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私の履歴書

作者: 蓼りょう

僕は今まで幾つか仕事を転々とした。

今回書いた仕事はもう数年前の事だが、昨日の記憶より鮮明に割りとハッキリ覚えている。


歳のせいか?


当時から記憶力が乏しくて、随分仕事を覚えるのに苦労した。しかし今、書いているうちにどんどん思い出されてきた。最初は、ボクシングをされてる先輩の話を書くつもりだったのだが…。




数年前の話にな板金加工の工場に勤めていた事がある。

屋根に乗っている軒先、雨押さえ、棟といったものを銅と鉄で層をなして出来ている板状のもので出来ている物を裁断し、各々の長さや形に加工していく。

力仕事かつミリ単位の繊細さも必要な大変な仕事であった。

鉄板も屋根材なので、色々色がある。

メーカー毎にも番号が違う。

黒と言っても、やや銀色がかった黒と真っ黒もある。それをまず覚えないと指示が理解出来ないし、動けない。これは現場で暇なときに覚えるか色見本を借りて帰り、宿題として覚えていくしかない。

よく出る色は何とかなったが、あまりでないやつやよく似た色は区別が付かなかった。


お客さんの注文の仕方も癖がある。

「黒」と注文してきても、その人の場合の黒は「銀黒」だったりと見た目同様皆さん個性があるので、気を付けねばならない。

あと鉄板も厚みもいっぱいあるので、それは感覚で覚えねばならない。

よく出るのが、0,30㎜、0,35㎜、0,40㎜だった。

読み方は、れいさん、れいさんご、れいよんと読んでいた。


この仕事の職業病と言っても良いのが、腰痛である。鉄板は持ち上げる様に持つと折れ曲がってしまう。なので、鉄板がスリッターという鉄板を切る機械の台から下ろすのに手で持ち、鉄板が下ろされる動きに逆らわずにふわっと下ろす。

鉄板を運ぶ斉にも持ち上げ過ぎても折れ曲がるので注意せねばならない。とにかく仕事の基本が中腰なのである。なので大半の方が腰に負担がかかり痛めて、病院通いや休職、最悪は僕の様に退職へと追いやられる。なので持ち方一つにもコツがいるのである。

作業の最初「トン・コイル」と呼ばれる、鉄板がコイル状に巻かれたものから必要な長さを裁断し、曲げる機械やさらに小さく裁断し加工したりする。「トン」はまさに重さの単位のトンである。


機械でガッシャン、ガッシャンばかりしている訳ではない。

「差し金」を使い、「けがき」で印をつけて線を引いて金切りばさみで切っていく。

記憶が曖昧だが、確か左の方が使用する方だったと思う。それは、右利きだと右の方がやや折れてしまい断面が汚ないためだ。


これらの仕事を先輩方は丁寧に教えて下さった。

その期待にそえず腰痛の為にろくに挨拶もせずに辞めてしまった。

しかし、先輩の一人のボクシングのトレーナーの方と付き合いがひょんな事から復活したのである。

それはまた別に機会を譲ろう。

本当に短い間だったが、朝はパン屋のサンドウィッチと飲み物が支給される素晴らしい会社だったので、本当に残念であった。

僕は食べる時間がないので妻にプレゼントしていたが、来る日も来る日もサンドウィッチで嫌がる様になってしまっていた。人間はどこまでも贅沢に慣れてしまう生き物だ。


今はもう腰痛もお陰様ですっかり良くなったが、またその会社へ行きたいかと言われたら、やっぱり無理だろうと思う。なぜなら年のせいであの頃より一段と物覚えがよろしくない。

以前にも増して怒られるのは目に見えている。

サンドウィッチを食べてあの当時を懐かしむだけで充分である。




子供の頃、大人はもっとしっかりしていると思っていた。僕はもうすぐ42歳となるが、中身は多分中2くらいとそう変わりない。

何を得て、何を失いながら今日という島に漂着したのか?

ポツリポツリと思い出しつつ書いていきたいと思う。

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