想い
16章「想い」
『あなたは、…セイレーン?』
夢で見たのは髪の短い、再会した頃のセイレーンだ。
セイン=アルメアを名乗ったときのセイレーンその物だ。
『顔立ちは似た兄妹なんだ。
君の知るセイン=アルメリアだ。』
すごい。
ローランドの考えていることがわかる。
これが、死後の御霊の力ってやつか。
早く、伝えないと。
『どうして夢なんかに。』
僕がもう、この世にいない人間だから、かな。
せめてもの救いは僕が死ぬところを、深手を負ってまで戦い抜き、セイレーンを、娘を守ったことをセイレーンが知らないことかな。
あいつのことだ。
きっと、もっと僕のために泣いてくれる。
だけど、悲しませるために守った訳じゃない。
幸せになってもらうためだ。
『神様見習いに夢枕に立たせてもらった。
セイレーンのことで言いたいことがある。』
神様見習い?
というか、夢枕に立つって幽霊?
やっぱり、死んでいたのか。
『とりあえず、セイレーンを幸せにしてくれよ。
僕はもう、守れないし。
大切な娘だから。』
どういうことだ?
セイン王子はずっとセイレーンを守っていた?
どうして?
『妹を狙うやつらの噂には耳を開けてたから。』
噂をしているところに居合わせて事実を知る。
セイン王子とセイレーン王女の亡骸はまだ、見つかってないみたいだったから。
『だから、いつかはセイレーンを逃がすか正式な身分を回復してやらないとって思ってた。』
セイン王子はどうしてそこまでセイレーンのことを大切にできるのか。
妹のために命をかけるってアポロンと同じじゃないか。
あいつは、まだ、幼かったのに…。
『アポロン王子に会えたら、伝えておくよ。
君がアポロン王子を大切にしてたって。』
大丈夫なのか?
俺はアポロンに恨まれてないのか?
だって、アポロンの命を奪ったのは俺だ。
俺さえ居なければ、アポロンは生きていられた。
あのとき、死んだのがアポロンじゃなく、俺だったらアポロンは皇太子になれた。
『わかった。
それも伝える。』
身体が透けていく。
もう、タイムリミットか。
これで、セイレーンが幸せになってくれるといいけど。
『…リアルな夢?
でも、あれがセイレーンの兄。』
セイン=アルメリア王子と会ったのはアルメリア王国建国記念式典の会場だった。
とても凛々しく軍のトップとしての威厳が漂う人だった。
だけど、どこからか彼をお兄様と呼ぶ声がするとにこやかに手を降っていた。
彼の死の後にときどき会っていたセイレーンが彼の妹で彼と共に亡くなったと知ってどれ程驚いたことか。
言われてみれば、これが初恋だった――――。
うーん。
夢枕に立ったセイン(御霊)ってホラーチックになってる。
『セイレーンを幸せにしないと祟るぞ~』
なんて言わせてもいいかも。




