剣術
11章 「剣術」
『俺はこれでも、アドリアン軍のトップ。
それをわかってて言うんだろうな。』
とたんに青ざめるネッケル。
アドリアン軍のトップということは、アルメリア騎士団のトップの15のセインと張り合う地位だ。
それだけ、ローランドは地位を上げた。
『セイレーン。君を守るよ。
いつか、アルメリアとアドリアンの戦争が僕の本意じゃなかったって伝わる日まで。』
そうだ。もう一度やり直すんだ。
2つの国が手に手を取って一緒に歩む未来を描く。
せめて、生きてほしいと望み妹を突き放すことで庇い、守ったあの、騎士の代わりに守りたい。
『ローランド、あのね、あたし。
お兄様を、お兄様のお墓だけでも父様と母さまの横に作り直したい。』
先代の皇が王子と王女が生きていると知って自分が目眩ましのために作った霊廟。
王子と王女の分を壊していた。
納めたい物があるの。
それはセインが父に誓いをたてた時、騎士として誓いの証にしたものの片割れだ。
本当は長剣と対になった物ではあるが、長剣は兄がセイレーンを育てた村で兄と埋葬されていることだろう。
『セイレーン、それはセイン王子が残した唯一の遺品だろう?
セイレーンがセイン王子を偲ばれるようにと。』
セイレーンは寂しそうに笑って、首を振る。
それは違う。
あたしに残されたものはそんなものじゃないと言う。
『お父さん、セイレーンは結婚相手を見つけて来ましたよ。
お父さんに負けないほど腕っぷしが強くてあたしを守ってくれる。』
セイレーンじゃないかい。と、声をかけてきたのはお向かいに住んでいるおばさん。
おばさん、お父さんをここに、お父さんが気に入っていたここに埋葬してくれたのね。
ありがとう。お父さんきっと、喜んでる。
『セイレーン、あのあとどうしてたんだい?
見かけないから、心配してたのよ。』
お兄様はアドリアンの兵士ではなく、賊が入って殺されたことになっている。
セイレーンたちがまだ、隣村にいたとき、旅の行商から聞いた話だ。
『…あたし、お父さん殺した賊を追いかけて村を出てから旅をしていたのだけど、彼、ローランに出会って。』
嬉しそうに、お父さんに報告なんだ。
あたしたちが結婚するって。
おばさんは初々しい二人にすぐ、その場を立ち去った。
『こんなあばら家で暮らしていたのか。』
セイレーンが帰る前にどうしても持っていきたい物があると立ち寄った家。
あたしも最初、ここが家なんて信じられなかったわ。
夏場は風が吹き抜けで涼しいけど、冬場は吹きさらしですきま風が入って寒かったわね。
まあ、記憶のないあたしはここが本当の家だと思ってたけど。
でも、剣術だけが身をたてる道ではないと教えてくれたのは兄だ。
その兄を否定されたようであまりいい気はしない――――。




