表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

2:使い魔最年少

―…ジークの仕事のお手伝い!



緊張して耳と尻尾に力が…。か、緩和出来ない…。

猫耳がピクピクして、尻尾がピーンとなりっぱなし!

私はそんな自分の状態のまま、ジークの職種内容を思い出していた。


…んとね、ジークの仕事を簡単に言うと、召喚系の時空管理なの。

膨大な魔力と術式の組み合わせの知識とセンスが必要とされる職業で、召喚系統の中でも少し外れた職業なの。

対象は精霊や魔族、霊的なものではなくて、それこそ"異次元"級。他次元が主な対象なのね?


だからと言っては何だけど、膨大で良質な魔力持ちのローラの度重なる破壊活動も今のところは始末書等で済まされているの。

それにローラがジークの仲介役をやったようなものだから、そういう点でもポイント加算されているみたい。

ローラは制御さえ何とかなれば優秀な魔術師としての力は十分あるから、手放すのは実に惜しいって事ね。


それと、王家の要求としては意思の疎通の出来る自分達と同等の…人型の生物体みたいだけど、色々と難しそうにゃぁ。



「ララ?」

「…にゃぁ!」



…つい、自分の思考に没頭していたわ。いけないいけない…。ジークのお話をちゃんと聞いておかなきゃ!



「にゃぅ…にゃーにゃ!」

「ははは…ララ、力を入れ過ぎだよ。猫の言葉になってきてる」



そう言いながらジークは私の頭を撫でてくれた。撫でられる度に耳がピコピコと寝たり立ったり、まるで私の分身のよう。



「ララ、良かったな!」

「おめでと~、ララ!」

「シィン、ローラ、ありがとう!!」



いつの間に私の横に来たのか、二人に祝福の言葉を貰った。



「じゃ、ルーウェンに挨拶に行くか」



私はそんなジークの言葉にくっ付いて研究室を後にして、もう一階上の部屋へと向かった。向かった先の部屋には、ジークやローラの上司たる人物、"ルーウェン"さんが居るのだ。







「―…ジークだ。入るぞ」



ルーウェンさんの仕事部屋まで来て、ジークは一方的にそう宣言すると慣れた手つきで扉を開いた。

もう、彼等の中ではこれが通常なのね。この塔の常識なのだろうな、多分。


そして部屋の中に入ると、鼻筋の通ったやや神経質そうな細い面を書物に向けた男性と、彼の使い魔である猫の少女が静かに部屋の中に居た。

使い魔の猫の少女は"ロロ"って言うの。本当は"ロネリア"と言う名前なんだけど、愛称で良いって言ってくれたから、私は"ロロ"って呼んでいるの。ちなみに私よりニコ上よ。

ロロはね、猫のコンテストで幾度も優勝している美猫なの!もちろん、人の姿でも可憐で可愛くて同性の私でも憧れちゃう!透き通る様な白磁の肌に、薄い金の少しふわりとした細い髪を腰辺りまで伸ばして、大きめで消えそうな薄い水色の氷の様な瞳…均整の取れた姿!それに温厚な性格でとても優しいの。

そんな彼女だからか誘拐事件が起きてね、その時はシィンが彼女を助けたのだけど、彼も利き腕の右を負傷して…。当時はそれで色々あったみたい。

"みたい"って言うのも、これは私がジークに出会う前の話しだから、知らないのも当然なのね?


…でもでも、それ以来ロロの中でシィンの存在は確実に大きくなって…!にゃう~!

それで、ロロ曰く、シィンの前だと緊張して、どうも言葉を噛んだり、不恰好な事をし易いって嘆いていた…。会話も少なくて、顔も恥ずかしさからあまり見れないから、俯きがちという…恋する乙女も大変にゃぁ。

そんなロロとは、最初の頃にジーク達の部屋にお昼ご飯を届けた帰りに問い詰められて話している内に色々分かってきて…。私はロロを応援するけどね!


…まぁ、それ以来ロロのお仕事は今のところ、ルーウェンさんの周りと城内のみになってしまったの。


そんなルーウェンさんは書物に夢中でジークと私の存在にまだ気が付いてないみたい。

ロロは軽く会釈して部屋の隅でお茶の準備をし始めてくれている。

ジーク、どうするのかな?


正面にジークが立っても、ルーウェンさんは細かい文字がビッシリくらくらする様な文字を追い続けている。私はチラと見ただけで目が泳いでしまった…。にゃー。

上司のルーウェンさんを見下ろす形でジークは静かに彼の名前を呼び始めたのだけど…



「ルーウェン」

「………」


「ルーウェン…」

「………」


「…ルーウェン!!」

「…ぇ?あ、ああ、ジーク?何か俺に用かな?」



ジークに最後は大声で呼ばれたルーウェンさんは先程の面持ちとは違う、穏やかな笑顔を私達に向けてくれた。

改めて言うけど、この人、この人がジークとローラの上司なる魔術師のルーウェンさん。仕事以外はとても優しい人なの。仕事熱心なのね。

ジークもルーウェンさんのこの流れは慣れているからか、さっと私の事についての用件を話し始めた。



「ルーウェン、ララをそろそろ登城させたいんだが、良いかな?」

「ん。良いんじゃないかな?じゃ、早めに正式な通交証を用意しようか」

「そうしてくれると助かる」



ジークに答えながらルーウェンさんは机から立ち上がって、応接ソファーや机が置いてある所にごく自然にジークと私を連れて行った。

まぁ、私達はルーウェンさんの後を着いて行っただけなんだけどね?

机の上には紅茶と焼き菓子のマドレーヌが置いてあって、「どうぞ」とルーウェンさんに進められるままに、私達はそれに手をつけた。

…私の許可はもうさっきので終わっているから、実はジークとルーウェンさんはお仕事の話をしていたりしている。

私はジークの横でマドレーヌを…って、これはロロのお手製だって分かる。これね、美味しいんだぁ~。ふわっとした具合の良い黄金の生地を口内に含めば、甘く溶けて舌上に広がるさらりとした生地の変化に口角は上がりっぱなしなのだ。

そんな感じで幸せを楽しんでいると、ロロが私の横に袋を持って座ってきた。



「ララ、さっきの話、本当?ララもこの塔に?」

「ロロ!うん、本当だよ!近いうちに塔でお仕事が始まるんだ~」

「楽しみね」

「うん!楽しみ!ロロ、このマドレーヌ、すごく美味しいにゃぁ」



私の最後の言葉にロロは「ありがとう」と言って、持っていた袋を持ち直しながら次の話題に移ってきた。



「あのね、これ…シィンとローラに渡してくれる?それと同じマドレーヌなの」

「うん、良いよ。渡すね」

「ありがとう、ララ。これはお礼」



そう言ってシィン達に渡す菓子袋と同時に、ロロは私に新たにミルクドーナッツの袋をくれた。にゃぁ!嬉しい!!

それからしばらくしてジークとルーウェンさんのお仕事の話は終わったみたいで、私達は再び階下の部屋に戻った。

部屋の中に入って、真っ先にシィンにロロから預かったお菓子の袋をロロからだと伝えて渡し、「シィンとローラとどうぞ、って」と話した。シィンの名前をローラより先に出すのがロロ的な乙女のポイントなのだ。多分。だから、そのまま伝える。

シィンはニコリと笑って「ありがとう」と普通に答えて来たけど、耳がピクピクして何らかの感情を抑えてそうな雰囲気があった。


そして私はルーウェンさんに今後の事に了承を貰ったので、今日はハンナさんの待つジークのお家に帰る事にした。

ああ、早くハンナさんに話したい!

アレキンさんにも話そうと思ったら、いつもの場所に居なかった…。…休憩とか?じゃ、次に驚かせようかな!


そして私はパタパタと少し速い足取りで塔に来た道の逆を進む。

つまり、私は"城壁"に向かっているのである。

…この城壁を潜る道を帰り道として選ぶのは、もしかしたら…という私の気持ちの表れである。



―…話したい相手が居るのだ!



でも、多分、彼は居てくれると…勝手にも期待して、私はどこにも寄らないで目的の場所へ駆けるように向かった。







目的の場所に着てみれば、白い尾がプランをぞんざいに垂らして、彼は器用に太い幹に座っていた。

木漏れ日が彼の位置にもあたり、葉の陰影の中に彼が瞳を閉じて存在していた。


私は少しまだふわふわした気持ちのまま、ルーへと近づいて彼に話し掛けた。

木の幹に居るルーへと見上げる形で両手を広げて、押さえ切れない感情を私は出した。



「ルー!ルー、聞いて!私、ついにジークの傍でお仕事する事になったの!」



私の声に紫水晶の瞳が現れた。

「くぁ…」と欠伸を一つのんびりとしてから、ルーは視線を私に向けてくれた。



「…ララはジークの使い魔としてすでに契約済みではないのか?」

「ああッ!そうなんだけど、お城!お城内で仕事をするって事だよ~!」


「なるほど?」



私の言葉に短く答えると、ルーは木の幹から私の前へと飛び降りてきた。

降りてきながらも、私より上背のあるルーを私は幹に居た時とほとんど変わらずに見上げた格好だ。



「じゃ、城内でララと会えるかもな?」

「にゃぁ、そうだね。会えるかもだね!」



ルーの言葉に笑顔で答える。そしてそんな彼に見上げながら、一つの質問をしてみた。



「私はルーに会えるの嬉しいけど、ルーは私に会えるの嬉しい?」

「……え」



…え。こっちも同じ言葉が出そうになった…。

明らかに困り顔のルー…。



「…嬉しくない?迷惑、そんな掛けない様にするし、…道もちゃんと覚えるよ?」



不安気に見上げながら、「ダメかな?」と続ければ、ルーはふいと私の視線から逃れるように顔を斜め上に向けて答えをくれた。



「駄目じゃ、ない。…ぅ、ぅれ…ぅれしぃ…」

「…!!本当!?」

「ああ」



小声だったけど、ちゃんと拾えたよ。嬉しいな。



「…ところでララは幾つなんだ?」

「十一歳だよ!」


「その年齢なら、ここでは最年少…か?」

「ルーは?ルーは幾つなの?」

「俺?俺は十五だ」


「シィンと同い年なんだね」

「シィン?」

「うん。シィンも使い魔の猫だよ。私のご主人様のジークと同じ部屋で仕事をして居るローラっていう魔術師のオス猫なの」

「…ほォ?」



あれ?何で私を見る瞳を細めて、少し探るように不機嫌そうなのかな?


―…彼の変化に私は"?"を脳内に大量に量産してしまったのだった…。



??????????????????????????×∞



だよ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ