夢
13章 「夢」
『セイン、この国はもう、ダメかもしれない。
私と妻はこの国と運命を共にする。
だが、まだ、幼いセイレーンのことが気がかりでならない。』
セイレーンだけでない。
セインだって我が子でまだ、15だ。
こんなことを言ってまでセインを戦場から遠ざけたいなんて。
『…父様、セイレーンは僕にお任せください。
君主たるもの臣民を守り、導くが定め。
僕はその君主の最後の願いをかなえるために任命いただいた騎士。』
セイレーンはこのままでは親の愛を知ることなく育つだろう。
だけど、僕がいる。
僕が父様と母様から受け取った愛を教えることができる。
隣国に攻められるぐらいだ。
国はもう、ダメだろう。
王を失い、新しく年端もいかない若造の僕なんかが王になってどうする。
国民一人も養う自信がない。
『おお、まだ若いそなたに酷なことを言ったこの愚かな父を許してくれるか?』
ええ、もちろん。
答えたいのに言葉が出ない。
結局、涙ばかりが溢れる。
死なないでください。
生きて二人が幸せになるところを見ましょう。
言えない言葉があった。
『僕は誓う。
父であるこのアルメリア王家最後の王に。
僕は妹をこの国の王女を守る騎士になると。
父と偽り守り続けていくと。』
頼もしい父親だ。
お前になら、セイレーンが嫁に行くまで任せられる。
本当は、セイレーンを自分の手で嫁に出したかった。
セイレーンの結婚相手を一発ぶん殴ってさぁ、父様ってアイツそっくりに怒られて。
きっと、幸せだろうな。きっと。
だけどアルメリアの王たるもの国民を見捨てては逝けまい。
『夢を、アルメリアの新しい未来の命をそなたに託そう。
ことが終わり次第、アルメリアの王子として名乗り出るのもよし、そのまま暮らすもよし。』
ああ、そうだ。
父様はアルメリアの未来を嫡男、セインに託した。
そして、お兄様は記憶を無くしたあたしのために身分を回復することもなく死んでいった。
あたしが夢に見て、思い出した最後の記憶。
お兄様が誓いをたてたあの時のこと。
『お兄様の遺品はこれだけではないわ。
お兄様はあたしに父様と母様の愛をくださった。
あたし、愛を知らない人間になるところだった。』
そう。
もう少しでついうっかり、なんて言えないような歪んだ性格になるところだった。
それを兄が自分の人生を犠牲にして教えてくれた。
お兄様だって、まだ25。
これから人生、どのようにでも生きられたのに。
お兄様の夢はあたしが育つこと。
あたしが幸せになること――――。




