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telepath(仮)  作者: 神崎さくら
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1話~守護神~

暗闇の中


レイは暗い闇の中にただ一人たたずんでいた。周りには何もない、ただ暗闇ばかり……

(ここはどこ? 何でこんな所にいるの、私……そうだ、ペンダントに意識を持っていかれて……)

思い出してもどうしようもない事だが、当てもなくふらふらと歩き回る。どこに歩いているか、どっちが前なのかも全く分からない。ただ、心の中に自分を呼ぶ声が聞こえたのだ。

(待って……。どこに行けばいいの?)

声を頼りに足を進める。すると、唐突に声がやんでしまった。

(あれ……! 聞こえない……どうすればいいの! ……誰か……誰か助けて……っ)

とうとうレイは怖くなって足を止め、座り込んだ。そうしていると、昔の記憶がよみがえってきた。レイが声を失ってしまったあの日……

(やだ……暗い……怖い……)

レイは体操座りをして、顔をうずめて泣き始めた。

……が、なぜか涙は出てこなかった。その時、急に目の前に光の塊が現れた。はじめのうちはぼんやりとした光だったが、だんだんと明るくなっていき、その中から白と黒の着物を身にまとった二匹の妖精が現れた。

『そなたには我等の力を受け入れる勇気と、己の使命をまっとうする覚悟はあるか?』

突然、黒い着物を着た黒髪の男の妖精が問いかけてきた。

(なに……それ……)

レイは喋れないので心の中で呟いたはずだが、相手はそれが聞こえていたかのように答えた。

『使命というのは組織の殲滅だ。魔物を操る組織が復活する時、一人のシャネルが選ばれ、我等を託されるのだ』

(もしかして、私の声……聞こえて……?)

『ええ、もちろん聞こえています。レイ、あなたは組織からこの国を守らなければなりません。そして……――』

今度は白い着物を着て、雪のように真っ白な髪を持つ女の妖精が話しかけてきた。男、女と表現したのは、妖精がヴェルクやミークの守護神とは違って、「人の姿」をしていたからだった。


 使命について説明を聞いたレイは、しばらく黙りこんだ。そして、何かを決意したような顔で妖精たちに向き直ったその時、体の中で何かがわきあがるのを感じた。

(分かった、背負ってみせる。こんな私でも役に立てるのなら……)

『そのように気負わなくても大丈夫ですよ。私たち守護神がついています。私たちはあなたを守るためにいるのですから……』

守護神が微笑む。

(あなたたちがわたしの守護神なのね……。わかった、やる。「我に忠誠を誓い、力を与えよ!」)

『喜んで! レイ、あなたへの忠誠を誓います』

『右に同じだ、我もそなたに忠誠を誓おうぞ。レイ!』

そう言うなり、二人は光となり、レイの胸元に飛び込むようにしてペンダントの中に消えていった。

とたんにレイはめまいを起こし、意識が遠のく。



     ☆



 気が付くと目の前にクリーム色の壁が見えた。どうやらベッドに寝かされているようだ。手元を見ると、ペンダントをずっと握りしめていたようで、少し汗ばんでいる。

(うっ……体が……重い)

なんとか首を動かして見回すと、ついさっきまでテーブルを囲んでいた四人がソファやいすに座っていた。みんな寝ているかと思ったが、セフィードだけが起きている。セフィードはすぐにレイの様子に気がつき、立ち上がって近づいてきた。

「みんな疲れて寝ているだけだ。起きれるか?」

レイは体がだるかったが、心配させまいと無理に体を起こした。それを見たセフィードは、おもむろにペンダントを取出しルークを呼び出した。

「みんなを」

セフィードはそれだけしか言わなかったが、ルークは分かったように空中を飛びまわり、ヴェルクとミークのペンダントに触れていった。すると、守護神がペンダントから出てきて主を起こす。

「二人の守護神に呼びかけさせただけだ」

唖然とするレイをよそにセフィードは短く説明した。最後にヴェルクが、ロザリオを起こす。

目覚めたミークが「レイシアちゃん!」と眼を光らせて駆け寄ってきた。

「レイシア。……よかった、起きたんだね。大丈夫かい?」

ロザリオがほっとしたように声をかける。

(そうだ、守護神を呼ばなくちゃ……あれ? 名前……)

肝心なものを聞いていなかった、と自分に軽く呆れたレイの頭の中に、不意に二つの単語が刻まれた。

(これか……『ショウマ』、『トゥリーン』)

レイは心の中で二人を呼んだ。すると、空中に先ほどレイと契約を交わした二人が現れた。

「これは……」

セフィードが目を見張る。

「やったね、レイシアちゃん! すごいよ、二人も守護神を持つなんて!」

ミークが飛び上がって喜んだ。ヴェルクが心配そうにレイの顔を覗き込む。

「大丈夫か、レイシア。倒れてしまったから心配していたんだ。顔色がまだよくないみたいだけど……」

レイは無理して首を横に振った。本当はだるくて仕方ないのだが、心配させたくなかった。

(大丈夫。そのうち、良くなる……)

そう信じたレイだったが、とたんに目の前の風景がゆがみ、一番近くにいたミークの方に倒れかかる。目の前が真っ暗になった。

「レイシア……!」

遠くの方から誰かに呼ばれた気がした。

(だめだ……起きないと……)

そう思った直後、

『いけませんよ、無理をなされては。……契約をした後の体には負担が掛かります。レイの場合、私たちが特殊ですから、相当な負担が掛かっているはずです。明日には回復しますから、今はゆっくりおやすみなさい……』

トゥリーンの声がしたかと思うと、すーっと意識が眠りに落ちて行った。



ヴェルクら四人は、レイが再び倒れた後、守護神の一人がレイの額に手を触れ、数秒じっとしたあと、レイが眠ってしまったのを見て、驚いて口がきけなかった。

『レイは疲れて眠っているだけです。明日には回復いたします』

トゥリーンが四人に微笑みかける。安心したミークがレイを寝かせた。すると、ショウマが浮き上がり、トゥリーンの傍に来て、四人に向かった。

『知りたいことが多かろう。今から説明する、座られよ』

各々がさっきまで寝ていた所に戻り、守護神もその肩や頭の上に腰を下ろす。それを確認すると、ショウマとトゥリーンもレイの傍に腰かけた。まずはショウマから話し始める。

『わが名はショウマ。このトゥリーンと共に、レイシアの守護神となった』

『私たちは、組織から国を守るために、レイのもとへ使わされました。レイは使命を理解したうえで、私たちと契約を交わしたのです』

『〈選ばれし者〉としてな……』

早速、三人の頭の上に?マークが浮かぶ。

「その話なら知っているよ」

不意に、ロザリオが口を挟んだ。

「……せ、先生。知っているって何を?」

?が!に代わった三人を代表して、ヴェルクが質問する。

「前にも、そういう生徒がいたんだ。名前は、口が裂けても言えないけど。レイシアは、魔物を操り国を支配しようとしている組織を殲滅するために、選ばれたんだろう? ショウとトゥリーンだったかな。様子が似ていたからもしかしたらと思っていたんだ」

『その通りだ』

ショウマが間髪入れずに答える。

『レイは再び復活し始めている組織を殲滅するために、我らと契約を交わした。選ばれし者になったのは、レイのマナが強かったからかもしれぬ……』

ショウマが一息ついたところで、ミークがあることに気が付き、声をかけた。

「でもさ、なんでショウマとトゥリーンは、私たちの守護神みたいに獣の姿をとっていないの?」

『自慢ではないが、レイが選ばれし者であるが故、われらの力もまた大きい。それ故、人の姿をとれるのだ』

その時微かに、三人の守護神から殺気を感じたロザリオだったが、気にしないことにした。事実、当の三人も気が付いていて、苦笑いを浮かべていた……。

トゥリーンが話を続ける。

『それではここからが本題です。今から、レイにも伝えた使命について、お話しいたします』

 表情を引き締めたトゥリーンは、一度ショウマと顔を見合わせて、四人に説明を始めた。

『その昔。ホールの向こう側にいる魔物を利用して国を支配しようという、愚かな考えを起こす者たちが出てきました。しだいにその者達は組織化し、陰で強大になっていきました。……ある時、それを防ぎ民を守るために、ある一人の強大なマナを持つものが、ラーザをつくりあげます』

 今度はショウマが話を引き継いだ。

『組織が復活するたびに選ばれし者として一人の人間が選ばれ、特別強力な力を与えられる。……先代の選ばれし者たちは、組織が復活するたびにできる限り殲滅させてきたが、未だに誰一人として、組織を再起不能にした者はおらぬ。それ故、十年前後程度の周期で、選ばれし者は生み出され続ける……。そして今、再び力を取り戻しつつある組織殲滅のために、選ばれたのがレイだ』


「……危険すぎる……」

早々に、ロザリオが呟いた。

『どういうことだ、ロザリオ殿。確かに、この使命は厳しい。幾人もの先代の選ばれし者たちが組織の再起不能をあきらめてはきたが……』

「いや、そういうことではないんだよ」

 ロザリオはショウマの言葉を遮った。

「私のことはロザリオでいいよ。……君たちは契約を交わした時から知っていると思ったんだが、そこまではいかなかったみたいだね。……レイシアは……声が、出せないんだ……」

『なんだと……!』

『それは事実なのですか? ロザリオ』

 トゥリーンが、先程までの優しい表情とは打って変わって、真剣な表情で問い詰める。

「ああ、本当だよ……事実だ。……できるなら嘘だと言いたいけれどね……。それでいて、彼女は魔法が使える……」

ロザリオがつらそうな表情を浮かべる。

『まさか! そんな……』

ロザリオの意図を理解したらしいショウマとトゥリーンが絶句する。

「あの、先生。何がそんなに危険なのか、まだよく分からないんですけど……」

いまだに分かっていない三人のために、ロザリオはゆっくりと説明する。

「いいかい、レイシアはただでさえマナが強い。なのに、プラスして言葉を発さずに魔法を使え、守護神の力まで得た。……しかもとても強大な。……こんなすさまじい力を持っている小さな女の子を、悪用しようとするものがどれほど狙ってくるか……。学院で彼女を守り切れるかどうか……」

ロザリオの言う通りだった。レイは前代未聞といって良いくらいの力を持ち合わせてしまったのだ……。悪用しようとする者たちにとってレイは、「素晴らしい」力の持ち主に違いない。


「私たちに出来る事としたら……」

「レイシアの声を一刻も早く取り戻すこと……」

「だろうな」

 しばらくの沈黙の後、三人は声をそろえた。

「そうだね。きっと君たち三人が、一番レイシアのためになってあげられるはず……」

『それならば、……我等からも頼む』

プライドの高いショウマまでもがこの様な事を言った。トゥリーンも声を上げる。

『わたくし達も、全力を尽くします』

「それじゃあ、今日はここまでにしよう。三人ともそろそろ寮に戻ったほうがいい。レイシアは私たちが看ているから心配ないよ」

お腹がすいていたし、外も暗くなっていたので、三人は素直に戻ることにした。



 三人が部屋を出て、しばらく後……

『ロザリオ、レイは明日にならないと目覚めないはずだ。……それ以前に、見ていないといけない程危険な状態ではない。……何か残った理由があるのだろう?』

 疑問形であっても、ショウマの声はどこか確信めいていた。

「さすがに選ばれし者につく守護神のことはある。鋭いね……。後、これも言いたいはずだ。どうしてシャネルでもない私に〈扉〉が見え、ラーザに入ることができるのか……」

『もちろんです。初めてあなた方にお会いした時は驚きました。あなたには、守護が見えなかったから……』

「ああ、それを今話しておこうと思ってね。あの三人の守護神たちはまだ知らない――……」

『というより。疑問に思ってすらいないのだろう?』

 ショウマが分かりきったような声で、ロザリオの言葉を遮る。

「ふっ……。その通りだよ。でも君たちなら、おかしいと気付くと思ったんだ。実は――……!?」

 動きが止まったロザリオに、ショウマとトゥリーンが不思議なって視線の先をたどると……。

『!』『え?』

 なんとそこには、寝ぼけまなこで体を起こしているレイの姿があったのだ。

(あれ……朝じゃない。……寝すぎた?)

 レイは窓の外を見ると首をかしげた。

『レイ! 起きて大丈夫なのか?』

 二人が慌てて飛んで行って確かめると、レイは不思議そうに頷いた。

そんな彼女を見て、ロザリオは苦笑しながら、誰にも聞こえないように一人呟いた。

「レイシア……。回復力デカすぎだよ……」

 この桁外れの回復力が、何を意味しているのかも知らずに……。


取りあえず一話終了です。文章力が乏しくて、読みづらい部分もあったと思いますが、これからも読んでいただけると、間違いなく作者のテンションが上がります。

読んでくださってありがとうございました。

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