告白
10章 「告白」
『…あの時、アルメリアとの戦の時、余は毒を盛られ、意識が混濁していた。』
実際にあの時、政治を動かしていたのは大臣だった。
大臣はアルメリアに戦争を勝手に仕掛けて目覚めた時にはアルメリアは滅亡していた。
皇としては臣下が勝手にやったことでも責任がある。
しかし、国民はアルメリアが滅亡したことに歓喜の声をあげていた。
仕方なくアルメリアを諸悪の根元とし、裏でアルメリアの嫡子がいないか探らせた。
その結果、皇子と王女が生き延びていなかで暮らしていることを十年の歳月を経て知った。
すぐに迎えの使者を寄越したが、そんなことになっていると露ほども知らなかった。
『あなたは罪も無きアルメリアの国民をそんなふうに扱った。
いくら、父と旧知の仲だとしても、許せない。』
敵意を剥き出しにしたあたしに皇はあたしになら正統な復讐の理由はあるし、誰も咎めはしないと言う。
それを言うなら、あたしを死なせて。
目の前であたしが死に、本当にアルメリアが滅亡すればあなたは一生罪悪感に苛まれることになる。
逃げようとしても無駄だと。
『アドリアン皇よ、あなたには退位をしていたただく。
そして、俺が皇になる。』
ローランドならきっといい皇にお成りでしょう。
幼い頃、町へ出掛けて困っていた国民を助けたローランドに言った言葉だ。
それは予言として体現された。
あたしだって、行き倒れになる寸前のところでローランドに助けられた。
『皇に退位して貰っちゃぁ困るな。』
ネッケル財務大臣だった。
やはり、聞き耳をたててやがると思った。
俺がめったに寄り付かない王城に帰ったから。
確か、若い頃はプレイボーイで有名だったと聞くが。
『ネッケル、何の用だ?
皇の私室に無断で入るなど越権が過ぎる。』
ローランドのそれは皇の言葉遣いそのままだ。
父も昔、こんな口を兄に利いていたような。
あれ?何か、忘れてる?
『麗しの王妃陛下の唯一の姫君を戴くまでは皇に退位していただくわけにいかない。』
皇を裏から操っていたのはこやつだったか。
セイレーンの短剣を持つ手が震えている。
今にも倒れそうなほど顔面蒼白だ。
『セイレーン、大丈夫だよ。』
兄と同じ言葉を優しく吐くとあたしに向けられた剣を自分の剣ではねのけてくれる。
あたしは疲れと緊張もあってかその場に崩れ込んだ。
フワッと浮遊感に包まれる。
『疲れたかい?
無理もないね。
でも、もう大丈夫だから。』
ローランドのその言葉で安心して眠りにつく。
安心して眠ってくれた。
それが嬉しくてさらに言葉を紡ぐ。
聞いていないことも承知の上で。
『セイレーン、大好きだよ。』
その言葉はセイレーンには届かない。届けてはいけない。
切なくその小さな囁きは消える――――。




