロン、生まれ変わって来るなら、俺のところにしろよ。

今度こそ守るから。


『あらっ?ローランド、ここにいたのね。

アポロン。アポロン王子のこと?

いつも、ローランドが可愛がっていた弟よね?』

彼女はアポロンが死んだことを知らない。

彼女たちが隠遁生活を送るようになってから起きた痛ましい事故だから。


『町で馬車に轢かれたのさ。

俺を庇ったばっかりに。』

悲しい?

言っちゃいけないと思っている。

父も母もやっと立ち直って来た。

だけど、未だに廟に詣でていない。

だから、こうして花の絶えないアポロンが寂しがらないように毎朝廟に詣でている。

ここでセイレーンを見かけるようになったのはセイン王子の墓ができてからだ。

セイレーンなりに亡くした家族を悼んでいるのかな。

セイレーンはもう、亡くす家族すらいない。

俺たちアドリアンの人間のせいで。

だから、セイレーンに告白なんてできないと思っている。

だけど、セイン王子は俺に想いを告白しろなんて夢枕に立って言うんだもの。

まだ、心は決まらない。

だけど、アポロンのことを誰かに話したのははじめてだ。


『アポロン王子、初めまして。

隣国のアルメリア王国王女、セイレーンよ。

お兄様から話は聞いてたわ。

安らかにお眠りなさいね。』

驚いた。

セイレーンが他国の王族にする礼をとっていた。

確かに、幼い頃からセイレーンは礼儀正しかった。

だけど、控えめなそのなりはどこかの商家の娘かと思っていた。


『ありがとう。敵国の第二皇子のために礼をとってくれて。』

いいの。と呟くセイレーン。

だって、友好国のアドリアンの民には最大限礼を尽くせって父様の受け売り。

優しく微笑んで言ってくれる。

アポロン、お前、天国でセイン王子にきちんと礼を尽くせよ。

アルメリアの王族がお前のために祈りを捧げてくれたのだから――――。




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