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エスケープ  作者: 明日奈 美奈
本編
17/33

天国

17章「天国」

『神様見習い、アポロン王子に会いたい。』

アポロン王子は死んでから、やっぱり生まれ変わってる?

僕と同じように。


《いいえ、アポロン王子は転生を拒否していますね。》

アポロン王子とはまたなつかしい名前だ。

とりあえず、天界政府に入るために事務から仕事をこなしてきたけど、まさか、昇格試験の課題が隣接の国の王子だとは。


『どうして、アポロン王子は転生を拒否しているんですか?』

わからなかった。

どうして天国で過ごすことを決めたのか。

まだ、転生をした方が良いのではないだろうか?


《アポロン王子は失うことが恐いから。

転生で記憶を失うことを怖れている。》

大切な人を守って死んだことは辛くない。

とても慕っていたから助けたいと思った。

それは愛がないとできないこと。

たとえ、命がなくなってもいいと思っていた。


『だけど、だからこそ幸せになって欲しいと思っているよ?

ローランド王子は。』

兄様、そんなこと言わなかった。

ずっと、僕のことを悲しんで泣くことをしない人だったから。


『悲しまない家族なんて居ないのに。』

どうしてこの人はこんなにも欲しい言葉を言うのだろう。

セイン=アルメリアは両親を亡くして…。

だから、だから、か。

残される悲しみを知っているから。


神様、僕もこの仕事が終わったら、転生したいです。

転生してもう一度生きたい。


天国で神様に死んだことを教えられて転生ができると知ったけど、保留して天界政府の事務職から神様見習いになった。


《天界政府に伝えておきましょう。

きっと、アポロン王子に届くはずです。》

これしか言えない。

今の僕はアドリアン皇国第二皇子、アポロン=アドリアンではない。

事務職から叩き上げの神様見習いなのだから。


天国に来てから思ったのは天国もいろいろ大変なんだってこと。

神様について一から勉強しているけど、まだ、難しいパターンの仕事はできない。

天界政府で今はパートタイムで働いているけど、自立とかはまだ、考えられない。

狭いアパートで同僚とルームシェアしてて、毎日がばか騒ぎして。

だから、ごめんね。

お兄様、僕はお兄様にもう一度、人を愛する温もりをあげたいよ。

これが僕の最後の願い。

そして、生まれ変わって、お兄様とセイレーン王女のような大切な人を見つけたい。

だって、前世では恋もしたことがないから、お兄様たちの後押しも大変なんだもの。

だから、お兄様、素直になってセイレーン王女に好きだって言ってあげて。

お兄様とセイレーン王女の再会が天国にいる僕からのプレゼントだから――――。






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