7話 ギルドの真相
そして翌朝、俺は飛び起きた、残りのコーラが心配で。
――――コーラはあった、幻でもなんでもなく。
残りは四つ、まあ寝起きでコーラって気分でもない俺は、顔を洗ってから食堂に向かった。
食堂に行くと委員長様達が居た、今日は巫女さんがいないな。
「あら、おはよう」
「おはよう」
委員長様から挨拶されりゃ返すのは礼儀だ、まあ他に挨拶してくるやつはいない。
基本的に学校にいた頃と何ら変わりがない。
委員長様も委員長様で、昔家が近所にあって、少し遊んだことがある程度の俺に何の義理があるのやら、たまたま同じ高校に入学してからずっとこの調子である。
幼馴染か?と言われれば、違うんじゃないか?って程度の仲なのにな。
昨日とは違い、軽めの朝食をとる。
みんなはどうやら、ギルドの話で持ち切りだった。
どこに入る――――ではなく、どんな名前にするか、か。
盗み聞きした内容を要約すると、この世界には冒険者ギルドなど、初めからなかったということ。
ではあのギルドはなんだったかのかというと、この街にある、十のギルドの一つだという。
つまりギルドとは、複数の冒険者が集まる集団であり、依頼の斡旋場ではなかった。
依頼は国を通して、各ギルドに発表され、各ギルドが各々で我先にと手柄を奪い合う仕組みらしい。
そんで委員長様達は、自分たちの鍛錬のために自分たちのギルドを作って、冒険者としてやっていくつもりだとか。
もちろん俺は除け者である、初日から鍛錬にも出ず、二日目も部屋に閉じこもりっきりだった俺は最初から頭数に入ってはいなかった。
まあそれでも委員長様は入れてくれようとしているのだが、丁重に断った。
俺は、俺で仲間を集めて自分のギルドを立ち上げるためだ、今後この世界に置いての生活基盤にするために。
部屋に戻ると俺は集めたスライムの核を数える事にした、目を閉じ、異空間を意識してそこに何がどれだけあるのかをカウントする。
――――全部で二百四十八個、半端な数だが、まあいいだろう。
これだけの手柄さえあればギルドを立ち上げる時に役に立つだろう。
残る課題は資金と仲間だ、これが一番の問題であった。
資金とか普通なら勇者なんだから国からもらえるだろうと思って巫女さんに問合わせたが、資金などはギルドを立ち上げ自分たちで稼ぐと、
委員長様が突っぱねたらしく、一度拒否したものを渡せというのは無理とのことだ……全く、余計なことをしてくれるが。
まあわからなくもないな、資金を与えられたら最後、一生この国のためにこき使われる、なんてことになってもおかしくはない。
委員長達は元の世界に帰るという目的のために動いているのだ、そんなリスクは背負いたくはないのだろう。
居着くつもりでいた俺には関係ないが、まあ俺もその判断に従っておこう。
どちらにしろ、もう少し魔力に余裕が出てきたら、俺が委員長達を送り返してもいいんだがな。
昨日俺は元の世界に戻った、おそらく、無意識で記憶転移を使ってだ。
少し修行でもすればきっと、みんなを元の世界に返すことだって可能だろう、当分先のことになるだろうけど。
今は人一人送るのが精一杯だと思うし、何より自分が転移する分には支障がないのだが、他の物を転移させるのにはまだ少し不安があった。
スプーンを召喚したとき、部分転移を使ったためか、柄が少し短くなっていた、というか大きめのスプーンから小さめのスプーンをくり抜いていたんだ。
そのことに気がついたのは今朝、スープを飲むのにスプーンを取ろうとしたときのことだった、中がえぐれたスプーンがあった。
俺はそれが何かすぐにはわからなかったが、とっさに懐にしまいこんでいて、部屋に戻った今、昨日使ったスプーンをはめてみるとピッタリ合ったのだ。
勇者特典に問い合わせたところ。通常、召喚をする際は、契約を行い、召喚対象に契約の印を刻んでおく必要があり、それがなければ、無意識下のイメージ通りに切り取って召喚される。
これが部分召喚の真相だった。
まあ召喚失敗ということらしいが、それをわざと行使して攻撃とするあたり、これは俺の資質の問題らしい。
普通はこんなこと思いつかないそうなのだが、まあやれるものは仕方がない。
さて、色々と分かったところで、問題は残っている、とりあえずは金だ、あちらの金はまだ十分にあるが、こちらでは無一文だ。
まずはこれから街に出て、神殿の宝物庫で漁った、金目の、自分の使わなそうな装備を売り払うことにした。
神殿のアイテムだ、結構高く売れるだろう、けど普通の商店に売ったら足がつきそうだな。
――――ギルドの場所を聞くときに聞いたことだが、この街には闇市と呼ばれる市場があり、盗賊などが盗んだ品が多く売られているのだとか、俺のは盗品ではないが、そこに売ることにしよう。
俺は、闇市に行くために街へと転移した。