4話 冒険者ギルドらしき場所に行ってきた
あれから何人かに道を尋ねなんとかそれらしいところに着いた、途中何人か全く違う方向を言ってくれるから思ったより時間がかかっちまった。
冒険者ギルド――――なんかもっとゴツイ建物をイメージしていたが、実物はファーストフード店のような作りの二階建ての建物だった。
俺は黒ずくめのジャージ姿と、だいぶラフな格好をしているが、大丈夫だろうか。
やっぱり途中で鎧とかそれっぽいのを買っておくべきだったかな、まあ今の俺は所持金はない、神殿から持ち出した装備を早いとこ売りさばかないとな。
中に入ればきっと屈強な冒険者達が色々と居るんだろうと少し期待しながら入って行ったのだが……
昼間っから飲んだくれてるゴロツキ、トサカ頭っていうのかね、変な髪型のが数人いるだけと、カウンターに受付の女性が一人タバコを吸ってた、掲示板に小さなメモが四、五枚貼ってあるだけという、期待外れもいいところである。
「いらっしゃーい、用件はなんでしょうか?」
受付のお姉さんのノリは軽かった、イメージと違うな……やっぱフィクションは所詮フィクションか。
親切丁寧な敬語を使う人なんてあんな王様のお膝元に居る訳もないか。
「えっと、冒険者になりたいのですが、ギルドに加入するにはどうすればいいですか?」
「え、ギルドに入りたいんですか?…… じゃあこちらの用紙に必要事項を記入してください。」
なんか良からぬ事を考えている感じの顔をされた、少しイラっとした。
紙切れとペンを渡される、しかし文字は書けない……あの勇者特典が有効なのは自分の職業、装備の説明や言語補助と文字を読めるようにすることだけらしく、読めはするが書く事はできなかった。
「あの、俺は字が書けないんですけど、代筆してもらえますか?」
俺は怒りをぐっと堪える。
そしてお姉さんに用紙とペンを返却する。
「はい、大丈夫ですよ、冒険者になる方は基本的に学問ができない方ばかりなので、ではお名前、年齢、ご職業を教えてください」
住所って要らないのか?とも思ったが実家の住所書いてもあれだし、今住む予定の王城の住所も知らないから書けないな。
「えーと、名前は……正吾、年齢は十七、職業は……喧嘩屋でお願いします」
言い終えると、お姉さんはしばらくお待ちくださいと、奥へ引っ込んでいった。
こういう異世界系は苗字とかあったら逆に変だったりするはずなので名前だけにしておいた、そもそもあの脳筋王も苗字らしいものがなかったから、もしかしたら苗字という概念がないのかもしれない……
まあ神殿で自己紹介したときの巫女さんの反応で薄々そうじゃないかと思っていた。
――――クロダショーゴ様ですね。
とか間を入れず繋げて言ってたしな。
年齢はそのまま、職業については、まあそんな職業ないですってツッコミ待ちだったのだが何故か無反応だったな。
「お待たせいたしました。はい、こちらがギルドカードになります。」
そう言って手渡されたのは板切れだった……木彫りで文字が刻まれている。
おなまえ:ショーゴ
じゅうななさい
けんかや
――――ふざけてんのか!
……いやこれがここのカードなのかもしれない。
周囲の呑んだくれ達がクスクス笑っているが……
「えーと、じゃあ何か依頼とかないんですか?」
ここは堪えよう、何か依頼とかこなせばきっと認めてもらえるに違いない。
「そうですね……では東門から出てしばらく行った森でスライムが大量発生していますので、それを退治してきてください。」
お姉さんはそこまで言うとさっさと奥へ引っ込んで行った、何か笑いを堪えている様子でだ。
俺はこいつらに騙されているんじゃないか?
俺は疑問に思いながらも、外に出て空間転移で東門まで飛んでいった。